2007年10月18日 00:05 [Edit]
ネット考察のよきサプリメント - 書評 - ネット未来地図
「いつもどおり」、佐々木さんより献本。
初出2007.10.16; 発売開始まで更新
Amazonの予約を待って書評。それにしても文春新書 はAmazon対策がなっていない。本書も12日には届いていたのに、予約開始が本日というのは遅すぎ。画像もまだないので、これは「『ネット未来地図』佐々木俊尚さんのスピードについていけてません!:[mi]みたいもん!」から拝借。
本書「ネット未来地図」は、「3時間で「専門家」になる私の方法」や「グーグル Google」で、いまやblog界では知らぬものなしの佐々木俊尚の最新作。
『ネット未来地図』佐々木俊尚さんのスピードについていけてません!:[mi]みたいもん!ちょっと!佐々木さんの執筆スピードにぼくの読書スピードがおいついていかないんですけど!
という人もいらっしゃるが、たとえば「フラット革命」と違って、本書は頭から尻尾まで全部読まなくてはならない本ではない。本書では、以下の20の論点を一冊にしたものなので、必要な論点だけをつまみ読みすればよいのだから。
目次- プロローグ
- ビジネスとインターネット
- 論点1 amazon - アマゾンが日本のオンラインショッピングを制覇する
- 論点2 Recommendation - お勧め(レコメンデーション)とソーシャル(人間関係)が融合していく
- 論点3 行動ターゲティング -- 行動分析型広告は加熱し、ついに危うい局面へ
- 論点4 仮想通貨 -- 電子マネーはリアル社会をバーチャルに引きずり込む
- インターネット業界
- 論点5 Google -- グーグルvs.マイクロソフト 覇権争いの最終決着
- 論点6 Platform -- 携帯電話キャリアは周辺ビジネスを食い荒らしていく
- 論点7 Venture -- 日本のネットベンチャーの世代交代が加速する
- 論点8 Monetize -- ウェブ2.0で本当に金を儲ける方法
- メディアとインターネット
- 論点9 YouTube -- ユーチューブは「ネタ視聴」というパンドラの箱を開いた
- 論点10 動画 -- 動画と広告をマッチングするビジネスの台頭
- 論点11 TV -- 日本のテレビビジネスはまもなく崩壊する
- 論点12 番組ネット配信 -- NHKが通信と放送の壁をぶち壊す
- 論点13 雑誌 -- 雑誌とインターネットはマジックミドルで戦う
- 論点14 新聞 -- 新聞は非営利事業として生き残るしかない
- コミュニケーションとインターネット
- 論点15 Second Life -- セカンドライフバブルの崩壊する時
- 論点16 ネット下流 -- 携帯電話インターネット層は新たな「下流」の出現
- 論点17 Twitter -- 「つながり」に純化するコミュニケーションの登場
- 論点18 Respect -- 「リスペクト」が無料経済を収益化する
- 未来とインターネット
- 論点19 リアル世界 -- 検索テクノロジーが人々の暮らしを覆い尽くす
- 論点20 Wikinomics -- 集合知ウィキノミクスが新たな産業を生み出す
- あとがき
まあよくもこれだけの論点を洗い出したものだ。それだけに、個々の論点は10ページ程度。一冊の本の各章を読むというより、雑誌の記事を読むような感覚で読めば良い。その意味で、本書は新書というよりも定期刊行物的だ。それが新書の皮をかぶっているのは、本書でも指摘しているように雑誌というメディアが先細っていることも大きいのだろう。
その意味で、「ネット未来地図」というタイトルは、失敗とまでは言わないまでももったいない。文春新書というメディアであれば、むしろ「日本の論点」に引っ掛けて「ネットの論点2007秋」として、定期刊行してしまえばいい。この「あちら側とこちら側の狭間」というニッチは著者ががっちり押さえているのだから、あとはそれを明文化してしまえばいい。徳大寺有恒の「間違いだらけのクルマ選び」のように。著者にはその能力も資格があると思う。
もちろん、徳大寺有恒がクルマを作っているわけではないように、著者もこれらの論点を作っているわけではない。なぜこれほど広大な論点を、執筆スピードが読書スピードを凌駕するほどの速度でカバーできるかといえば、一つには3時間で「専門家」になる方法を著者が身につけているということがあるが、もう一つ、著者がネットの世界における借力術を身につけていることも大きい。例えば本書の論点10は、半分は私が書いたようなものである。しかし私がblogで書いた素材を、きちんと料理した上で提示しているのだから、これは剽窃ではない。そして著者はきちんとその代価を素材提供者に「支払う」ことも忘れていない。ただし、それは金銭ではない。本書を読めばそれがおわかりいただけるはずだ。
「こちら側」にとっても「あちら側」にとっても、佐々木俊尚は実に得難い存在であり、本書はそのことを改めて証明している。その著者の「ショバ」である以上、文春新書におかれてはもう少し「真ん中」すなわち「あちら側」シフトを取ってもらいたい。別に保守から中道へ、ということじゃない。Amazon対策も自社ページももう少しなんとかならんものか。
Dan the Frequent Reviewer Thereof
