2007年11月16日 00:00 [Edit]

将棋はスポーツだ! - 書評 - 頭脳勝負

祝・供給再会。

404 Blog Not Found:人生は先手必勝にあらず - 書評 - 後手という生き方
P.S. ちくま書房様、早く「頭脳勝負」を供給してくださいませ。Amazonで品切れです。私は予約していたので手に入れることが出来ましたが。供給再会次第書評します。

本書「頭脳勝負」は、渡辺明竜王による将棋の本。

「頭脳勝負 将棋の世界」(渡辺明著 ちくま新書) - My Life Between Silicon Valley and Japan
そして帯の言葉を二ヶ月ほど、この本のゲラを何度も読みながら考え続けた。短いひとことを考えることは、長い文章を書くのと同じくらい難しい。

その梅田望夫の選んだのは、「こんな将棋の本は今までなかった!」という、こんな陳腐なオビ今まで見たことがなかった!というものでもあるが、しかし実はこの陳腐さこと、今までの将棋本になかった美点なのである。

目次 - 渡辺明ブログ 新書。より。
第一章 頭脳だけでは勝てない
偶然の少ないゲーム / 集中力のメリハリ / ヤマを張る / 気合で行くか、冷静になるか / 封じ手の駆け引き / 直観の精度 / ミスと切り替え / 駆け引きは対局の前から / 二大戦形 / 出来を左右する対局の重要度 / 普段のトレーニング / 調子の良し悪し / 将棋は何歳がピークか / 小学生からプロを目指す / 学業と将棋の両立 / 趣味と息子
第二章 プロとは何か
奨励会制度 / 私の奨励会時代 / 将棋にコーチはいない / プロはどうやって稼ぐか / 新しいニーズ / 名人戦と棋士のランク / レッスンプロの待遇 / 段位と実力の関係 / トップと新人の実力差は / 女流棋士の強さ / 女流新団体 / アマとプロの差 / 強くなる手段に困らない時代 / アマからプロになった男 / ブロガー渡辺 / コンピューターの進化 / ボナンザ戦を受けた理由 / いよいよボナンザ戦 / コンピューターはどこまで強くなるか
第三章 将棋というゲーム
スポーツを観るように将棋も / 序盤は作戦を練る / バランスは相手を見て / 互角でも好みはある / 実利を求める中盤 / 方針を徹底する / 勝負を決める終盤 / 実戦を見よう! / 駒のやりとりでポイントを稼ぐ / 損得だけでなく「効率」も見る / スピードが問われる / 定跡と研究 / 一手の違いで全く新しい世界が / 現代将棋と過去の大棋士 / トップ棋士たち / 同世代のライバルたち / 追撃する最若手と踏ん張るベテラン
第四章 激闘!
防衛戦の前に / 開幕二連敗 / 「開戦は歩の突き捨てから」 / 存在しない局面が見える! / 流れを変えた角打ち / 佐藤康光再び / 突然の不調 / 超急戦 / 全く予想外 / 盲点 / 自分を信用すること
付録1 ルール解説
付録2 さらに将棋を楽しむために
付録3 詰め将棋(山田康平氏提供)

今までの一般向け将棋本というのは、将棋マニュアル(e.g 「やりなおしの将棋」か、棋士という「なぜか」たぐいまれなる知恵の持ち主による「将棋を通した人生訓」(e.g. 「決断力」他多数)かのどちらかだった。しかし本書は違う。「将棋というスポーツ」に関して、現在その頂点に立つものが「将棋ってこう楽しむんだよ」と楽しみ方を解いた本なのである。

なぜ、このような本が今までなかったのだろう。不思議といえば不思議である。他のスポーツであればいくらでもあるのに、なぜか頭脳勝負のスポーツには、囲碁もそうだが将棋にもあまりない。

これらが楽しいことが自明だからだろうか。それはある程度真実だろう。私ぐらいの年齢であれば、将棋のルールは、少なくとも男の子なら知っていたものだし、女の子でも知っている子は少なくなかった(実際妻も駒の動かし方は知っていた)。しかし、将棋の他にも「子供のための勝負遊戯」がいくらでもある現在、これは自明とは言えなくなっている。

その一方で、将棋の面白さを知っている人の腕は「高速道路」のおかげでめきめき上がっているようだ。これはどの「棋士本」にも書いてある。速い話、将棋を知る人と知らない人の溝がどんどん大きくなっているのだ。昔は富士山型だったが、裾野近くが崩落して、その代わりに溶岩ドームが頂上から突き出したといったところだろうか。

