2007年12月15日 05:15 [Edit]

だめだこりゃ - 書評 - 団塊漂流

アルファブロガーどおしの議論に書評で割り込んでみる。

まさにこの話題を扱ったのが本書で、数ある「団塊本」の中ではもっともまともな一冊の一つだ。

それだけに、それ以降の世代にはいっそう幻滅が深まった一冊でもあるのだが。


本書「団塊漂流」は、自らも団塊世代の一員でもある前衆議院議員(民主党)の著者が、団塊の世代が抱える問題と展望を、主に経済面から語ったもの。

目次
  • まえがき
  • 第一章 団塊世代と年金問題
  • 第二章 団塊世代と税金
  • 第三章 団塊世代の危機管理
  • 第四章 団塊世代の自分発見
  • 第五章 団塊世代の最後の拠り所
  • あとがき
  • 情緒論ばかりでげっぷが出そうな他の「団塊本」と異なり、本書は数字で語っている分、まだ話になる。他の団塊本ではそもそも他の世代と話が成立しないが、本書では世代に対して中立な数字が軸になっているので、なんとか話が成立する。「団塊老人」とはえらい違いだ。

    しかし、話が成立するというのは、いいことばかりではない。話にならないならまだ諦めも速いが、話になったあとで、やはり「団塊の世代というのは自分達のことしか考えていないのだ」ということを思い知らされるのであれば、期待の後だけに失望感はいやがおうにも増す。

    ここで改めて目次をご覧いただきたい。すべて「団塊世代」、すなわち「オレタチ」が主語となっている。それだけならまだいいが、副題は「団塊世代は逃げ切ったか」である。これがまだ「団塊世代は逃げたのか」という副題で自己弁護を試みているのであればまだ希望はあった。そして極めつけが、このオビ。

    あなたは勝ち逃げできたか?
    saturn

    これでは糸色先生でなくても絶望するよ。

    本書を読了した後には、団塊の世代は右の絵のようにしか見えない。この絵をお借りした先の斉藤マスターに解説してもらおう。

    Espresso Diary@信州松本:火事なのだから、避難路を確認しないと。 - livedoor Blog(ブログ)
    「我が子を食らうサトゥルヌス」。ギリシア神話の一場面を、晩年のゴヤが描いている。私から見ると、地方の高齢者たち、しかも安定した暮らしをしている人たちが道路を求めるのは、都市部の若い納税者たちから収奪をするような行為です。その残酷さと暗さは、ゴヤの絵画にも匹敵すると思います。

    著者のサトゥルヌスぶりを、ちょっとだけ引用しよう。著者は朝日新聞の「声」欄で展開された73歳と39歳のやりとりを引用した後、こう述べている。

     私の考えは、どちらかというとお年寄りの考えに近い部分があります。
     それはやはり、現在七〇歳代、八〇歳代で年金をもらっている人たちは、自分の父母の世代で、彼ら彼女らが、それこそ戦争前後の日本の混乱の中で、ほとんどの人々が食うや食わずで、子育てに一生懸命だった姿を、何らかの形で直接見聞きしているからです。
     現在のように安定した時代に伸び伸びと育ち、自分の老後のことなどを考えられた世代とは違います。ですから、この世代の人々の根金はなるべく税金の心配などせず安心して、老後の生活をできるようにしても、いいのではないかと思うのです。

    はい。娘たち息子たちの将来より、老母老父の余生の方が大事だそうです。親の親孝行はこの世ではなくあの世でお願いできないでしょうか。

    公的年金が安心なのか不安なのかというのは私には判断できません。不安どころかそもそもあてになんぞしていません。私より少し上の斉藤マスターの世代ですらそうです。「自分の老後のことなどを考えられた世代」?団塊の世代の皆さんと一緒にされるのは、その下の老後どころか明日のメドもない世代にとってははなはだ迷惑なのではないでしょうか。

    ゼウスは果たしてどの世代から出るのだろう。やはり団塊ジュニアだろうか....

    Dan the Disappointed


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    404 Blog Not Found:だめだこりゃ - 書評 - 団塊漂流【】at 2012年01月21日 20:08
    本書の副題は、「--若者たちへ--」である。 生き方の演習 塩野七生 が、本書の言葉に最も耳を傾ける必要があるのは、むしろかつて若者だった者たちなのではないか。
    かつて若者だった者たちへ - 書評 - 生き方の練習【404 Blog Not Found】at 2010年11月04日 17:52
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    どういう訳か(たぶんPCの不調)で、昨夜新しくアップしたブログ記事がTOP画面に出ないので、もう一度Try。 大西 宏さんからトラックバック年金の運用が危ない?脅かさないでね大前さん を頂いて、『(公的)年金の運用について評価をする知識を持ちあわしていませ...
    公的年金の運用は危ないか?へのお答え。(もう一度張りなおす)【貞子ちゃんの連れ連れ日記】at 2007年12月15日 12:43
    この記事へのコメント
     たまたま…。

    9月末の個人金融資産は1535兆円、過去3番目の高水準
    (2007年12月17日11時25分 読売新聞)
    http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20071217i303.htm
    Posted by rijin_md at 2007年12月17日 19:15
    …債務は計上しても債権は計上しないと、そりゃ、どんな事業も赤字です。逆のことをやれば、どんなハイリスク事業も優良企業に見えるでしょう。

     年金の(ファンド運用ではなく)収支見込みでは、債務と資産のみを計上して、将来の年金保険料収入を全く無視することが横行していますが、そんな議論じゃ団塊の世代以前も以降もダメダメでしょう。現に曲がりなりにも毎月年金が支払われていることが説明できません。

     その上での団塊「後」世代の年金ですが、これは確かに厳しいです。

     で、勝ち逃げした団塊世代の残余資産(金融資産だけでなく、実物資産まで入れれば数百兆円)をどう活用するかという議論になるわけです。

     金融資産・実物資産の高齢層への移行を補正しなければ、資産の死蔵が急増するという、かつていくつものレジームを崩壊に追い込んできた現象が激化することになります。
    Posted by rijin_md at 2007年12月17日 10:36
     でも、こんなにバリボリ食いちぎっちゃったら、あとでゼウス(ユピテル)に助け出されたところで再生できないよね・・・。っていうか、ゴヤ、ちゃんと神話読め。
    Posted by 寿命 at 2007年12月15日 17:12
    不勉強にもサトゥルヌスの末路を知らなかったので、
    なんでここでゼウスが出てくるのかと思いましたが…
    調べてみて、なるほど。まあ団塊ジュニアの役目でしょうね。
    Posted by コーエン at 2007年12月15日 10:58
    s/どおし/どうし/
    Posted by アマチュア校正家 at 2007年12月15日 07:15