2007年11月29日 20:00 [Edit]

優秀なナースなら当然看護記録は付けてるよね?

これを読んで、s/ナース/現場/g;s/病院/システム/gとして一般論化した場合は非常に納得した(というのかs/ナース/自分/gで思い当たるフシがありすぎてorz)のだけど、そのまま読むとずいぶんと違和感があるのは海堂尊作品の読み過ぎだろうか?

Life is beautiful: 優秀なナースがいるとシステムがなかなか改善されないという話
Why hospitals don't learn from failures(なぜ病院は失敗から学ばないのか)」という論文を読んでなるほどと思う部分があったので、ここにメモ代わりに書いておく。

ちなみにこの原文は、

でPDFとして入手できる。ぐぐったら一発で見つかった。


その最大の違和感は、一般論として見た場合もっとも納得感の高い以下にある。

Life is beautiful: 優秀なナースがいるとシステムがなかなか改善されないという話
 問題は、ナースたちが優秀であればあるほど、システム上の問題点が病院の経営側に伝わって来ないこと。ナースたちにとってみれば、システムの欠陥を指摘する・他人のミスを指摘する・ミスの原因を徹底究明する・経営陣に改善を申し出る、などは彼らの仕事ではなく、そんな暇があったら一分一秒でも患者のためになることをすべき。

看護記録は、一体どうなってしまっているのだろうか。

ナースの仕事は、患者や医師の面倒を見る(to nurse)することだけでは終らない。彼/女がそれをいつどうやったのかを看護記録(nursing log)として記録するのも世界共通の仕事だ。「レーポートが上がらなければ仕事が上がったことにはならない」というのは、今やどんな仕事にも共通しているのだが、ナースの世界はそれが特に厳しかったはずで、日本では医師が記録するカルテ(chart)よりもきちんとしていることが多いというのは複数の医師から聞いたこともあるし、医師が書いた本でも見かけたことがある。

チーム・バチスタの栄光
麻酔記録と看護記録がいい加減なことは、普通はまずない。

だとしたら、システム上の不備もまたこれらの記録(medical records)に現れるはずではないか?

ところが、件の論文を読むと、こうした「現場当事者による記録」にあたった形跡が見られないのである。寝不足なので見落としたかと思って"log"、"record"、"chart"という言葉で論文内を検索してみたのだが、驚くべきことに、この3つの単語は一つも論文中に登場しない。

筆者は「だから病院の経営陣は、ナースの日々の活動に常に近いところにいてどんな問題を彼らが解決しなければならないのか、どんなところに余計な時間を費やしているのか観察し、積極的に手を差し伸べてシステムを改善しつづけなければならない。そして、他人のミスを指摘することが個人攻撃にならないような文化を作り、誰もがオープンに自分や他人のミスを語り合える場を作るべき。」と結論付けている。

この観察の第一歩は、「ログを解析」することではないか。これは病院にしろWebサイトにしろ真実である。ログがずさんだったり情報が不足だったり、また改竄されていたりという可能性も事例も当然あるが、それすら実際に読んでみなければわからないものだ。

確かにこうした現場当事者による記録は、忙しい現場においては嫌われがちである。今では考えられないことであるが、Webの黎明期には、サーバーのパフォーマンスの「改善」のためにログの出力先を/dev/nullにしていたことすら結構あった。

実は、私が某社に入って最初にやったことは、日報の義務化。ただでさえ忙しい現場に「日報出せ」と説いて回るのは正直気持ちのいい仕事とは言えなかった。しかし私がやったことの中で、多分一番重要なのはこれだったと今改めて感じている。

しかしそうやって折角記録が残っても、それをシステムの設計・保守・管理に活かされなければ宝の持ち腐れである。件の論文では、なぜ現場記録がスルーされ、わざわざ聞き取り調査をしたのだろうか?聞き取り調査が不要というつもりはないが、解析の順序がおかしいのではないか。「観察」するのも結構だが、logを読むのが先ではないのか?

Dan the B?logger


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404 Blog Not Found:優秀なナースなら当然看護記録は付けてるよね? に納得。そして自分に照らし合わせると、 実は、私が某社に入って最初にやったことは、日報の義務化。ただでさえ忙し...
だから、まっさきに現場の信頼を勝ち取ろうと努力する【Think and Win】at 2007年11月30日 09:23
404 Blog Not Found:優秀なナースなら当然看護記録は付けてるよね...
ある意味良くあるマネージメントの問題なのでは【OPC Diary】at 2007年11月30日 08:05
医療系ITコンサルタントの人のお話を以前聞いたことを思い出したりした。 実は、私が某社に入って最初にやったことは、日報の義務化。ただでさえ忙しい現場に「日報出せ」と説いて回るのは正直気持ちのいい仕事とは言えなかった。しかし私がやったことの中で、多分一番重要
[システム]医療の現場【ITっ子の日記】at 2007年11月30日 08:00
優秀なナースがいるとシステムがなかなか改善されないという話 単純に言うべきことを言わない人間がいるという話で、組織においてはそれは優秀の定義とはならない気がする。 或いは...
仕事を安請け合いしない【眠る開発屋blog】at 2007年11月30日 02:30
この記事へのコメント
 記録の性質が異なると言って良いと思います。

 近年、ヒヤリ・ハット(インシデント・アクシデント)報告というのが大学病院などに義務づけられるようになり、ある病院では年間1000例ほどの報告がなされるようになっています。

 逆に言うと、カルテや看護記録からその種の情報を抽出するのは大変です。…事後的に重大な失敗が明らかであった場合のみ、慎重に経過を辿るなら、遙かに容易に抽出できます。

 それ以外の求める情報は、一昔前までは始末書の中に綴じ込まれていました。
Posted by rijin at 2007年12月02日 21:00
そもそも問題になっている「システム」ってえのは
看護記録「だけ」の話じゃないでしょ
ミスを少なくする仕組みをどうしようか?ということじゃないのか?
Posted by 路地裏の中年 at 2007年12月01日 17:46
看護記録にはシステムの不備を記載する欄などないのではなかろうかと愚考する次第。
さらには、そんなもの(システムに対する不満、批判)を看護記録に書いたって、意見が生かされるどころかバカと思われるのが関の山かと。
Posted by EMANON at 2007年11月30日 12:52
 はじめまして。病院勤務医師です。
 ログ解析については確かにそう思いますが、異議をとなえたい部分もあります。

 看護記録は基本的には個々の患者に施されている医療/看護が正しく行われているかどうか、妥当かどうかだけに最適化された文章です。
 したがって、いくら看護記録が詳細であり、記載漏れがないといっても(確かにそうです)上位のシステム構造とは無関係です。

 プログラムの世界でいうと、プログラムの文法的な正しさは、必ずしもプログラムの美しさ保障しないのと同様、きっちりした看護記録だからといって、システムの不備を浮き彫りにする目的には使いにくいように思います。

 電子カルテ(看護記録)の文章からシステム不備がほのみえるような文章だけが抽出できればいいのですが、看護記録は、そういう抽出には不向きな文体です。
Posted by Hanjuku at 2007年11月30日 12:08
それこそ個人情報保護/守秘義務の問題では。
看護記録は患者の個人情報の固まりだし部外者の閲覧は守秘義務違反になるので、許可は絶対に出ないのではないでしょうか。
Posted by とおりすがり at 2007年11月30日 09:54
ナースの看護記録って
結構細かくてたいへんみたいですね。
仕事以上に気をつかうとか、、
Posted by そう at 2007年11月29日 22:17
多分後で読みやすいログ書式を考えていなかったのではないでしょうか?
Posted by 未記入 at 2007年11月29日 21:38