2007年12月26日 08:30 [Edit]

男女論の最高峰 - 書評 - モテたい理由

マーフィーの法則、書評ブログ篇。

スゴ本は、まとめ記事を出した後にやってくる。

今年読んだエッセイの中で最高傑作。面白くなかったら買い取るを通り越して、買い占めて配りたいぐらいの一冊。


本書「モテたい理由」は、副題に「男の受難・女の業」とあるように、男女論である。書籍にもblogosphereにも掃いて捨ててもまだ捨てきれぬほどありふれているあの男女論である。はっきり言ってレッドオーシャンである。そのレッドオーシャンの中に埋もれない力強さを、本書は持っている。

目次 - BOOK倶楽部より
  • 第1章 女の目から見た世界
  • 第2章 獰猛な恋愛資本主義
  • 第3章 蔓延するライフスタイル語り
  • 第4章 女子が生きるファンタジー
  • 第5章 ライフスタイルの先祖たち
  • 第6章 男たちの受難
  • 第7章 女という水物相場
  • 終章 戦争とアメリカと私

それもそのはず。本書はあの「電波男」が発した問いを、正面から受け止めているのである。電波男に対する反応はblogでも書籍でも少なくないが、女の手によるもので(ここではあえて「性」をつけずに「女」の一文字を使わせていただく)、ここまで正々堂々とした「返書」は今までなかった。

本書は、同性にも異性にも全く媚びたところがない。よくある「女性フェミニスト」(変な言葉だがそれがいちばんしっくりくる)のように、「女を捨てることにより男女同権を実現する」というアマゾネスなところもない。その言葉は、厳しくて優しい。

本書には、男の変わらぬ憧憬の対象として、「タッチ」の朝倉南と「めぞん一刻」の音無響子が出てくる。この二人をざっと紹介したあと、著者はこう述べる。

P. 159
 ひるがえって、女が男に求めるものが、びっくりするほど変化してきたことを思うと、男のこの純情っぷりには、涙が出てくるほどだ。女の子たちが自分への掛け金をつり上げてきた結果、買い手がつかなくなって焦ったり捨て値で自分を売りかねもしない今、男の子が女の子に求めているものは、ずっと変わっていないのだ。
PP.160

 男が好む女の質をここから抽出するに、

  1. 意欲を起こさせてくれる
  2. 安心感をくれる・包容力を感じさせる

 つまりは、「育てる質」と、「母性性」という、女性の質の二大原理がそこに手つかずのままあるのであった。

 なーんだ男の好みって旧態依然としてほんとしょうもないわね、もしかしてマザコンって増えているの?なんて言いそうになっているそこのあなた、ちょっと待って!

 考えてみよう。女が男に魅力を感じる条件、たとえば1経済力、2守ってくれること、などなどは「父性の属性でしょう?自分たちが男には父性を求めながら、男から母性を求められると反発するっていうのは男女平等なこと?

こういう「女という強い立場」にいるものが、「強い立場」からフェアな意見を言っているのを、私ははじめて読んだ。他はほぼ全て、は同じことを述べても「男という弱い立場」からの「反論」であったり、あるいは「女という弱い立場」からのポジショントークかのどちらかで、数で行くと前者が1で後者が9ぐらいの割合であろうか。

女性というのは、こと異性に対しては実に合理的かつ合目的な考え運びをするという印象が私にはある。女性が産む性であり、それゆえ男女関係を結ぶコストが大きい以上、それは当然であるという理解も私にはある。いや、理解という名の諦めか。

それを諦めきれず、「男の子が女の子にずっと変わらず求めているもの」をニジゲンに求めたのが「電波男」であり、そのことを著者は実に正しく読み取っている。あの「電波男」を正面から受け止めてくれる女がいる、それだけでも「ずっと変わらず求めているもの」を諦めてきた男たちには救いなのではないだろうか。

男を理性で理解する女は多い。彼女達の多くは、理性ゆえに男が下等に見えてしょうがない。実際その通りだとも思う。しかし下等であることと、下等であることを指摘されるのは似ているようで違う。下等である者は、そう指摘されることで二重に傷つくのである。

