2007年12月12日 02:30 [Edit]

タイトル=著者 - 書評 - 女の敵

日経BP出版局編集第二部の柳瀬様より献本御礼。

献本頂いたにも関わらず大変恐縮なのだが、これをきちんと言っておかないと書評ブロガーとしての私の価値が暴落してしまうので、柳瀬様には申し訳ないが最初に申し上げる。

今年私が読んだ本の中で、最低の一冊。


本書「女の敵」は、遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」 (遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」):NBonline(日経ビジネス オンライン)を書籍化したもの。

目次 日経BP書店|商品詳細 - 女の敵より
はじめに
  1. 「女の敵」のオンナ
  2. 「女の敵」のオトコ
  3. 「女の敵」のあれやこれや
  4. 「女の味方」のオトコ
  5. 「女の味方」のオンナ
  6. 「女の敵」はもしかして私?

目次を見てわかるとおり、四方八方敵ばかり。ここで著者は覇者、項羽ばりにバリバリと戦うのだが、しかし著者は何のために、誰のために戦っているのだろうか。

これは著者の「師匠」にもあたる上野千鶴子にも言えることなのだが、彼女達は確かに強い。「単騎」で彼女らに舌戦で勝てる男はまずいないぐらい。しかし彼女たちの戦いが、「何か大事なものを勝ち取る戦い」にも「何か大切なものを守るための戦い」でもなく、「戦いのための戦い」にしか見えないのはなぜだろうか。

彼女達の戦いは、一体何をもたらしたのだろうか。女たちはそれで幸せになったのか?男たちはそれで女たちをもっと大切に扱うようになったのか?そして何より、彼女達自身はそれで幸せになったのか?

それが最も端的に表れているのが、以下の下り。

P. 121 (男が女に支払う慰謝料 (遥洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」):NBonline(日経ビジネス オンライン))
妻が妊娠したとき男性たちにできることがあるとすれば、妊娠期間中に毎月慰謝料をあげてはどうか。「君にだけ辛い思いをさせてごめん」という言葉を添えて。それが解決法とも思えないが、少なくともそれが、愛おしい妻が、どこかなにかを怒っている恐い妻にならないための手立てのように思う。

これを見て嘆息せざるをえなかった。

これは死ななきゃ直らないタイプのバカだ、と。

バカその一。著者は妊娠を苦痛としか捉えられないということ。私には妊娠する能力はないが、世の女性たちが100%妊娠を苦痛だと思っているわけではないということぐらいは知っている。ちなみに我が家では子供を持つことに積極的だったのは妻の方で、私が妻に「折れた」のだが、そういう女性というのは著者の理解の外にあるのだろう。

バカその二。その著者の主観が、女性を代表する公論だと著者が思い込んでいること。さもなければ思ってはいてもこんなことは言えない。激しい個人差があれど、妊娠が苦痛を伴うということは私も知っている。もしかして、女であっても妊娠したことがない(であろう)著者よりも。それが100%男に責任があるというのであれば、慰謝料も相当だろう。しかしここに登場する女性は、妻であって強姦被害者ではない。著者にかかっては夫は全てレイピストとでもいうのだろうか。

バカその三、その台詞が男に対してどういう効果を持つのか、著者は一考だにしていない。もし世の女性たちが100%彼女たちの妊娠を男の「せい」にするのであれば、私は今日にでも自らを宮する。いや、陰茎よりも頸を落とした方がマシかも知れない。そんな世の中で男として生きる意味などないのだから。

しかし、まだ男を避妊、いや否認することは、著者が女であることに免じてよしとしよう。私だってこの程度の言葉の暴力はさんざん振るわれて来た。私は言葉の暴力に対しては寛大だ。それが特に女性のものだとしたら。この程度で切れていては命が猫なみにあっても足りない。

しかし、以下は女性にも看過できないのではないか?

