2007年11月28日 23:30 [Edit]

この記事をクリップ! newsing it! Buzzurlにブックマーク b.hatena.ne.jp/entry プロットよしキャラよし終わりよし - 書評 - チーム・バチスタの栄光

こ、これは凄い。さ、作者絶倫!

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チーム・バチスタの栄光(文庫版上下)
海堂尊
404 Blog Not Found:Aiって何だ!? - 書評 - 死因不明社会
実際本書も「このミステリーがすごい!」大賞受賞作である「チーム・バチスタの栄光」が下敷きになっている。私はまだ同作品を読んでいないのだが(本書を見て即注文した)

「続きを読む」しなくてもいいから、今すぐここでクリックして入手して読破してタッてイくべし。そうそう一つ注意。購入する際は上下巻とも必ず買うこと。なにしろ主人公の一人は下巻にならないと登場しないのだから。


本作品「チーム・バチスタの栄光」は、医師、海堂尊の作家デビュー作。ノンフィクションもすごいことは昨日紹介した「死因不明社会」が証明しているが、その原点が、医療ミステリーというフィクションである本作品である。

まぎれもない傑作であり、デビュー作としての完成度の高さは「パラサイト・イヴ 」以来というあとがきの文句は嘘じゃない。

しかし、本作品をネタバレなしで紹介するのは、それだけに困難である。

単行本紹介より
東城大学医学部付属病院では、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門チーム「チーム・バチスタ」を作り、次々に成功を収めていた。ところが今、三例続けて術中死が発生している。しかも次は、海外からのゲリラ少年兵士が患者ということもあり、マスコミの注目を集めている。そこで内部調査の役目を押し付けられたのが、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口と、厚生労働省の変人役人・白鳥だった

そう。そもそもこの術中死が事故か事件かすら語ることすら、ネタバレになってしまうのだ。

しかしありがたいことに、本作品のキャラクターなら、紹介してもネタバレにならない。このキャラたちがまず立ちっぱなしなのだ。まず主人公の一人、田口公平。こいつは医者なのに血を見るのがイヤで、一番血から縁がなさそうな神経内科に進み、自ら率先して窓際医師になった男。医者なのに血がダメとは、獣医なのにネズミがダメという「動物のお医者さん」の二階堂を彷彿とさせる。

しかし、この主人公その一は、本作品の中ではいちばん「まっとう」な人間であることが判明する。役どころで言えば、「涼宮ハルヒ」シリーズのキョンといったところか。

医療も院内政治も一流な高階病院長の意外な弱点とは?チーム・バチスタを率いる、医者の鏡にしか見えない桐生に弱点はあるのか?そして栄光あるチームメンバーたちの以外な素顔とは?これらの脇役たちの秘密もまた本作品で解かれるミステリーである。

これらの立ちっぱなしのキャラクターたちが全て登場してから、文庫版下巻になってやっと登場するのが、主人公その二である白鳥圭輔。こいつのぶっ飛び方がまたすごい。ハルヒが修道女に見えるほどだ。ある意味本作品で一番リアリティがなさそうなのがこの御仁なのだが、ロジカル・モンスターだけあって、この野郎は自らの存在の不条理すらねじ伏せてしまうかのようだ。

この登場人物たちが思い切りキャラ立ちしているところが、同じ超大型新人でも、瀬名秀明との決定的な違いだろう。瀬名作品においては、登場人物たちはあくまでも物語のコマ。だから物語の印象は強く残っても、登場人物たちの印象はほとんど残らない。それに対して、海堂作品においては、脇役まで鮮烈な印象に残る。特に田口付きの看護師の藤原さんは私の大のお気に入り。白鳥圭輔に至っては、「ターミネーター」のシュワちゃんなみである。

この「キャラを立てる」という違いが、瀬名、海堂両社の執筆ペースの違いとなってあらわれているように思う。キャラが立っていると、物語をキャラたちがある程度自律的に進めてくれるので、作品をたくさん作りやすいのだ。ラノベの多くはこのパターンだし、ミステリーにもこのパターンは多く見られるが、去年のはじめにデビューして現在までに七作品というのは、ラノベも真っ青の刊行ペース。しかも著者は医者をやめていないのである。

それでいて、プロットが荒っぽいかというとさにあらず。本作品の「大きな」謎は、術中死が事件だったのか事故だったのかということであるが、それ以外にも「実は最後になってそれも謎だった」というのが後になってわかる謎もたくさんちりばめられている。

それでいて、伏線が多すぎてわけがわからないということが一切ない。本作品は実にスムーズに読み進めることが出来るのだ。まるで熟達した外科医の手術だ。短時間で、大胆に見えながら繊細であるという点で。

しかし、本作品でもっとも関心したのが、きちんとハッピーエンディングになっていること。ミステリーというと、「事件は解決したけど、関係者の心に深い傷を残した」というものが多いのだけど、本作品は心から笑って読める。「ハートフル」とかというのともちょっと違う。キャラたちが自分達の落ち着くべきところにきちんと落ち着いているのだ。それは本作品の「最も悪い奴」ですらそうとも言える。もちろんこれを持って「ハッピエスト」言ってしまえば、田口も白鳥も納得しないだろうが、それでも白鳥も言うように、ハッピーでないこともまた「不幸中にありながら慶事の至り」なのだ。

参りました!

Dan the Newest Fan Thereof


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この記事へのコメント
いつも書評楽しませていただいてます。ところで、日刊サイゾーに「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」(http://www.cyzo.com/2007/11/post_157.html)の書評を載せていらっしゃいましたが、もっと詳しいのが見たいです。掲載希望。
Posted by 露男 at 2007年11月29日 00:32
> 役所で言えば、「涼宮ハルヒ」シリーズのキョンといったところか。
「役所で言えば」……ぇ?
なんでいきなりお役所が……と5分くらい悩みました。
そうか「やくどころ」かあ!
Posted by 会社員 at 2007年11月29日 09:51
動物のお医者さんのリンクがパラサイト・イヴになってる。
Posted by ねずみ小僧 at 2007年11月29日 12:00
会社員さん、
我が家で映画をとっていったやくどころこうじ様にも申し訳ないので、ひらがないずしました。
ねずみ小僧さん、
あ、ほんとだ。直しました。
Dan the Man to Err -- Like Team Batista
Posted by at 2007年11月29日 12:32
(誤)関心
(正)感心

「参りました!」とあるので、おそらくは。
Posted by 11031 at 2008年05月03日 12:54