しかし、著者はその男を頭だけではなくはらわたでも理解しようとしており、その結果男以上に男を理解するに至ったようだ。こんなハンサムな女がいるというだけでも、世界の色が違って見えるのではないか。

強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。

男女同権が事実であるならば、これにもまた男女の区別は実はないのではないか。強い性による優しい一冊は、どちらの性にとっても得るものは大きい。

P. 231
同時に、あんなに完膚なきまでに自分たちを叩き潰した○○○○を、打って変わって愛してしまった私の先行世代を、私は理解する。理性ではなく私のはらわたで。理解し、抱きしめる。

ここではあえて一部字を伏せた。しかしそこに「おんな達」を、そして「私の先行世代」に「おとこ達」を入れれば、それは理想的な男女の落としどころになりそうだ。

著者のような「占領軍司令官」に対してであれば、堂々と、尊厳を持って降伏出来そうではないか。

Dan the MAN

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この記事へのコメント
>よくある「女性フェミニスト」(変な言葉だがそれがいちばんしっくりくる)のように、「女を捨てることにより男女同権を実現する」というアマゾネスなところ

こういう「フェミニスト」の方がむしろ少数派でしょう。実社会でバリバリやっているアマゾネスの方は、大抵フェミニズム嫌いですしね。それとマスコミなんかだと、そういうほうが取り上げやすいというのもありますし。

>「女という強い立場」にいるものが、「強い立場」からフェアな意見を言っているのを、私ははじめて読んだ

あまりフェミニズム系の本を読んでいない自分でも、これにはちょっと違和感。パッと思いつくのは小倉なんとかというフェミおばさんの昔の本。それ以外にも、女のイタいところを指摘しているフェミ女の本は、複数読んだことありますけれども……
Posted by 一瞬童貞の本の人と間違えそうになったよ at 2008年01月06日 18:03
以下に筆者本人の紹介文があったよ。
http://shop.kodansha.jp/bc/magazines/hon/0801/index04.html

Posted by emem at 2007年12月27日 14:05
多くの人に読ませたいなら買い占めてブックオフに流してください
Posted by みんなでよもう at 2007年12月27日 09:54
今度読んでみます
Posted by マイケル at 2007年12月27日 08:56
こと異性に対しては実に合理的かつ合目的な考え運びをするという印象が私にはある。女性が産む性であり、それゆえ男女関係を結ぶコストが大きい以上、それは当然であるという理解も私にはある。いや、理解という名の諦めか。
Posted by winx at 2007年12月27日 01:52
チャンドラーの言葉が出てきて思わずにやけてしまいましたw
電波男を呼んだオタクの私としては逃げずに読んでみたいですね。
モテたい心理はよくわかりませんが。
Posted by シジナ at 2007年12月26日 23:49
かかしさん、
その通りです。これまたよくある誤変換。
ことえりはいつの時分に自分を見失ったのやら。
Dan the Typo Generator
Posted by at 2007年12月26日 19:47
引用文中の「時分」は「自分」の誤変換でしょうか?
Posted by かかし at 2007年12月26日 19:13
そーか。
もしかして、バランスのよい男女関係って
降伏した男がいることですかね。
Posted by junko at 2007年12月26日 12:35
これだけは言っておかないと気がすみません。
×朝倉南
○浅倉南
Posted by 遊庵 at 2007年12月26日 11:58
お一人様の老後?
Posted by 結局 at 2007年12月26日 11:06
>プロファイラ
あなたのような人のことを、世間では野暮といいます
Posted by   at 2007年12月26日 11:04
AERAっぽい。
Posted by cyberbob:-) at 2007年12月26日 11:02

で、赤坂真理ってダンナと子供はいるの?

Posted by プロファイラ at 2007年12月26日 10:42
多くは求めません。
「愛はお互いを見つめあうことではなく、
 ともに同じ方向を見つめることである。」
この言葉の意味を理解してくれる女性ならそれで十分です。
Posted by bob at 2007年12月26日 10:19
強くなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格がない。
レイモンド・チャンドラーの名言。
Posted by ノダロー at 2007年12月26日 09:48