2013年12月17日 15:45 [Edit]

パンドラの箱 - 書評 - コンテナ物語

404 Blog Not Found:コンテナーという革命を読んだ日経BPの黒沢様より献本御礼。

2008.01.20 初出
2013.12.17 Kindle化にともない更新

スゴ本。ものを作る人も運ぶ人もそして買う人も一読しておくべき一冊。

なぜなら、現在進行中のフラット革命を勃発させ、牽引し、そしてその行く末まで暗示しているのがこの物語だからだ。この箱の中には、その過去と現在と未来が詰まっているのだ。


本書、「コンテナ物語」は、あの無機質で無個性な鉄の箱が、いかにして世界を変えていったかを著者が十年以上の歳月をかけて丹念に追ったもの。

目次 - 日経BP書店|商品詳細 - コンテナ物語より
  • 謝辞
  • 第一章 最初の航海
  • 第二章 埠頭
  • 第三章 トラック野郎
  • 第四章 システム
  • 第五章 ニューヨーク対ニュージャージー
  • 第六章 労働組合
  • 第七章 規格
  • 第八章 飛躍
  • 第九章 ベトナム
  • 第一〇章 港湾
  • 第一一章 浮沈
  • 第一二章 巨大化
  • 第一三章 荷主
  • 第一四章 コンテナの未来
  • 原注
  • 参考文献
  • 索引

まず、本書がすごいのは、「純知識」の量。これはどういうことかというと、「私が知らなかった知識」の量がものすごく多かったということ。多くのこと、特に最新の情報に関してすでにWebが書籍を圧倒する時代にあって、私の本の評価は「何が書いてあるか」よりも「どう書いてあるか」ということが年々重みをしめるに至ってきた。より大事なのは、知識ではなく表現。しかしそれとて知識がコモディティとなったから言えることであって、そしてコモディティとなっていない知識もまだまだ多い。

たとえば、あのコンテナの父マクリーンは、LBOの生みの親でもあったとか。ベトナム戦争がコンテナの普及に実は重要な役割をはたしていただとか。目から鱗という表現は、LearnよりもUnlearnの重要性を解いたことわざであるが、本書はまさに Learningful な本であった。

この点、すなわち表現ではなく知識ですごい本に出会ったのは、本当に久しぶりである。

もちろん、この点に関しては個人差ははげしい。誰が何を知っているかは人それぞれだからだ。私は人一倍本を読むこともあってか、あることを知っている確率はたしかにほとんどの人よりも高い。しかしそれは0.0000000001に対して0.000000001であるという程度に過ぎない。改めてそのことを認識した。

その点だけでも実に美味な本だが、それ以上にすごかったのが、その知られざる箱の物語が、フラット革命の道程で何度も何度も目にした光景にあまりに酷似していたこと。特に注目すべきは、その優勝劣敗のすさまじさであろう。コンテナ船も、コンテナ埠頭も、そしてコンテナ会社も、どんどん少なく、そして大きくなっていく。そしてその競争の過程で、わずかな情勢の読み間違いが決定的な敗因となる。10者いて生き残れるのは1者、その1社も安泰かというと、見ず知らずの新規参入者にあっという魔に追い抜かれる。

にも関わらず、その殺伐とした世界を圧倒的多くの人々が、意識的無意識的に支持したのは、その圧倒的多数の人々は確かに利益を手にしたからだ。世界が100人の村だとして、村長を目指して10人が争い9人が負けて村を去るが、しかし残りの90人は昔よりも豊かになっている。そんなイメージだろうか。

コンテナこそ、20世紀のパンドラの箱だったのではないか。

強いて本書の難点を挙げるとすると、今時のビジネス本としては図版が少ないことだろうか。文字をふだんから読み慣れている人には、本書でも充分状況を思い描くことができるかと思うが、それでも現代のコンテナ船の圧倒的な大きさや、コンテナ埠頭の圧倒的な広さは、現物を一度見たことがない人にはピンと来ないだろう。Discovery Channelあたりで番組化されれば理想なのだが。

もう一つ、これは翻訳に関してなのだが、出来れば原注も訳出しておいて欲しかった。私は英語が読めるからあれでも充分だし、過半は源資料へのポインターなのだが、それでも著者自身のコメントがかなりの分量ある。

しかしそれらの欠点は、本書の価値を考えれば実にささいなものだ。

pp. 29-30
いま挙げた三種類の研究の中で、ふしぎなことにコンテナはほとんど取り上げられていない。考えてみると、コンテナにはエンジンもなく、車輪もなく、船や鉄道や飛行機のようなロマンもんかえれば、船乗りやパイロットが放つ魅力とも無縁だ。地味すぎて、技術革新の研究者の注意を引くことさえできない。二〇世紀の半ば以降、経済や貿易に影響を与えた要因はあまりに多く、その陰でコンテナの存在はずっと無視されて来た。誕生から半世紀が過ぎたというのに、コンテナの歴史を描いた本は一冊もないのである。

その唯一の一冊が本書なのである。飯を一食抜いてでも読むべし。

Dan the Ship(ped|per)


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この記事へのコメント
>これより先の記事はプライベートモードに設定されています。
>許可ユーザーはログインが必要です。

???
Posted by ん at 2008年01月20日 21:56
んさん、
ぎゃああ、何事、と思ったら、「追記」ではなく「プライベートモードの方に追記を書く」にPasteしてしまっただけでした。大変申し訳ありません。
Dan the Public Blogger
Posted by at 2008年01月20日 22:08
揚げ足取りですが、

>10者いて生き残れるのは1者
者→社

>あっという魔に
魔→間

>過半は源資料へのポインターなのだが、
源→原
Posted by Horihorio at 2008年01月20日 23:12
pp. 29-30 の引用部
s/ロマンもんかえれば/ロマンもなければ/ ですかね?
Posted by fan at 2008年01月21日 00:06
過去のentryでも触れてるから、当然Project Blackboxの話が出てくると思って少し拍子抜けしました。
Posted by コーエン at 2008年01月21日 03:25
あ、冒頭に書いてましたね。失礼しました…。
Posted by コーエン at 2008年01月21日 03:25