2007年08月22日 09:00 [Edit]
書評 - 心はプログラムできるか
本書「心はプログラムできるか」は、タイトルを見ると人工知能に関する本のように見えるが、目次を見ればわかるとおり実は人工生命に関して広く紹介した本。
目次 - Si新書『心はプログラムできるか 人工生命で探る人類最後の謎』概要 (サイエンス・アイ新書Web)よりそれでは人工知能(Artificial Intelligence = AI)と人口生命Artificial Life = AL)は何が違うか?
いわゆる人工知能、厳密には本書で言うところの「ふるきよき人工知能(GOFAI = Good Old-Fasioned Artificial Intelligence)」というのは、プログラムを重ねた結果、知能を持つように振る舞うソフトウェアを得ることを指す。そういうAIは、それゆえ全容が解析可能、すなわち単に知能を持つだけではなく、どういう仕組みで知能を持っているかも理解可能なはずなのだけど、そういう、現在のソフトウェアをそのまま敷衍した形でのAIは今のところはまだないし、作るのもかなり難しそうだというのがこれまでのあらすじ。
それに対し、人工生命というのは、はじめに単純なルールだけを与えて、あとは「環境」にそれを「放って」そのまま「置いて」おく。このやり方は、設計者が全てを把握しなくていいので研究する方も楽だが、出来上がったものはなぜそうなるのか理解できるものとは限らない。
もっと単純化して説明すると、人口生物の箸の上げ下げまで文句を言う神を研究者が演じるのが人工知能、産みっぱなしで放置する神を演じるのが人工生命とも言える。どちらが神にとって楽なのかは言うまでもないだろう。
本書を読むと、単純なルールでも端から見て知能があるのではないかという行動を示すようなモデルがいくつもあることに改めて驚く。特に面白いのは、一見ややこしそうな利他的行動も、単純なルールと適切な環境の「合わせ技」で現れてしまうことだ。本書では有名なアクセルロッドのしっぺ返し戦略だけではなく、利他的行動を示す他の戦略も登場する。
本書は人工生命の世界を深くよりも広く紹介したものなので、あらすじを要約できるタイプの本ではない。その点でも本書は人工知能的であるより人工生命的であり、全部頭から読まなくても、各章をざっと読んで、あとは自分でプログラムを書いて遊んでみるという使い方があっているように思う。そう。人工生命は、実に簡単に作れるのである。この簡単に作れることとそれが思いもかけぬ結果を生み出すことこそ、人工生命研究の醍醐味なのだろう。それは研究者でなくても、Game of LifeのGlider Gunを見ているだけで感じ取ることができる。なお、Game of Lifeに関しては、本書よりももう少し古くて狭いけど、さらに深い「ライフゲイムの宇宙」があるので、余裕があればあわせて読んでおきたい。
それらを勘案すると、「心はプログラムできるか」というのは、人工知能的でちょっとミスリーディングなタイトルだ。「コンピューターに心は生まれるか」とかの方がよかったかも知れない。本書はそのタイトルから想起されるほど難しい本ではない。もっと簡単で、もっとリラックスして読むべき本だ。それでいて、「もっと深く知りたい」という人にも親切で、例えば参考論文は巻末ではなく章ごとに紹介されているし、新書でありながら索引もきちんとある。とても200ページちょっとの本とは思えない読み応えで、その意味では今年読んだ本の中で最もお買い得だった一冊の一つだ。
生命に興味がある人は、ぜひご一読を。
Dan the Wetware
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ただ、脳=こころか?というと個人的にはどうも違うのでは?とか思っております。そういう意味で人工知能から人工生命へのシフトは必然ではなかろうかとか。
生命に必要なものは偶発的な事象というか・・・偶然の産物なのかな。