女性には私はシングルマザーを勧める。
目の前に能天気な夫さえちらつかなければ、苛立つ対象自体がないということだから。

「女性にはシングルマザーを勧める」って著者はいったいいつマザーになったのだろうか?処女や童貞がセックスを語ると笑われるのに、母になったことがない者が母を語るのが笑われないというのは、よく考えるとおかしなことである。

この台詞がたとえば内田春菊のものであれば、私はまだきちんと聞く気になる。「そうですよね」、と。しかし世の女性の「仕事力」が普通に内田春菊や西原理恵子なみだったとしたら、一番困るのは普通のシングルマザーたちではないか。この国においてシングルマザーになるというのは、マザーにならないことより256倍は大変なことである。

一言、三文字で言えば、「無責任」ということだ。

そして、次の一言である。著者にとっては、どうやら男というのは慰謝料を出すだけの存在のようだ。それなら笑って慰謝料を受け取ればいい。慰謝料を要求した上に言いたい放題というのはいささか虫がよすぎやしないか。

しかし、本書を通読すると、著者に対しては憤りの気持ちを通り越して哀れみすら感じるから不思議だ。

著者は、自分が女であることそのものが不満なのではないか、と。

私自身は、もし次に生まれる機会があって、そこで性別を選ぶのであれば間違いなく女を選ぶ。女は女であるだけで価値があるが、男は何か出来てはじめて価値が認められる。その「初期値の差」は先進国では縮まりつつあるが、それでもその差は生物学的にゼロにはできない。そういう状態というのを私も経験してみたいのだ。

だからといって、今男であることを許せないかといえばそんなことはない。男には男の利点が確かにある。一番の利点は、男の方が命が安いこと。なぜかこの国において「命の値段」を金額換算する時には逆になっている事例ばかりのようだが、国がなんと言おうが、安いのは男の命。反論は全てスルー。

これがなぜ利点かといえば、その分それをぞんざいに扱っても許されるからだ。要するに無茶が効く。全世代を通して男の死亡率の方が女の死亡率より高い根本的な理由はそれだろう。女が現金なら、男はポーカーのチップなのだ。

現金には現金の、ポーカーのチップにはポーカーのチップのよさがそれぞれある。自分の望みどおりの方でないことを嘆くより、今の自分に有利な点を活かした方が生きるのは楽しい。それだけだ。もちろんそれに我慢できなければ、ある程度「交換」も出来るけれども、現代の医学ではヒトを完全に性転換することは出来ない。出来合いの肉の檻の中で折り合いを付けるしかないのだ。

女に限らず人の最大の敵、それは敵愾心そのものではないのか?

本来は味方であるはずの者を敵に回さずにいられないその激情なのではないか?

Dan the MAN


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404 Blog Not Found:タイトル=著者 - 書評 - 女の敵
404 Blog Not Found:タイトル=著者 - 書評 - 女の敵【】at 2012年01月18日 05:12
本題とは少しずれているし、このネタはもう少し後になってから書こうと思っていたけど、ちょうどこのネタに関することに触れられていたので思うことを書きたい。 404 Blog Not Found タイトル=著者 - 書評 - 女の敵 女は女であるだけで価値があるが、男は何か出来ては....
男は捨駒【BLOG15.NET】at 2007年12月13日 01:08
一文字で言えば 「責任」 ((C) 元首相) から、 すでに一年だが、 三文字で言えば、 「無責任」 ということだ。 - 404 Blog Not Found:タイトル=著者 - 書評 - 女の敵 さ...
文章テンプレート 「三文字で言えば…」【西の海へさらり】at 2007年12月12日 12:16
この記事へのコメント
涙が枯れるまで泣けば?
Posted by m at 2008年09月20日 20:02
男どもの器量が無さ過ぎて泣ける。
Posted by w at 2008年09月10日 15:12
遙さんに読ませたいけど、たぶん、理解できないだろうな・・・
「女性が現金とは何事だ!!!」ってヒステリー起こすと思う。
Posted by ぶっほん at 2008年02月29日 14:39
この本は読んでいませんが、この作者の別の著作は読んだことがあります。
同じく負け犬の私から見ても痛々しい論調の人ではありますが……。
ただ、誰かに寄りかかり支えあって立つよりも、
何かと常に戦いぶつかりあい、反発する力を利用して倒れないようにすることを選んだ人なのであろうと思います。
Posted by 雪 at 2007年12月17日 22:11
何のために戦っているのかって本の内容に関係有るのだろうか
それは本の批判でなく著者の人生批判ではなかろか
なんつーか、……単なる余計なお世話じゃね?とか思っちまうんだが俺
そういう問題じゃない?じゃないか。俺がバカなだけか?
てか彼女はマジで戦ってるのか?
理不尽(と思う事に)彼女が反論していった結果、戦ってるように見えるだけなんじゃないのかな
Posted by うーん at 2007年12月17日 02:31
> 喩えるなら、彼女らはお笑い芸人ですな。
てゆーか、彼女の本職はお笑い芸人じゃなかったっけ?
Posted by akira at 2007年12月16日 20:50
このように罵倒することで、女たち(だれやねん)は女たちをもっと大切に扱うようになったのですか? そして何より、あなた自身はそれで幸せになったのですか?

