2008年03月09日 02:00 [Edit]

ペア書評 - おもてなしの経営学/パラダイス鎖国

月刊アスキー編集部寺林様経由で、両著者より献本御礼。

ペア献本ということで書評もペアで。単独で読んでも充分読み応えのある両書だが、両方あわせてよむことで面白さが自乗される二冊でもあるので。両方あわせて買うと、送料が無料になるというご利益もある。


双方ともblog本である。「パラダイス鎖国」は"Tech Mom from Silicon Valley"に「おもてなしの経営学」は"Life is beautiful"にそれぞれ対応している。

内容の前に、まずは本の作りや売り方までタイトルに連動していることに注目したい。それは出版社Webページを見るだけで明らかになる。以下の目次リンク先をそれぞれ見ていただきたい。

「パラダイス鎖国」目次 - パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 にないので手入力:(
はじめに
第1章 「パラダイス鎖国」の衝撃
第2章 閉じていく日本
第3章 日本の選択肢
第4章 日本人と「パラダイス鎖国」
解説 梅田望夫
「おもてなしの経営学」目次 - おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由より抜粋:)
第1章 おもてなしの経営学
第2章 ITビジネス蘊蓄(うんちく)
第3章 特別対談
PartI 西村博之 ニコニコ動画と2ちゃんねるのビジネス哲学
PartII 古川 享 私たちがマイクロソフトを辞めた本当の理由
PartIII 梅田望夫 「ギーク」「スーツ」の成功方程式

ご覧いただいただろうか。「パラダイス鎖国」の方のページには、何もない。それに対して「おもてなしの経営学」のページには、詳細な目次をはじめ、メタデータがぎっしり詰まっている。たしかに「パラダイス鎖国」のページは鎖国しているし、「おもてなしの経営学」のページはもてなしている。

で、中身は、というと、実は「パラダイス鎖国」の方がしっかり--梅田望夫の言うところの"solid"に--まとめられている。本書はblog本といっても、blogはあくまでメモであり、本書はむしろ書き下ろしと言っていい。

これに対して、「おもてなしの経営学」の方は、blogおよび著者の月刊アスキー上の連載記事をそのまま再構成している。特に第1章と第2章はそうで、具体的に何年何月何日のentryということまで本に堂々と載せている。そして第3章は、書き下ろしではなく「語り下ろし」である。

実際の手間暇はとにかく、見た目の手間暇は「おもてなしの経営学」の方がずっと「ええかげん」に感じる。

では、読者としてどちらが「気持ちよかった」か。

圧倒的に、「おもてなしの経営学」である。転載された記事も、収録されたインタビューも、著者のおもてなしに溢れている。そこにはいかに読者を慶ばせようかという仕掛けがたくさん用意されていて、作りの「雑」ささえむしろ心地よい。少々失礼なたとえであるが、気の置けない友人宅にふらっと立ち寄ったら、その友人がいやな顔一つせずに残り物をさっと料理をしてふるまった、そんな気さくな雰囲気だ。もっとも気さくすぎて「Javaスクリプト」という表記が出て来たところにはずっこけてしまったが(p. 231)。

これに対して、「パラダイス鎖国」からは、外国人の上司の突然の訪問に対し、「今はちらかっているので」と玄関で待たせた上で、部屋を片付けた上で細心の注意を払って、しかしおそるおそる歓待した、そんな著者の緊張感が伝わってくる。

しかし、どちらが「より読まれるべきか」という観点で見ると、評価はさらに一転する。私の気性がより中島より(ここでは敬称略:)ということもあるのだが、むしろ「そういう表現もあるか」、「こういう視点もあるか」という「サプライズ」は「パラダイス鎖国」の方が大きかった。そもそもタイトルの「パラダイス鎖国」にしてからが、「よくぞこんなドンピシャリな言い方を見つけたな」、英語(実はフランス語由来)で言うところの touche である。

そんな両書は、実に上手に相互補完している。智の海部に情の中島という具合に。「パラダイス鎖国」を読んだだけだと、「うーんなるほど」と納得しても手が動かない。「おもてなしの経営学」を読むと思わず手を動かしたくなるが、具体的に何をすればいいかと問われると答えづらい。

今の日本には、両方が必要なのだ。

両書が同じレーベルで同時発売というのは、アスキー新書はじまって以来のGJではないか。

それを加味しても、ちょっと「パラダイス鎖国」のWebページはひどい。また著者blogにそれを補完しようという意思が感じられない。まだまだ間に合う。これらの「本への入口ページ」だけでも開国していただきたい。

Dan the Experience Provider @ Secluded Paradise


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風邪で寝込んでいる時に、こちらを読了。
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クックパッド株式会社広報櫻井様より献本御礼。 600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス JavaScript これは、うまい! Webサイト制作者は、今後本書を読まずしてWebサイトについて語るべからず。 そしてそれに限らず、ものづくりに関わる全ての人....
モノヅクリスト必読! - 書評 - 600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス【404 Blog Not Found】at 2009年05月22日 22:06
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パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)【書評リンク】at 2008年09月05日 10:21
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私がまだ学生でネットの最新情報を追っかけていた頃のマイクロソフトは、アップルコンピュータとGUIを巡って裁判を闘ったり、NetscapeのシェアをIEで強引に奪ったり、PCへのオフィスのバンドルでWordのシェアを強引に伸ばしたり、まあ、マイクロソフトは悪の帝国で、ビル・
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[書評]おもてなしの経営学【Ron’s Backlog】at 2008年04月12日 23:22
日経BPより献本御礼。添え状を掃除の時になくしてしまったようだ。書評が遅くなったこととともにお詫びを。 馬雲のアリババと中国の知恵 鄭作時 / 漆嶋稔訳 [原題:阿里巴巴:天下没有難做的生意] 中国人の、中国人による、中国人のためのECサイトは世界を制する....
芝麻開門 - 書評 - 馬雲のアリババと中国の知恵【404 Blog Not Found】at 2008年03月11日 14:46
この記事へのコメント
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Posted by 鐚 at 2008年11月11日 01:58
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Posted by k at 2008年11月11日 01:53
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Posted by k at 2008年11月11日 01:51
「パラダイス鎖国」(海部美知)はあまりお薦めできません。残念ながら、読む価値が無いと思います。何を言っているかが良く分からないし、分析がいい加減だなあと思いました。時間とカネの無駄ではないでしょうか。どう対応したらいいのかも提示していません。「だからどうしたの?」という感じ。とても残念な作品です。世の中にはもっと読むべき書籍がたくさんあります。
Posted by 壇上 at 2008年11月01日 10:31
海部です。取り上げていただいてありがとうございます。まさに、おっしゃるとおりの「緊張感」で書いておりました。ウェブページやブログエントリーについても、ご指摘のとおり、なんとかしたいと思います。^^;

Posted by 海部美知 at 2008年03月11日 23:49
弾さん、書評ありがとうございます。私も海部さんの本を読んで、そのまとまりの良さに感心していたところです。ブログのエントリーならば心地よく書ける様になったんですが、さすがに書籍の長さになると違いますね。「残り物をさっと料理」というくだりはさすが弾さんだと思います。

ちなみに、Javaスクリプトは、編集の段階で"script"が"スクリプト"へ自動変換されたものを私が見落としてしまった、というまったくもって恥ずかしい話です。ご指摘ありがとうございます。
Posted by 中島聡 at 2008年03月09日 16:14