2007年05月31日 00:00 [Edit]

書評 - ウィキノミクス

初掲載05.21;販売開始まで更新予定
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ウィキノミックス

マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ
Don Tapscott / Anthony D. Williams
井口耕二
[原著:Wikinomics:
How Mass Collaboration Changes Everything
]

賛否両論は抜きにして、「議論の前提となる本」というものがある。

ウェブ進化論」もそうだし、「フラット化する世界」もそうだ。

本書は、そういう本になることがほぼ確約された本なのかも知れない。


本書「ウィキノミクス」は、ずばり、「Web2.0経済の本」。

404 Blog Not Found:書評 - iPhone 衝撃のビジネスモデル
p.164
Web2.0的なサービス、技術はある。だが、Web2.0的な収益モデルはない

の、収益モデルについて語られた本だ。

目次
目次
  • 第1章 ウィキノミクス
  • 第2章 嵐の中の嵐
  • 第3章 ピア開拓者
  • 第4章 アイデアゴラ
  • 第5章 プロシューマー
  • 第6章 新アレクサンドリア人
  • 第7章 参加のプラットフォーム
  • 第8章 世界工場
  • 第9章 ウィキワークプレイス
  • 第10章 コラボレーションの精神
  • 第11章 ウィキノミクス攻略法を作ろう
謝辞/注釈/索引

実は手元にあるのは見本版。発売までまだ20日近くあるというのに献本いただいた。しかも添え書きには「謹呈させていただきます。ご高覧いただければ誠に幸甚に存じます」としか書いてない。これは、本書をどう取り上げるか、一切私にまかせるということであろう。フリーハンドが与えられた故に、私としても何をいつどう書くということは慎重にならざるを得ない。少なくとも、ネタバレはフェアでないのでやりたくない。

しかし、本書が、皆が一番知りたかった「Web2.0的な収益モデルってどんなだ」「そもそもそんなものがあるのか」ということを真っ正面から取り扱っているということは、この時期に書いておいてもいい。

結論から言うと、「ウェブ進化論」を読んだ人は必ず本書にも目を通すべきである。本書には梅田望夫が「最大の謎」としたオープンソースがなぜうまく行くかということの解答--少なくとも答案--が、書かれているのだから。

それを一言で凝集したのが、「ウィキノミクス」(Wikinomics)という著者たちの造語。これはやられた。名前を与えることによって、もやもやが実体化することはよくある。Web 2.0がまさにそうだった。無名関数の話題ではないが、名前をつけるというのは以外に大変なのだ。不適切につければ、それは後々まで祟る。そして適切なものをつければ、それはそれ以上の力を持つ。私は言霊信仰の信者ではないが、名前には単なる識別子以上の力があることは日頃強く感じている。ウィキノミクスは、その意味ですばらしいネーミングだと思う。

本書の面白い所は、そのウィキノミクスの成功例として、最初に「あちら側」の成功例ではなく、「こちら側」の成功例を上げるところだ。本書のかなりの部分がWebに割かれているが、本書はWebに始まりWebに終わる本ではない。その成功例がどのようであるかを見るだけでも、本書を手に入れる価値がある。むしろWebにどっぷり浸かっている者こそ、私を含め本書に出てくる事例は知らないのではないか。第1章の事例はまさに目から金のうろこであった。

翻訳もこなれていて読みやすい。セキュリティはなぜやぶられたのかを訳した井口氏なら当然のクォリティなのかも知れないが。

いや、むしろこなれすぎている。特に固有名詞に関してはそうだ。「ボインボイン」がBoing Boingのことであるというのに気がつくのにしばらく考え込んでしまった。本書はケーススタディーが多いので、どうしても固有名詞の量が多く、そして横書きで見慣れた名詞がカタカナでこれだけ登場すると、さすがに目にさわる。むしろカタカナ化しない方がよかったのではないか。

