2008年01月03日 09:30 [Edit]

平凡を尽くすという非凡 - 書評 - トヨタ経営大全1 人材開発

日経BP出版局黒沢様より献本御礼。

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トヨタ経営大全1 人材開発(上下)
Jeffrey K. Liker / David P. Meier
稲垣公夫
[原著:Toyota Talent]
On Off and Beyond: メタボリックシンドロームは新たなデミングか
というわけで、デミング同様、メタボリックシンドローム(とその改善策)は、日本でこそ定着するのではないか、と予想する昨今でした。

しかしそれ以前の問題として、デミングは日本にだけ定着したものかというと、それは違うと言わざるを得ない。少なくとも本書を読了した後では。


本書「トヨタ経営大全1 人材開発」は、ベストセラーとなった「ザ・トヨタウェイ 」の著者であるLikerと、トヨタモーター・マニュファクチャリングの「中の人」であったMeierによる、「トヨタ本」の決定打。本書は四部作となることが予告されている「トヨタ経営大全」の第一部。ちなみに本書に続くのは、「トヨタ経営大全2 企業文化」、「トヨタ経営大全3 プロセス」、そして「トヨタ経営大全4 問題解決」とのことである。

どうやらLikerは、トヨタをライフワークとすることを決めたようである。

目次 - 日経BP書店|商品詳細 - トヨタ経営大全1 人材開発 上より。
目次は上下巻を通したもの
日本語版への序文 - ジェフリー・ライカー
謝辞 - ジェフリー・ライカー、デイビッド・マイヤー
序文 - ジェームズ・プレス
はじめに
第一部 卓越した人材を育成するために組織を準備する
第1章 人材育成に関してトヨタから何を学べるか
第2章 トヨタは卓越した人材を育成するために懸命に努力している
第3章 トヨタとトレーニング・ウィズィン・インダストリー(TWI)
第4章 組織を準備する
第二部 不可欠な知識が何であるかを知る
第5章 その仕事に必要なスキルは何か?上位概念から始めよう!
第6章 標準作業と「仕事の教え方(JI)」
第7章 定型作業と補助作業の分析
第8章 仕事を教えるために細かい部分に分解する
訳者あとがき
索引

それではなぜ、「トヨタの外の人」である一大学教授が、「トヨタのやり方」、すなわち The Toyota Way をライフワークにすることにしたのだろうか。少なくとも、それが「アメリカ生まれで日本でしか育たないもの」だからではないことは確かだ。

トヨタのやり方は、アメリカ生まれの日本育ちであることは確かなのだろう。本書のキモであるTWI = Training Within Industry も、実は第二次世界大戦に熟練工の多くを取られた合州国が、いかにして産業を維持するかという課題に対する回答として編み出したものである。しかし第二次大戦の勝者となったかの国に熟練工が戻って来た時、それは一端忘れられ、トヨタをはじめとする日本企業によって再発見され、それが日本企業が世界に進出すると同時に逆輸入されたというのが真相のようである。

ところが、「トヨタのやり方」というのは、それに名前を付けることはできても、名前を聞いただけで何をすればいいかわかるものではないのだ。合計500ページに渡る本書が、四部作の一部にすぎないのは、それが理由である。The Toyota Wayという神が細部に宿る以上、その細部を漏らさずスケッチする以上のやり方はないのだ。

その細部の一つ一つは、誰にでも思いつき、誰にでも実行可能なものばかりだ。しかしそれが積み重なった時、誰にも真似出来ない組織が出来上がるのだ。細部を取り上げただけでは何も見えない。しかし全体をまとめても誰も真似出来ない。それが The Toyota Way ではないのか。

これは、生活習慣改善に実に似ている。そこに銀の弾丸はない。しかし一つ一つの習慣を改善していけば、成果はほぼ必ず手に入る。The Toyota Way が合州国でもうまく行った以上、それが日本でしか定着しえないものであるとは私にはとても思えないのだ。

しかし、このやり方は、時間がかかるものでもある。今でこそ一流のクルマも作っているトヨタであるが、私がガキの頃には、ガキでも二流とすぐにわかるクルマばかり作っていた。今でも日本で売られている車にはこの手のトヨタ車が少なくない。Honda Stream に対する Toyota Wish などは、もう恥を知れとしか言いようがない。それでもめげずにカイゼンを続けて来たからこそ、トヨタの今がある。

それを考えれば、chikaさんはちょっと諦めが早すぎやしないか。

ところで、本書は四部作の一部をさらに上下巻に割っている。合計500ページの本を分冊、それもハードカバーするというのは、技術屋には信じられない愚行だ。一冊でそれくらいのボリュームがある本なら、オライリーだけでもごまんとある。なぜ技術書(そう、技術書!)である本書を、「スーツ本」のような体裁で出すのだ。関係者の猛省を促したい。

Dan the Stakeholder of Toyota


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この記事へのコメント
>silverbulletは直訳で使っても通じないと思うんですが

いや、わかるだろ?
Posted by s at 2008年01月05日 11:40
>Honda Stream に対する Toyota Wish などは、もう恥を知れとしか言いようがない。

exactly!
Posted by 38歳 at 2008年01月03日 22:54
彼らの能書きみると、
スーツのたわごとだとおもいますけどね。
城下町含め全国から怨嗟のうめきが聞こえてきますが
聞こえないようでなにより。
Posted by jin at 2008年01月03日 21:17
silverbulletは直訳で使っても通じないと思うんですが
Posted by t at 2008年01月03日 19:00
トヨタは、その成り立ちからスキルマップ(のようなもの)を作っていますが、僕は才能マップでやっていこうと思います。

トヨタウェイもISOもある世の中なので、別のフレームワークでやっていく必要があると思います。

もちろん、トヨタのやり方も学んでいますよ!
Posted by ひろ at 2008年01月03日 12:00
諦めの早い渡辺ですwww

そうかなぁ?うーん、という感じですが・・・。

デミングの方はまだしも、生活習慣改善の方は本当にとんでもないことになってます。アメリカ中がバークレー(知的でオーガニック志向)だったらいいんですが・・。

Medicareの人たちがかかる公営病院で働く医療関係者何人もと話したことがあるのですが、なんかもう目の前が暗くなるような、203高地の戦いみたいな感じでしたが。(来る患者は全員糖尿病という前提で診療する、とか。実際4−5割ホンマモノの糖尿病なんだそうです。)

democratic candidatesはみな医療保険改革を一つの目玉にしてるので、政権交代したら少しは変わるのでしょうか。明日のIowa Caucusが超楽しみ。。。
Posted by chika at 2008年01月03日 10:32