エム・アイ・アソシエイツ(MIA)広報部より献本御礼....

....なのだけど、「提案営業の進め方」を売るのに提案営業きちんとしないのは問題ありすぎではないか。

本書「提案営業の進め方」は、 エム・アイ・アソシエイツ(MIA)代表、松丘啓司による提案営業の入門本。確かに書いてあることは正しいのだけど、正しいだけで売れるのであれば、提案営業はいらない。

まず、本書の売り方。私宛に献本下さるということは、当然私の書評もまた提案営業の一環のはずなのだけど、奥付で8月10日付発行の本のリンクが未だにAmazonはおろか日経 Book Directにないというのはいったいどういうことか。これではいくら第一線の営業部員がいても、宝の持ち腐れではないか。

それでも、宣伝効果は期待できるということにしておいて、本書の内容の方に話を移すと、理論であれば本書に書いてあることは正しいし役立つし充分使える。しかし皮肉なことに、本書を読んで得るものがある人は、営業というものを体できちんと知っていて、しかし体だけでは将来に不安を感じていて理論を会得したいという人で、しかしそういった人は、実績に裏打ちされていない理論ものには耳を貸さないのだ。

たとえば、本書にはこんなシーンが出てくる。人材派遣会社A社の営業担当が、カタログ通販会社B社を訪問した際のメモ。

p.116
A社(営業担当者) 今後の人材派遣ニーズは?
B社(事務部門の責任者) 利益率がだんだん低下してきているので、人件費を抑えたいのはやまやまだが....

私はこれを見てのけぞってしまった。なぜなら、営業の現場で、いきなりこんなに腹を割って話し合うことはまずないからだ。ここまで腹を割って話す関係を築けているのであれば、私ならもう商品開発、といってもこの場合人材派遣会社なので人材開発担当と呼ぶのかどうかは知らないが、とにかく商品を顧客向けにチューンできる人に引き継がせる。そこまで行くのが大変だから営業が専門職になったのではないか?

提案営業がステレオティピカルな営業と最も異なるのが、何を売るか。商品ではない。建前上の順位で行くと、

  1. 会社
  2. 営業担当
  3. 商品

ということになるが、実際のところ1と2は入れ替わってしまっていることも多い。営業のエースが客ごと他者に引き抜かれてしまうケースが少なくないことを考えればなおさらである。モノよりもヒトを売り込むのが、提案営業の要諦である。極端な話、商品がまだなくても、ヒトを売り込めれば商品は後付できてしまうのが提案営業の提案営業たるところでもある。

そして、本blogの書評も、実は提案営業なのである。提案営業である以上、私は書評そのものよりも私自身を売り込むことを優先しているし、それが本blogの評価につながっているのだということは、心も体も実感している。それほど面白い本を面白いと言ったり、面白かった本のみを取り上げるということは短期的には有利でも、それは私自身の「営業」としての評価を下げてしまうのだから。

それ故、ネット書店へのリンクの欠如といい、実践例の淡白さ、というより汗臭さのなさといい、本書の提案営業の欠如は驚かざるをえないのだ。たかが本なのかも知れないが、知恵を売る会社ともなれば、従業員(社長も含めて)が会社での肩書きを載せて著した本であれば、それは提案営業するに足りる商材ではないのか?ましてや、本書が売るのは、提案営業そのものなのだから。

それとも、日経文庫というメディアに迎合しすぎたのか?

紺屋の白袴もここまで来ては、提案の有無はさておき営業にもとるのではないか?

Dan the Salesperson