しかし、将棋はゲームであると同時にスポーツであり、自分でプレイするだけではなくプロのプレイを観戦するのもまた楽しいものなのである。本書が示したのは、まさに「プロでない人のための将棋の楽しみ方」。私が今書いている「アマグラマーのすすめ」もそこを狙っている。が、残念ながら将棋のルールほどコンピュータープログラミングのルールは確立されたわけではないので、まずは「やりなおしの将棋」のニッチをめざしているところである。

ところで、「囲碁も将棋もスポーツだ」というと、この国では未だに驚く人がいる。スポーツ=肉体勝負ということが常識化してしまっているのだ。確かに英語の"sport"にもそういうニュアンスはあるが、チェスは立派にスポーツとして認められており、新聞でも関連記事はスポーツ欄である。ところが、あれだけ新聞との関係が深い将棋は、不思議なことにスポーツ欄には掲載されていない。まずはこれを改めるべきではないのか。

将棋がスポーツであるということは、来るべき「機械に人間が敵わなくなる日」に対する布石としても重要だ。我々はマラソンランナーたちに車よりも早く走ることを一切期待しない。それでいてマラソンを楽しむことが出来る。頭脳勝負も本来同じこと。同じことではあるが、なぜか「頭脳」とついたとたん、我々はそれを特別扱いしはじめる。筋肉も頭脳も、天然の機械であることには全く変わるところがないのに。

将棋に限らず、日本ではもっと頭脳スポーツが楽しまれていい。私自身、プログラミングもスポーツと捉えている。将棋と違って明白な勝負がつくことは以外と少ないのであるが、その代わりフィギュアスケートのような楽しさがある。将棋以上にスポーツとして認められているとはいえないが、しかし「実行速度において機械にかなわない」という点はすでに認知されているのが利点か。いや、その機械を操る技巧を競うのだから、乗馬やF1に通じるのだろうか。

まずは楽しみ方を知ろう。肉体勝負のはずの「普通のスポーツ」だって、そのルールを決めるのは頭脳。実のところ、スポーツというのは全て頭脳勝負。頭脳勝負である以上、まずは頭脳が勝負の楽しみ方を知っていないと、いくら手足を動かしても楽しめないのだから。

もっとも、「将棋マニュアル」部分に関しては、本書の付録より「やりなおしの将棋」の方がよくできている、というより新書の付録では駒の動かし方を解説するだけの紙幅しか残っていない(それでも詰め将棋を詰め込んだのは偉いが)。マニュアルに徹した「やりなおしの将棋」の方では、ちゃんと囲い方や攻め方も解説していて、それを知っているのと知らないのでは全然楽しめる度合いが違うのだから。出来れば双方そろえておきたい。

Dan the Sportsman

追記(翌日00:30):ぎゃー、今見たらまた在庫が払拭してる。


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頭脳勝負−将棋の世界(ちくま新書)【新書中心主義−心理学者の読書日記(livedoor館)】at 2007年12月17日 00:20
将棋のプロ棋士・渡辺明竜王の「頭脳勝負―将棋の世界」を読んでいます。 まだ読み終わってはいないのですが、いろいろな面から面白い一書ですよ。 著者の主張は1点。 「将棋というゲームは難しいが、それを観て楽しむことは難しくない!」
「頭脳勝負」―いかに観て楽しむか?【カルシィ村へようこそ!-Neverwinter Nights】at 2007年11月23日 07:21
JUGEMテーマ:学問・学校 明日から、第20期竜王戦七番勝負第4局が行なわれる。 ここまで渡辺竜王の2勝1敗。 いずれも後手番が勝っている。 挑戦者の佐藤二冠は、最近調子を落としている。 ここで踏み止まりたいところであるが、苦しいのではないだろうか。 ...
【将棋】第20期竜王戦七番勝負第4局・展望【TOEIC990点を目指す。】at 2007年11月20日 21:40
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リンク沢山【遠山雄亮のファニースペース】at 2007年11月16日 11:47
この記事へのコメント
「払拭」→「払底」
Posted by Iridium at 2007年11月21日 21:50
「祝・供給再会。」→「祝・供給再開。」
Posted by ごろー at 2007年11月17日 01:55
たしかに将棋は面白いですが、
スポーツ?

以前、野球は格闘技だと言った方がおられましたね。
Posted by あど at 2007年11月16日 23:43
> 私自身、プログラミングもスポーツと捉えている。

 その考えを広く認知してもらうためには、プログラミングの括りを少し狭める必要があるのではないでしょうか?

 チェスで人間より強いそれと、テレビのリモコンに入っているそれと、トヨタの高級車に数十の単位で入っているマイコンのそれを同列に語ることが素人にとってもプロにとっても不幸。
Posted by snark_tail at 2007年11月16日 12:09
海外ではテレビゲームですらスポーツ認定されつつありますね。
あと、将棋に関しては人間がプログラムに勝てなくなるのはまだまだ先になると思います。
Posted by bob at 2007年11月16日 10:04