2007年08月11日 01:15 [Edit]

作品評 - らき☆すた

♪もっていけ最後に笑っちゃうのは私
♪ムラサキだからです←結論
♪アルファギークなのにわからないのどうするよ

アルファギーク、らき☆すたを理解しようと努める:小鳥ピヨピヨ(a cheeping little bird)
「……らき☆すたの面白さだけは、わからないんだよなぁ……」

失礼しました。私もそう思っていたので、その理由を考えてみた。


らき☆すた」は、普通の女子高生の物語。以上。

これではお話にならないはずで、実際お話にならない。少なくとも、わざわざお金払って自分の時間まで削って見聞きするまでもないはずである。本来であれば、自分の友人とだべっている方がよっぽど面白いはずではないか。

ところが、「らき☆すた」の場合、らき☆すたは面白くないこと、まさにそれ(勝ち|価値)なのだ。「らき☆すた」は、話にならない部分を、読者や視聴者が補ってはじめて楽しめる話なのだ。要は白米。おかずは読者や視聴者が自分で用意するのだ。

だからこそ、「らき☆すた」本編はどこが面白いのかまるでわからないのに、そこから派生した作品はかなり楽しめるのだ。本編がハァ?な私も、「らきすためいでん」や「ソードマスターこなた」には大笑いさせてもらった。このことは、なぜアニメでこなたがハルヒになった時にあれほどの反感と失望感が出たのかの説明にもなっている。

本作品で一番「面白い」のは、泉こなたか小神あきらだが、そのどちらにしてもちゃんと「普通」の範囲に収まっている。こなたはおたくではあるけどギークには届いていないし、ましてやアルファではない。ギークだったら自分で作品作って持ち込むなりコミケで売るなりするだろう。小神あきらも、「普通の」というよりステレオティピカルな「ゲイノー人」に収まっている。

実は普通を描く際に、この程度の「ゆらぎ」は必ず必要なのである。そうでない、偏差値50ぴったりの普通人というのは実はなかなかお目にかかれないし、むりやりこさえても不気味の谷の底になってしまう。「らき☆すた」が普通のフィクション、すなわち普通でない人々が縦横無尽に活躍する作品と同じぐらい、細かくキャラクター設定をしてあるのは、それくらいしないとリアルな普通が演出できないからだ。

それだけキャラクターに力を入れておいておきながら、ドラマには欠かせないはずの「事件」はまるで起きない。せいぜいこなたがネトゲのやりすぎで寝坊するぐらい。他愛もない日常と、他愛もない会話。そこには宇宙人も未来人も超能力者も登場しない。

そういうお話が今までなかったかというと、ここにある。

この「OL進化論」もまた、普通のOLたちが、他愛もない日常と、他愛もない会話をしていく物語だが、OL進化論の場合、実は「現実」をゆるくしかし鋭く描くというドラマになっている。そこには世相が実に的確に描かれ、単行本を通してみると、それがバブル開始からその崩壊後の日本を描いた、フィクションの形を取った見事なノンフィクションになっている。

だから、「OL進化論」でMADをやろうという気は起こらないはずだ。なにしろアニメ化さえされていないのだ(それはそれで見てみたいが)。じゅんちゃんのMADを作ったら、なんだかぶっとばされそうな気がしないだろうか。

OL進化論でも、白米扱いするには現実臭すぎるのだ。

その点、「らき☆すた」は主人公たちは皆高校生。キャラクターになる程度には人生経験を持ちながら、まだ娑婆のにおいが染み付いてないという絶妙な時期だ。登場する大人も、黒井先生にしろ唯ねえさんにしろぜんじろう(こなた父)にしろ、娑婆臭くなりにくい職業ばかりだ。デスマーチの末過労で病院に担ぎ込まれたエンジニアは間違っても出てきそうにない。

本当にいそうでありながら、現実の痛さを背負っていない。だから、見る方にいじる余地が生じる。そして見る方はそれを楽しむ。

実は、これはCPANモジュールにも共通している。CPANモジュールは、それだけでは部品で何も出来ない。使ってもらってはじめて「楽しめ」る。Acme::のようなネタモジュールもあるし、MIYAGAWAモジュールの多くのように、「installしてすぐ使える」というモジュールも多いが、本当によく使われるモジュールは、なるべくPerlの世界の「普通」に作ってあるし、だからこそPerlの世界観を受け入れているユーザーはすぐにそれを使うことが出来る。そしてPlaggerのように、「らき☆すた」とは真逆に、世界の方を提示して「キャラクター」をユーザーまかせにするモジュールもある。