あと、「書評」はどの辺に書かれていますか?
Posted by pac at 2007年12月15日 20:36
喩えるなら、彼女らはお笑い芸人ですな。
Posted by とおり at 2007年12月15日 19:21
>女は女であるだけで価値がある

十人並みの容姿を持つ女なら。
「可哀想な」見た目の女の初期値は、同系統の男より低い気がします。

>「戦いのための戦い」にしか見えないのはなぜだろうか。

著者の本にはいつも男系の封建的家族の中で歯軋りしてきた、自身の
少女時代が書かれていますね。
だからと言ってご指摘のような物言いが許されるわけでは無いけど、
なんだか輪を掛けて切なく思う。
Posted by 隈 at 2007年12月15日 17:52
身近に女性が、強い意志で、奨学金を親に返させたり、留学費用を親に出させたりするのを見聞きすると「自分が女であることそのものが不満」なのかと思いました。
それと戦っているのでしょうが、本人は社会と戦っていると思ってるのでしょうね。
Posted by 自分 at 2007年12月13日 13:41
completely agreeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!

You are the "MAN"

Thanks !!

Posted by Taz the lost generator at 2007年12月13日 01:03
Dan the MAN
カッコイイ!
Posted by Koguma the Man at 2007年12月12日 22:29
大ヒットした「女性の品格」と対決させてみたいですね。
Posted by くまさん at 2007年12月12日 21:27
本をフォローするコメが幾つか出てくると思ったけどさすがに全然ないなw

逆にこういう論調を言う女がテレビに出て発言することが多いのも事実なんだよな〜
見てて痛い痛いw
Posted by たかおん at 2007年12月12日 21:00
ダメな理由を丁寧に列挙していただき、面白く読ませていただきました。
女性からみてこういう本はタイトルだけでも迷惑です(笑
こういうのはスルーしかないですけどね
なんでこういう思考展開する女性が存在するのか
謎です
Posted by 茶 at 2007年12月12日 20:05
実に痛快な書評でした!
Posted by nk at 2007年12月12日 14:29
こういうのって、プロレスのヒール役みたいなのじゃないんですかねw
ヒールを演じているのか、それが行き過ぎて地になっちゃうのかわかりませんけども

Posted by   at 2007年12月12日 14:28
「女の敵」
ターゲットが女ならこういう中身が売れるんだと思う
マーケティング的には成功なのかも
Posted by hiro at 2007年12月12日 13:21
ただここのブログ主の場合批判の対象は本と著者ではなく
本をダシにして別の何かを叩いてたり自分の自慢だったりする場合が
あるのだ。
Posted by 宇宙人のトリセツ at 2007年12月12日 12:42
はじめまして。
普段はどんな本でも良いところを見つけては褒めるブログ主さんが、
今回は、はっきりと否定されていることに驚きました。
これはこれで興味がわきます。
Posted by くまさん at 2007年12月12日 12:31
この人の記事は基本的に誰かの弾劾から始まってる。
敵がいないと自分を表現できないタイプだと思う。
Posted by Nasty at 2007年12月12日 11:21
これはこれで読みたい。
変な女性が多いのは知っているが、身近にこういった考え方をする人もいないので。
Posted by   at 2007年12月12日 10:31
>憤りの気持ちを通り越して哀れみすら感じるから

大人ですねぇ
Posted by アサヒる at 2007年12月12日 10:30
 これは web の元記事、それも古いやつのコメントを読んだ方が面白いですよ。
 最近の記事はだいぶコメントをカットしてますが、以前はコメントが3桁なんて記事がゴロゴロしてましてから。
Posted by snark_tail at 2007年12月12日 10:18
読んでないけど、

6.「女の敵」はもしかして私?

ってのがオチ?
Posted by hoge at 2007年12月12日 09:40
> しかし彼女たちの戦いが、「何か大事なものを勝ち取る戦い」にも
> 「何か大切なものを守るための戦い」でもなく、
> 「戦いのための戦い」にしか見えないのはなぜだろうか。

わかるわかる
Posted by fnf at 2007年12月12日 08:42
みんな敵。「渡る世間は鬼ばかり」・・・な人。
Posted by blog49 at 2007年12月12日 08:14