2008年02月24日 12:00 [Edit]

「報われる」って誰が報いるの?

これは経営者と技術者のどちらが悪いのだろうか。

だから技術者は報われない - 思索の副作用 - Tech-On!
日本で会社を経営するのは楽ですよと。業績が悪くなったら給料を減らせばよい。また悪くなったらさらに削る。こうしてどんどん給料を減らしていっても、社員はほとんど会社を辞めない。こんなに会社経営が楽な国はないって。中国で同じことをやったら、社員はあっという間に霧散して一人もいなくなる。米国だって同じ。だから、経営者は第一に社員の処遇を考えなければならない。処遇の改悪はぜったいにできないから、本業で業績を上げることを真剣に考え、取り組まざるを得ないわけです

はてブのコメントを見る限りでは「やはり経営者が悪い」が7割、「そんな経営者についていく技術者が悪い」が3割といったところ。どちらも間違ってはいない。が、どちらも「経営者」まかせであることには変わりはない。

たしかに「クソ条件」を提示するのは「経営者のターン」で、それに従うか去るかを決めるのは「技術者のターン」。しかし技術者のターンにおける選択肢で、「こういう経営を我々は望んでいる」という「要望の提示」というのが手札にないのだ。

だから、

だから技術者は報われない - 思索の副作用 - Tech-On!
「ものづくりは実に面白い。その面白いことを毎日できるわけだから、技術者の給料は安くてもいいのです。それで十分幸せなんですから」

という風に誤解されているのに、その誤解を解く努力に、日本の技術者はどれだけ手間と暇をかけてきたのだろうか。

エロいたとえではあるが、日本の技術者の多くは職場という「ベッド」の上で「マグロ」すぎるのではないか。だからイッてもいないのに、「熟柿(じゅくし)臭い息」で「イってる」と言われてしまうのだ。どこを攻めて欲しいか言ってあげないのに、イけないのをカレのせいにされてもねえ。

呑むか去るか、 Take it or leave it の間に、「もう一声」あってもいいんじゃないか。

Life is beautiful: ベンチャー企業の経営者に一番必要な能力は?
どんなユニークなアイデアを持っていようと、どんなにすぐれた技術を持っていても、企業経営には困難はつきもの。その時に一番役に立つのが「必要なものは何とかして手に入れてしまう能力」・「困った時にも、めげずに自分で何とかしてしまう能力」。

そう。「自分で何とかしてしまう能力」。これが「マグロ技術者」に最も欠けているものだ。残るにしろ辞めるにしろ、結局足りないものを経営側に選んでもらっているにすぎないではないか。残る場合には、今日の経営者に、辞める場合には、明日の経営者に。

私には「報われない」という言葉が眠たくてしょうがないのだ。そもそも「報いる」という動詞を受動態で使っている時点で負けなのだ。自分で自分に報いるか、経営陣に報いさせるかのどちらかしかないのだ。

日本では中学校の段階で英語の受動態を教える。"She likes me."を"She is liked by me."にするというアレだ。しかし実際には"She is liked by me."などという言い方は、日本の中学校では目にしても実際の英会話にはまず登場しない。"by whom"を出した時点でヘンなのだ。いや、少なくとも一つ例外っぽいのある。"This program is brought to you by FOOBAR", 「この番組はFOOBARの提供でお送りしました」というアレだ。しかしこれもまた理由あってのこと、"FOOBAR brings you this program"とやると、FOOBARが強く響きすぎるのだ。だからわざわざ受動態にして弱めているのだ。ちょっとした孔明の罠である。

通常英語で受動態を使うのは、"by whom"をぼかしたいとき、そして whom = God の時だ。「我々は報われた」を訳すと "We are rewarded."になるが、確かにこれでは誰が報いたかはどうでもいい。早い話、「報われる報われない」というのは、その時点で経営者をシカトしているのだ。そうそう。「あえて主体ではなく客体に焦点をあてたいとき」というのもあった。「報われる」というのは、これを全て兼ね備えている。熟柿臭い息をふっかけられて当然である。

とはいえ、私は今後もそれが続くともまた思えない。技術者向けのプレゼンテーション術の本が山のように出版され、また山のように売れているのは偶然ではない。もう技術者達も、「報われるのを待つ」だけではなダメだというのがわかっているのだ。時既に遅しでなければいいのだけど。

Dan the (Entrepreneur|Engineer)


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最近、自分自身が会社との付き合いで感じていたことを、id:dankogaiがなんだか卑猥なおもしろい喩えで書いていた。 日本の技術者の多くは職場という「ベッド」の上で「マグロ」すぎるのではないか。だからイッてもいないのに、「熟柿(じゅくし)臭い息」で「イってる」と言
「技術者vs経営者」と誤読する人々【hatestのmemo】at 2008年02月24日 18:41
この記事へのコメント
>>馬車馬さん


>FOOBARが強く響きすぎる
は「FOOBARが(提供してやってる、金を払ってやってる的な恩着せがましいニュアンスが)強く響きすぎる」
ので、そのニュアンスを弱めるために受動態にしつつ、FOOBARという「名前」の響きだけは印象に強く残したいがための受動態の言い回しでしょうな。

馬車馬さんは、帰国子女的な日本のものはとりあえずは否定派?

Posted by tobira at 2008年02月26日 23:32
>しかし、日本みたいな提供画面ってあんまり見ないような気がしますが。

ラジオ(or podcast)も聞いてみようぜ
Posted by 初学者K at 2008年02月26日 14:49
メカのエンジニアは
たくましいですよ。

当然、
マイスターレベルの人ですが。

自分で報いますから。

形あるものは、
口で説明しなくていいので、
楽という点は、ありますけどね。
Posted by higekuma3 at 2008年02月26日 04:35
>その誤解を解く努力に、日本の技術者はどれだけ手間と暇をかけてきたのだろうか。
日本ではその誤解を解かない人が優秀な技術者として評価されるのです。

>呑むか去るか、 Take it or leave it の間に、「もう一声」あってもいいんじゃないか。
ありません。中途半端が一番危険です。何か言ったら異端分子として潰されるだけなので、去るしかないのです。
Posted by kagahiro at 2008年02月25日 01:12
"FOOBAR brings you this program" よりも
"This program is brought to you by FOOBAR"の方が
FOOBARを強調しているように感じるのですが、気のせいでしょうか。原則として英語は強調すべきことを最後にもってくるケースのほうが
多いと思います。動詞が先に来るせいで日本では逆だと思われている
ことが多いですが。特に、byの前に一呼吸置く場合はそれが
強調されるように思います。しかし、日本みたいな提供画面って
あんまり見ないような気がしますが。
Posted by 馬車馬 at 2008年02月24日 23:54
ごもっともな意見です。ですが、日本は労働者に人権が実質無いという問題があります。確かに技術者にも非はありますが、国家が悪徳社長を庇っているからには、国家システムを根底から変える力を技術者だけに求めるのも酷だと思います。
Posted by 未記入 at 2008年02月24日 17:33
受動態はこんなときに使いますね。
She(Hillary Clinton) was embarrassed by Barack Obama in Virginia, Maryland, and the District of Columbia.

だいたいサラリーマンってemployeeですから、
もらうことしか考えていない人種でしょう。
Posted by 参木 at 2008年02月24日 14:28