個人的には、Encodeももっと「精米度」を高めたいとも思うのだが、Unicodeが娑婆臭すぎて、あれ以上はちょっと無理というのが本音といったところか。

話を「らき☆すた」に戻す。よって歌の続きは、こうなる。

♪アルファギークなのにわからないのどうするよ
♪アルファだからです←きゃわいい

....と、つらつら書いてきたが、実は私は「らき☆すた」に限らず高校生活が描かれているフィクションのリアル度がどれほどのものか、よくわかっていない。なにしろ私はその経験を持たないのだ。塾の講師をしていたので、授業で何を教えているのかは見当がつくのだが、授業内容なんて、フィクションでは真っ先に省かれる項目でもある。

だから、フィクションを通してしか普通を知らない私には、学園モノは結構勉強になる。それは面白いというのとは違うのでもあるけれど。

いづれは、キャラだけ設定してどこかに転がしておけば、ニコニコ動画で立派な作品になって仕上がってくるようになるのだろうか。そんな日はそれほど遠くないような気がする。

Dan the Extraordinary


この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
フレームワークとしての「らき☆すた」 アルファギーク、らき☆すたを理解しようと努める:小鳥ピヨピヨ(a cheeping little bird) 「……らき☆すたの面白さだけは、わからないんだよなぁ……」 404 Blog Not Found:作品評 - らき☆すた CPANモジュールは、それだけでは部品
[考察]フレームワークとしての「らき☆すた」【萌え理論Blog】at 2007年08月28日 06:03
大人気アニメ「らき☆すた」の記事のリンクを集めました。 公式 「らき☆すた」オフィシャルサイト/「らっきー☆ちゃんねるWEB」/「らきすた」公式サイト こなたのブックマーク - らっきー☆ちゃんねる 準公式 ||| Lantis web site ||| TVアニメ『らき☆すた』|スペシャ
[情報]「らき☆すた」まとめ【萌え理論Blog】at 2007年08月28日 02:43
夏です。ヌケてない男たちが、目のやり場に困る夏です。 感じない男 森岡正博 pal-9999の日記 - pal-9999よりIをこめて皆様に残暑見舞い申し上げます今の僕はこんな感じです。 暑中見舞い代わりに紹介。
書評 - 感じない男【404 Blog Not Found】at 2007年08月13日 06:23
らき☆すた 3 限定版  らき☆すたが面白いか面白くないかっていうことについて、あちこちで結構話題になっています。  ・アルファギーク、らき☆すたを理解しようと努める  最初にこの記事を見たときには「あー、そりゃそうだろうな」と単に思っただけでした。 ....
らき☆すたの面白さを語るのはすべったギャグを説明するのと同じぐらい寒い【漫画読もうぜ】at 2007年08月12日 18:50
実は普通を描く際に、この程度の「ゆらぎ」は必ず必要なのである。そうでない、偏差値50ぴったりの普通人というのは実はなかなかお目にかかれないし、むりやりこさえても不気味の谷の底になってしまう。→作品評 - らき☆すた を読み、しばしフツーということに考えを巡...
フツーに生きるということの困難さ【blog50-1】at 2007年08月11日 12:01
アルファギーク、らき☆すたを理解しようと努める:小鳥ピヨピヨ(a cheeping little bird) 404 Blog Not Found:作品評 - らき☆すた 普段、アニメの話題なんか出てこなさそうなアルファギーク界隈な人たちが、なぜか「らき☆すた」に興味を持ってる! 世間が面白い面白いと
[anime]「らき☆すた」って面白いの?【北の大地から送る物欲日記】at 2007年08月11日 11:18
この記事へのコメント
作品の楽しみ方は人それぞれで、鼻息荒く「これこれこうだからつまらないのだ」などと理屈で説いても、それを楽しんでいる人が大勢いる以上、牽強付会っぽくて説得力に欠けますし、かなりむなしいですね。

