2007年03月23日 02:45 [Edit]

書評 - ハゲタカ

NHKのドラマは見逃したが、原作が「本が好き!」にあったので申し込み。

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ハゲタカ(上・下)
真山仁

神童」の時もそうだったが、「本が好き!」は分冊されているものでも全部送ってくれるので好き。今回もその例外に違わず上下巻が両方とも来た。


本書「ハゲタカ」は、「ハゲタカ」とあだ名される人間たちと、その獲物とされる人間たちのドラマ。

上巻表紙より
ニューヨークの投資ファンド運営会社社長・鷲津政彦は、バブル崩壊後、不景気に苦しむ日本に戻り、瀕死状態の企業を次々と買収する。敵対するファンドによる妨害や、買収先の社員からの反発を受けながらも、鷲津は斬新な再生プランを披露し、業績を上げていく。企業買収、再生の真実を克明に描いた

その本書には、ちょっと異例の但し書きがついている。

本書は、フィクションである。登場する企業、団体、人物はすべて架空である。

ここまでは普通だが、

ただ、読者により近親感を持っていただくために、歴史的流れについては、実際の時間の流れを大切にしている。

本書は、バブルまっただ中の1989年の架空の日本から、「ハゲタカファンド」が日本経済の一部を担うことに人々が慣れた2004年の架空の日本が舞台である。架空ではあるが、その流れはほぼ現実の日本経済を踏襲している。三葉銀行(後のUTB)、ゴールドバーグ・コールズ、メリレ・リンク、ゴールドマックス....登場する固有名詞はほとんとひねりを入れていない。

コンセプトとしては、架空戦記モノに近い。しかし架空戦記モノが近過去や近未来を扱っていることがほとんどなのに対し、「架空経済モノ」である本書は、20代後半以降であれば肌で知っている現代を追っているだけあって臨場感はより深い。

とはいうものの、読者のほとんどは、この「失われた十数年」のハゲタカたちの暗躍、いや活躍を、あくまで外から知らない。最近でこそ彼らも経済のエコシステムの中では有用なプレイヤーであることが、実践例と共に知られるようになってきているが、それでも「ハゲタカ」たちの暮らしぶりを、我々は外から見て憶測するばかりである。その彼らの視点から「失われた十数年」を見据えてみただけでも、本書が面白いドラマになることは約束されたも同然だった。実際、上下900ページを越える大著であるにも関わらず、まるでマンガを読むようなテンポで読み終えてしまった。

著者の真山仁は読売新聞の元記者。本書には物語の背景としていくつも架空の新聞記事が登場するが、さすがに元職だけあってこの架空記事のリアリティは高く、本書の面白さを引き立てている。

とはいうものの、「ありえない設定」や「ありえない台詞」も少なくない。主人公の鷲津政彦のガールフレンドであるリン・ハットフォードは投資銀行の日本法人副社長だが、この二人は仕事上のパートナーでもある。いくら日本がコンプライアンスの甘い国といってもこれはちょっとないのではないか。彼らのターゲットでもある太陽製菓のネポティズムを笑えないよこれじゃ。

これは「ありえない設定」の方だが、「ありえない台詞」としては本書の副主人公でもある松平貴子が「役員昇格」面接を受けるシーンが出てくる。これは日本ではありえる台詞かも知れないが、外資でこれはありえない。役員というのは従業員とは機能からして違う。ハマチがブリになるのとはわけが違うのである。従業員がサカナなら役員はイルカというぐらい違う。このことは本blogでも何度か書いてきたが、このあたりの「ありえなさ」は、上場企業役員経験者としては気になってしょうがない。

とはいえ、現実をモチーフにした話にこのての「雑味」はつきもので、それらの雑味を差し引いても本書は楽しめた。ハゲタカの視点からこの世がどう見えるか、是非本書で確認あれ。

Dan the Part of Ecosystem



ハゲタカ
  • 著:真山仁
  • 出版社:講談社
  • 定価:820円
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この記事へのコメント
>会社役員ってのは、いわゆるshare holderですな。
全然違いますよ。shareholderは株主。

って、釣りでしたか。
Posted by hyoshiok at 2007年04月20日 12:02
会社役員ってのは、いわゆるshare holderですな。つまり会社の保有者であり、ファンドに出資する投資家。雇う側と雇われる側。一生働かなくてもいい人と、一生懸命働いている人。どんなに仕事が出て有能でも、雇う側が雇われる側に回ることはないですよ。
Posted by a at 2007年03月30日 22:29
小説は読んでいませんが、NHKのドラマをちょっと見ました。かなりリアルでびっくりしました。99年から03年まで、外資系投資ファンドで不良債権を買ってました。
Posted by a at 2007年03月30日 22:24
今回、弾さんの「想定外」の目線、を使ってコメントしてみます。

・「日本」で言っている「ハゲタカ」って、「シャーク」(shark)と同じ意味あい、と、書籍「逆転戦略」(鈴木 貴博 (著) )、に書いてあったのですが、あっていますか?
・本日、本文とカテゴリー等(headerで伝わりますでしょうか?) 左右逆にされましたか?

最も、多分すべて、弾さんの「想定内」だったりして。

そのときは、また準備してコメントさせていただきたい、と思います。

弾さんがお書きになった本文にある「ハゲタカ」は、私はまだ読んでいないため、私のこの文章も、つたない文章になっています。

このコメントも「β版」ですw
Posted by 非モテが出会いを訪ねて三千里 at 2007年03月23日 22:21
>従業員がサカナなら役員はイルカというぐらい違う。このことは本blogでも何度か書いてきたが、


どこに書かれているのかポインタをお願いします。
Posted by サカナ at 2007年03月23日 19:03
いや活躍を、あくまで外から知らない。
→いや活躍を、あくまで外からしか知らない。
 ……かな?
Posted by 有我悟 at 2007年03月23日 08:13
弾さんこんにちは。毎朝拝見しております。

細かいところをつついてすみませんが、
「その例外に違わず」=「例外」になってしまうと思うので、
「それに違わず」でいいのではないでしょうか。

僕の勘違いかもしれないので聞き流してください。
それでは失礼します。
Posted by とんぼ at 2007年03月23日 06:41