2008年03月28日 17:45 [Edit]

社会人必笑の一冊 - 書評 - 「社会を変える」を仕事にする

英治出版松本様より献本御礼。

久しぶりに自信をもってこう言える。「面白くなかったら、私が引き取って売り直す」。

と同時に、献本があるまでこの本にたどりつかなかった自分を恥じている。


本書〈「社会を変える」を仕事にする〉は、病児保育・病後児保育のNPOフローレンスを設立した著者の自叙伝。

著者について

NPO法人フローレンス代表理事。

1979年、東京都江東区生まれ、27歳。99年慶応義塾大学総合政策学部入学。01年(有)ニューロンに 共同経営者として参画し、株式会社化後、同社代表取締役社長に在学中に就任。学生ITベンチャー 経営者として、様々な技術を事業化し、ビジネスパーソンとしての成功を経験する。

同大卒業後、ベビーシッターをしている母親から、こどもの熱で仕事を休み解雇されたお客の話を 聞き、この保育業界最大の難問「病児保育問題」を知る。自身が近所のベテランママ『松永さん』に 預けられていた経験から、「地域が支える子育て」が消失してしまった社会にショックを受ける。

「地域の力によって病児保育問題を解決し、育児と仕事を両立するのが当然の社会をつくれないか」 と考え、 ITベンチャーを共同経営者に譲渡。退社し、「フローレンス・プロジェクト」を学生 時代の後輩と共にスタート。04年内閣府のNPO(特定非営利活動法 人)認証を取得、代表理事に。

05年4月から江東区・中央区にて全国初の「保険的病児保育サポートシステム」である『フローレ ンスパック』をスタートさせる。

現在は、都内で、働く家庭のサポート事業を拡大する傍ら、講演、メディア出演、行政との連携を行う など、病児保育や働き方に対する社会全体の取り組みを活性化させることに努めている。

これを読むと、なんてかっこいい、二枚目なキャリアだ、と思うが、とんでもない! 起業者自叙伝はオンラインオフラインに溢れかえっているが、著者ほどの三枚目キャラ--少なくとも三枚目であることを包み隠さず綴った自叙伝は空前ではないか。

PP. 148-149
電話代や電気代が並ぶ、いつもと変わらぬ文面。変わったことと言えば、先月から加入したエッチな動画の見放題定額サービス(月額3000円)だけだ。最近、保育園の挨拶周りなどで面が割れて来たので、おちおちレンタルビデオ屋でその手のビデオも借りられなくなったしまった。

www 本書はこの手のトホホ話がぎっしり詰まっている。一冊の本を読んでこれほど笑ったのはどれくらいぶりだろうか。

そもそも、著者が社会起業家となったエピソード自体が、穴があったら入りたいほどみっともない。なんと、著者は二度実家に泣きついているのだ。一度は起業の際に。そして二度目は「松永さん」第一号候補のリクルートの際に。カーチャンに泣きつくなんて、漢としては最もやりたくないことではないか。それを二度である、二度。

だからこそ、著者は社会起業家という立場を手にしたのだ。

「イタい」という表現がある。「痛い」に対して「見ていられないほど恥ずかしい」という意味で昨今使われるようになった言葉だ。実に言い得て妙な表現である。なぜなら、著者が言うところの「環境依存型の生き方」をしているものたちには、痛みはあってもイタみがないからだ。イタくなることを極度に恐れているか、自分のイタさに気がついていないかのどちらかかその両方なのだ。

P. 189
三年でやめる新卒者が四割いる時代。すでに終身雇用は崩れ、寄らば大樹の陰という環境依存型の生き方をするのは、逆にリスクが高い。自律的に自らのキャリアを選択し、自分がどんな人間になりたいのか、という自己実現と、どんな社会を実現したいのか、という社会実現の双方を重ねた働き方が、最も充実したものをもたらすんだ

しかし、このかっこいい台詞まで、著者は三枚目なのだ。すこしカメラを引いてみよう。

「三年でやめる新卒者が四割いる時代。すでに終身雇用は崩れ、寄らば大樹の陰という環境依存型の生き方をするのは、逆にリスクが高い。自律的に自らのキャリアを選択し、自分がどんな人間になりたいのか、という自己実現と、どんな社会を実現したいのか、という社会実現の双方を重ねた働き方が、最も充実したものをもたらすんだ」
「言ったよ。言ったさ」。