>ところが、「らき☆すた」の場合、らき☆すたは面白くないこと、まさにそれ(勝ち|価値)なのだ。

この言い回しは、ちょっとまずかったのでは? 特に「らき☆すたは面白くない」みたいに、いきなり自分の本心を書いちゃあ、台無しじゃないですか。
Posted by 通りすがり at 2007年09月17日 03:39
『人が楽しそうに、幸せそうに話しているのを見るだけで私は幸せになる。』
強く同意します。
Posted by   at 2007年08月15日 12:54
らきすた、面白いとは思わないが、
読んでいて幸せにはなる。

人が楽しそうに、幸せそうに話しているのを見るだけで
私は幸せになる。

それが、女子高生であっても、年いった会社員であっても、
ああ、仲良くやってはるなぁ、と思う。

私から見ると、らきすたはいい人間関係を待ったり見せる、
というものだ。
女の子特有のの"イヤな噂話"は出てこないのはその一端か。

補)刑事ドラマもそういう側面を持っている。
Posted by 9725 at 2007年08月14日 05:33
普通の女子高生…?
Posted by   at 2007年08月12日 16:08
第一話で気づければこうはならなかった。

京(ry がやりすぎなければこうはならなかった。

新規が騒がなければこうはならなかった。

しかし、ある程度の者は「わかってて」やっている


。。。これもまた手の内
Posted by (オズマ改名)ロスペド at 2007年08月12日 11:00
らきすたは重度オタク向けってよりライトオタク向けだと思うよ。
語ってることはディープでもなんでもない普通のことだから…
Posted by   at 2007年08月12日 07:49
らきすたは重度オタク向け過ぎてライトオタには「?」なネタが多すぎて面白くないです。ニコニコで見て「元ネタ→○○」とか出されてもそこまで調べるほどの熱意が無いので無理。
Posted by at 2007年08月12日 00:50
OL進化論好きです。
はまってます。
Posted by ore at 2007年08月11日 21:09
「普通の女子高生のフィクション」と読んでしまうと理解できないと思います。私が思うにあれは「日本の男性オタクの現実を女子高生というラップに包んだノンフィクション」かと。

毎日かあさんは自分をありのままに、OL進化論はOLをOLとして描いているのに対し、男性オタクを女子高生に射影するという手法により、本来彼(=私(^^;)達にあるキモさをうまく消しつつ、共感を得ることに成功しているんだと見ています。そういう作品が成立する背景として、原作者が男性であるというのはむしろ必然かなと。

で、あれは日本の人々の現実なのでアメリカ在住の人には理解できない。また、理解できる人でも同属嫌悪になるか受け入れてしまうかで楽しめるかどうかが決まってくる。

さらに読者層を広げる工夫とか、対象アイテムを別の物に置き換えた場合の普遍性の話とかあるんですが、オタク必死とか言われそうなのでこの辺で。
Posted by とくめい希望 at 2007年08月11日 13:28
パロの大部分は理解できて作品中のあるあるネタも分かるのに
面白くない人もいますよ。俺とか。
さすがに叩いたことはないけど(というかどうでもよすぎて
叩くエネルギーが湧くまでに至らない)、ニコニコとかで
盛り上がってるのを見ると不思議な気持ちにはなります。

そんな自分がお勧めするアニメは「大江戸ロケット」と「ぽてまよ」
Posted by abyssgate at 2007年08月11日 10:27
らきすたはハルヒとかほかのアニメを見てないとね。パロが多いし。いわゆるツウ向けのアニメかも
Posted by tomi- at 2007年08月11日 07:15
らきすたに限らず「一人で見ても面白くない」アニメが増えただけでは?
絶望先生なんてニコニコ動画で視聴されるのを前提として作ってるようですが、今後そういう作品が増えるかも。
Posted by bob at 2007年08月11日 04:04
OL進化論→時系列でないとわからないことってありますね。気がつきませんでした。

フツーの高校生・・・授業・・・とんと覚えがない。せいぜい日本語訳のときに「文脈から言えば解釈はこうであるはずだ、だから訳はこうなんだ!」と無意味な反論を教師としていたくらいでしょうか?

このへんは大学進学を前提とした高校と大学進学を前提としない高校とで大きく違うんではないでしょうか?やっぱりフツーのフツーこそ特別なことはないのでしょう。

「ナンバー1にならなくてもいい。もともと特別なオンリーワン♪」ならフツーのフツーをめざすという方向性もありなんでせうな。マッキーの詞だと微妙なんですけど。

Posted by blog49 at 2007年08月11日 03:21