あと、注釈の位置。巻末にまとめてというのは訳本の常道だが、これは改めた方がいいのではないか。読みやすい代わりに非常に使いにくい。本書には実に多くのWebサイトが登場するが、ゆっくり読む人ならURLをブラウザーに打ち込みながら読むのではないだろうか。これは脚註に改めるべきだろう。出来れば、原著の方も。

そうそう。Wikinomicsということで、原著には専用Webページのみならず、専用Wikiも用意されている。

このsocialtextのwiki、すこぶる使いやすい。ingy++である。もちろん日本語もOK。日本語ページは私が付け加えておいた。関係各位におかれては、このWikiページを販売前に拡充されたし。

私自身は、本書に書いてあることには必ずしも満足していない。特にオープンソースに関して、起点がLAMPというのは納得が行かない。Linus Torvaldsにインタビューしても、Richard Stallmanにインタビューしない(少なくとも本書中には登場しない)のは片手落ちというものだろう。また、「ウィキノミクス」でカバーしきれないものが何かという考察も不十分だとは思う。

しかし、それは本書の欠点とは言えない。本書は議論の終着点ではなく起点なのだから。起点にウィキノミクスという名を与え、そして成功例が続々と、それも「こちら側」にも出ているということを示したことこそが、本書の功績なのだから。

販売が待ち遠しい....

Dan the Wikieconomic Animal

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「ウィキノミクス」がAmazonから届いた。現在「本で58位」と504ページもある翻訳ビジネス書としては大健闘。膨大な人数に取材して強力遠心力電気掃除機みたいにあらゆるデータを吸い上げぎゅっとパックしてどさっと提示して??踧??
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この記事へのコメント
この手はついつい手が伸びてシマウマです。
Posted by blog49 at 2007年06月29日 10:22
やっとこせ読みました。
Posted by blog49 at 2007年06月23日 12:09
その節はありがとうございました。明日ウィキノミクス読書会にゲストで出られるそうですが、時間、場所、費用を教えていただけませんか。ぜひ出席したいのです。他に知る方法がなく、失礼ながらここに書き込みます。
Posted by 三好ダン at 2007年06月22日 10:43
その節はありがとうございました。明日ウィキノミクス読書会にゲストで出られるそうですが、時間、場所、費用を教えていただけませんか。ぜひ出席したいのです。他に知る方法がなく、失礼ながらここに書き込みます。
Posted by 三好ダン at 2007年06月22日 10:42
校了して原稿が印刷所にまわり、ホッとしている訳者です。

翻訳にかかる前の打ち合わせで、「横書きにして固有名詞は英語ママ」というアイデアも出たのですが、今の出版環境ではちょっと冒険に過ぎるということと、このあたりをネット上で読んでいない層にも入りやすくという観点から、「縦書き・固有名詞はカナ」という一般的な形式になりました。

おっしゃるとおり、縦書きでも英語ママとする方法もあるのですが、横倒しにすれば一般的に読みにくいということになりますし、かといって、英語ママを縦書きにして










と出てきても、一瞬、なんのことやらわからなくなりそうです。

書籍で縦書きにするとなると、いろいろと難しいですね。
Posted by 井口耕二 a.k.a. Buckeye at 2007年05月22日 16:31
socialtextは自分のアカウントを取得すれば良いのでしょうか?
You must login to view this page.とメッセージが出てしまうのですが。
Posted by yoyoyoooga at 2007年05月22日 02:22
s/以外/意外/
Posted by K at 2007年05月21日 21:48
この書評を読んだら、買わないなんて無理。
でも、購入は近くの書店になってしまうのは、
問題ではないのかな。
Posted by ななし at 2007年05月21日 19:58
こちら側ですか!それはよかった。あちら側といわれるとなんだか幽霊というか、丹波哲郎っていうか、なんかしっくりこなかったのです。あちらの利益よりもこちらのお得。

発売が待たれます。
Posted by blog49 at 2007年05月21日 16:30