2007年12月08日 16:15 [Edit]

「誰の」には三つある

実にカジュアルに使っている「Xは誰のYなのか」という表現なのだけど、これには少なくとも三種類ある。

すちゃらかな日常 松岡美樹 ソーシャルブックマークは「自分の領域」なのか?
ソーシャルブックマーク(SBM)はプライベートな空間か? それともオフィシャルな場なのか? あなたはどう思いますか?

この違いの実例として一番有名なのが、5ドル札の中の人の演説。

Abraham Lincoln - Wikiquote
and that government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth.

この場合、三つ「の」-- of, by, and for -- が全て一致しているところに演説の格調高さだけではなく「拡張」高さがあるのだけど、この三つが一致するのはそれが government だからで、モノがそれ以外だとそういったことは滅多にない。

ここで三つ「の」を改めて整理しておくと、こうなる。

of - 誰のものか
一番狭義の「の」がこれ。所有権。
by - 誰によるものか
作成、維持、管理が誰によってなされているか。
for - 誰のためのものか
それによって誰が受益するか。

ネットにおける各種サービスとこれらの対応表は以下のような感じになる。

ofbyfor
BBS自分たち管理人(中の人)自分たち
blog自分(blog主)自分みんな
SMS自分自分自分+友人
SBM元URLの持ち主自分たち参加者

「感じ」とわざわざ書いたのは、直感的に答えるとこうなるということであって、法的な定義などとは異なる、という意味。そしてこの場合は「感じ」の方が「定義」よりも重要である。なぜかといえば、これらのメディアの特性を決めるのは「定義」ではなく「感じ」だからだ。

ここで注目していただきたいのは、SBM。三つある「の」のうちでも一番狭義のものに関して、これだけが「書いた人」ではなく「書いた対象」なのだ。本blogにはこの現在88,983ものはてなブックマークが存在するが、これらのほとんどは私がブックマークしたものではないにも関わらず(もちろんセルクマもあるが)、「私のもの」という感覚なのだ。

しかしこれらは「私のもの」であるにも関わらず、個々のブックマークに関しては、セルクマ以外のブックマークに対しては、私は何もすることが出来ない。この「自分のものであるにも関わらず、自分には何も出来ない」という感覚こそ、SBMの最大の特徴ではないか。

すちゃらかな日常 松岡美樹 ソーシャルブックマークは「自分の領域」なのか?
ソーシャルブックマークは機能としてはオープンな場なんだけど、「自分の領域」としてふるまったほうが世の中的にはおもしろい。

これはブクマする側の結論なのだけど、ブクマされる側の方の結論としては、ブクマとは「自分ではコントロール不能な自分の領域」ということになる。

このことを不気味がる人も少なくない。有名どころでははてなブックマーカーたちを「ネットイナゴ」と呼ぶことでも有名な池田信夫さんなどがそうであろう。しかし、私にはこの「自分にはどうしようもない自分のもの」がとても心地よい。それがなぜかと言えば、それが確かに「みんなのため」になっていることが実感できるからだ。

この感じ方の違いは、もしかしてエゴの大きさによるものかも知れない。エゴがまだ小さい、すなわちエゴの目的が of の拡大であるうちは by が of と一致していないと不快である。しかしエゴの目的が for の拡大と一致しだすと、むしろ by が of と一致していない方が、手間がかからない分得なのだ。

私個人としては、 for all のうち self で充分元が取れていれば、for the rest of us、すなわち all - self のシェアがどれだけあるかはどうでもよくなってきている。もっともこれは私がすでに充分以上に of self なものを持っているから言えることなのかも知れないが。

私としては、この議論抜きでも機能的にはコメント欄よりもSBMの方がはるかに洗練されているので、コメント欄を閉鎖する代わりに「言いたいことはSBM」でとしたいところだが、残念ながらまだそこまでSBMは普及していない。まだユーザーが10万オーダーのうちは、コメントの受け皿としては充分とはとても言えない。誰もがSBMのアカウントを持っているという状態になれば是非そうしたいところなのだが。

Dan the Blogger for Himself, by Himself, for You


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この記事へのコメント
Kei さん、私がそれを初めて読んだのは「学校で教えてくれない英文法」という本です。
Government は単なる名詞構文で、「govern すること」という意味なので、people「を」の of なのだ、と書いてあったと思います。

Posted by tamo at 2007年12月08日 18:14
"government of the people" の部分だけを解釈すると、統治の対象が人民であるという意味になる、と昔どこかで読んだなあ。政府を所有するのが人民であるという解釈は、よくある間違いだ、と。
Posted by Kei at 2007年12月08日 17:58