そう、これ、インターンに著者が逆に励まされている、の図なのだ。ただし、インターンの台詞は、かつて著者がインターンに言った台詞そのままである。

起業というのは、これほどイタく、それであるがゆえにこれほど感動的なものとなりうるのか。

私とて、痛い経験もイタい経験も人後に落ちないつもりだが、ここまで赤裸々に自らのイタさを書き綴ることはできない。完敗に乾杯である。

この著者のずっこけぶりだけでも、一冊の本として極上なのだが、それでいて本書は社会起業入門としての役割を立派に果たしている。ここでやっと目次をお見せできる。

目次 - Amazonのものを大幅改定の上、付録をリンク化
プロローグ
第1章 学生でITベンチャー社長になっちゃった
第2章 「社会を変える仕事」との出会い
第3章 いざ、「社会起業家」!
第4章 大いなる挫折
第5章 世の中のどこにもないサービスを始める
第6章 「地域を変える」が「社会を変える」
エピローグ
■付録
  1. 社会起業家、ソーシャルベンチャーに興味を持った方への次なるステップ
    • 学生インターンとして参加
    • 「プロフェッショナル・ボランティア」として参加
    • ソーシャルベンチャーとして支援する民間団体にボランティアとして参加
    • ソーシャルベンチャーを起業する
  2. ソーシャルベンチャーと社会起業家リスト

    社会起業家ブログも参照のこと

  3. 参考文献リスト

このとおり、付録が No Nonsense な社会起業リファレンスになっているのだ。おかげで、メインの本文で著者は思いきりはっちゃけている。なんと素敵な三枚目ぶりだろう。

一点だけ難点を言うと、重要な語句を大きなフォントにしていること(引用部にもそれを反映させてある)。これは読者に易しいかも知れないが優しくない。最近のTVの過剰字幕もそうだが、これはやりすぎると逆効果だ。これでは折角の著者の文章力を殺しかねない。読者だって「著者はこういうことを言いたかったのだ」ということを自分の目と頭で引き出したいのだ。本書には補助金がかえって病児保育を殺している実態が出てくるが、文字の強調が補助金に相当することがわからなかったのだろうか。

Days like thankful monologue
病児保育のNPO法人フローレンスを運営している駒崎弘樹のblog: 【お知らせ】フロレ本、アマゾンで予約受付スタート!!
もし宜しければ、ぜひぜひご予約頂けましたら幸いです。 予約の数によって出版冊数が決まってしまう、というなかなか シビアな現実もございまして(涙)、早めにご予約頂けましたら 幸いです。

私の手元に送られて来たのは2007年12月3日第二刷。初版が2007年11月14日だから、一ヶ月弱ということになる。ありがたいことに売れている。今後もっと売れるだろう。そして遅かれ早かれ新書化ないし文庫化もされるだろう。その際にはこの文字強調はなくして欲しい。読者に「考えてながら読む」楽しみを返して欲しい。大丈夫。それがなくとも伝わります。

P. 235
いつか叔父さんと僕たちの社会とか、そんな堅苦しい話もいやがらずにするんだよ。叔父さんが駆けてきた道を、話して上げたいんだ。

著者の姪が本書を読める頃までには、是非。

Dan the Yet Another Entrepreneur


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この記事へのコメント
駒崎さん。
こんなとこにも出没ですかw
Posted by がっちゃんこ at 2008年03月29日 02:08
すみません。タイポの指摘が間違っているとは。
s/完敗に乾杯である。/完全に完敗である。/
Posted by 北斗柄 at 2008年03月28日 23:54
これもネタかな。
s/完敗に乾杯である。/完敗に完敗である。/
Posted by 北斗柄 at 2008年03月28日 23:52
ネタっぽいけど。
s/借りられなくなったしまった。/借りられなくなってしまった。/
Posted by 北斗柄 at 2008年03月28日 23:49
駒崎です。取り上げて頂きありがとうございました。
なぜか僕のブログからトラックバックできなかったのですが、
エントリーにて感謝の言葉を書かせていただきました。
http://komazaki.seesaa.net/

これからも頑張ります!
Posted by 駒崎弘樹 at 2008年03月28日 23:26
jazzfantasistaさん、どもどもさん、
ありがとうございます。
「弾の誤字脱字を変える」はちょっと仕事にはなりませんね:-)
Dan the Typo Generator
Posted by at 2008年03月28日 21:44
文字の協調が補助金に相当する
→文字の強調が補助金に相当する
Posted by どもども at 2008年03月28日 20:36
タイトルが≪「社会人を変える」を仕事にする≫になっています。
→「社会を変える」を仕事にする ○

ブログの内容としては通じますが念のため。
Posted by jazzfantasista at 2008年03月28日 19:50