2007年06月10日 19:15 [Edit]

書評 - 私たちはどうつながっているのか

『複雑ネットワーク』とかぶるかな、と思ったら、著者も同じだった。

「使える度」では前書が、「面白度」では本書が上といったところだろうか。


本書「私たちはどうつながっているのか」は、主に人間関係のネットワークに焦点をあてて解説した本。図版は数式は「『複雑ネットワーク』とは何か」の方が豊富なので、「自分でも調べてみよう」という人には前著が向いているが、「今まで得られた知見をあれこれ考えてみたい」という人には本著が向いているように思える。どちらも千円以下の新書なので、両方買ってもいいと思う。かぶっている箇所はあるが、かぶり過ぎではない。

目次
  1. はじめに
  2. 人のネットワーク
  3. 世の中はスモールワールド
  4. 6次の隔たりを使う
  5. クラスターを使う
  6. 世の中はスケールフリー
  7. スケールフリーを使う
  8. ネットワークの中心
  9. ネットワークと教育

前著に関しては上述のとおり本blogでも書評しているし、そして本著に関してはすでに「Passion For The Future: 私たちはどうつながっているのか ネットワークの科学を応用する」にネタバレ注意報ものの詳細な書評がのっているので細かい解説はしないが、一つだけ橋本さんが書き忘れた--あるいはわざと書かなかった--知見だけ紹介させていただく。

それは何かというと、「ネットワークどおしを繋いでいるノードの価値は、ハブでなくとも高い」ということ。もう少し細かくいうと、密につながったネットワークと、密につながった別のネットワークが粗結合している場合、その粗結合を担うノードは、それ自身が持つ枝の数が少なくてもその価値は枝の数だけでは計れないということになる。

例えば、日本語ネットワークと英語ネットワークを中継するブログなどがそれにあたる。GIGAZINEやPOP*POPが「単に横のものを縦にしているだけじゃないか」と揶揄されつつも人気があるのはこれに相当する。

そして、当然こういう「ルーター」は人気が出るので、ハブ化もしやすい。実はこの事は著者も見落しているとまでは言わないまでも、それほど考察を加えていないように思える。辺境が急速に中心になる理由が、これである。世界の大都市を見れば、その国の中心からは離れている場合の方がむしろ多い。東京は日本の中心に思えるが、しかし山の中にあるのではなく、太平洋という日本の縁にある。ロンドンもブリテン島のずいぶん南の方にある。ニューヨークは合州国の西の端だし、ロサンジェルス(とサンディエゴ)に至っては西の端というだけではなく南の端でもある。これらの都市は、単にハブであるというだけではなく、「ポート」にもなっているのだ。

ノードとしての価値をあげる一番手っ取り早い方法は、中心に近寄るのではなく、まだ未結合のネットワークを見つけ、そこへの「ルーター」となることではないか。この行動は、最初のうちは「辺境に向かう」ように見えるが、しかし辺境と辺境の境目にこそ価値があるのだ。

p.230 - 本書のむすび
人のネットワークは、これからも時代とともに形を変えていっく。どのように変わっても、あなたは枝を通して誰かとつながっているだろう。このつながりがネットワークのすべての始まりである。ネットワークは、孤独を取り去り、あなたの内面を映し出す鏡となり、あなたの生活を支える右腕となってくれる。そう願って、本書の締めくくりとしたい。

目的に関しては同意だが、手法に関しては異議といったところか。あえてネットワークの端へと向かうことで、別のネットワークを開拓するという方法もあることは忘れないようにしておきたい。振り返ると渡し自身そうしてきたような気がするが、本書ほど明晰にそれを分析してはこなかったし、分析するだけの余裕も今まではなかったということなのかも知れない。

そうそう。本もまたネットワークであることも指摘しておきたい。本書は増田氏(anondじゃないよ)の単著であるが、当然前著も含め、あまたの本とリンクしている。読書の世界においても 1+1 < 2 が成り立つのだが、2と1+1の差分が読書ネットワークの価値とも言える。

そんなことを考えながら、読了した。

Dan the Hub on the Edge


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http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50849436.html 私も、ブログを再び初めてまだ少ししか経っておらず、今後の方向性を試行錯誤をしているのだが、 404 Blog Not Found:書評 - 私たちはどうつながっているのか に非常に参考になる視点が書いてあった。 ネットワー
人気サイトを作る視点【楽しさ創造ダイアリー】at 2007年06月11日 05:57
この記事へのコメント
s/西/東/
Posted by 通りすがり at 2007年06月11日 22:28
「振り返ると渡し自身そうしてきたような気がするが」
→「振り返ると私自身そうしてきたような気がするが」

毎度済みません。
Posted by yabu at 2007年06月11日 01:44
「心」がないと、いずれネットワークは裏切りによって、消える。
ただし、新しい「心」のもとに新しく生まれる。
Posted by えっと at 2007年06月10日 21:52