2008年04月14日 08:30 [Edit]

In Vivo, In Vitro, In Silico - 留まってるだけでもスゴい

元分子生物学専攻で、ドロップアウトを経て今IT長者(笑)のオレがきましたよ。

プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT
最近情報系クラスタの人々と接触する機会が多かったのだが、彼らの多くは
  • 楽しんでいろいろ試行錯誤して、意識しないままスキルが向上した
のだろうな、という印象を持っている

たしかにそのとおりで、

うらやましいことこの上ない。

というのもわかるけど、しかしちょっとまってちょんまげ。

リアルと直結する分野では、それでもバイオって一番進歩が速かったじゃないの。


要は仮説→実験→検証サイクルの回転速度の違いではないかと。

実際、思考実験だけで済む分野では、昔も今も早熟の天才が何人も出てる。特に数学はそうで、ガロアとかアーベルとか。理論物理学なんかもそうで、白髪頭であっかんべーしている好々爺な印象があるアインシュタインだって、光電効果や特殊相対論を思いついたのは20代のとき。

ところが、同じ物理でも実験物理学だとこうは行かないのはご存じのとおり。思いつきをIn Cerebro(脳内)で発展させるだけじゃだめで、実験装置で確かめなきゃ行けない。ところが今日日ノーベル賞を狙える粒子加速器は、一つ作るのに数兆円かかる。あんまりに金がかかるというんでSSCなんかおとりつぶしになった。この時一番反対の声を大きくあげていたのはバイオな人々だったよね。

このことは科学(Science)だけではなく工学でもそう。典型的なのが核融合。もうこんな感じ。

404 Blog Not Found:マクロエンジニアリング受難世代
「核融合への挑戦」、私は新旧双方を持っている。旧版の第6章には、「実証炉が1995年、2000年には実用化」と書いてる。これが新版の20章には、「2050年ごろ実用化、これを急いで2030年ごろにできないか」となっている。

これに比べたら、バイオの世界は仮説→実験→検証サイクルがずっと高速回転している。In Vivo(生態観察)がIn Vitro(試験管内実験)になったというのはやはりでかかった。どの分野でも、仮説→実験→検証で一番大変なのは実験なのだけど、この実験のコストが飛躍的に下がった分野というのはやはり「発展」も早くなる。速度でいったら In Vivo ≪ In Vitro となるのだけど、さらに今では In Silico (コンピューターシミュレーション)が加わってさらに速くなった。だから、バイオを含めて、In Silico が適用できる分野では早熟の天才が現れてもおかしくないんじゃないか。

だけど、In Cerebro や In Silico だけですべて済むわけじゃない。In Vitro も In Vivo も必要なわけで、こういう分野でがんばっている人たちというのはほんと尊敬する。新旧「核融合への挑戦」の著者の吉川先生とか、堪忍袋が磁気でできてるんじゃないか。

ダーウィンが種の起源を書いたのって、たしか50歳の時。むしろ「ウサギ」ばかりに囲まれている業界にいると、「カメ」でないとやっていけない業界にすごさを感じるし、他の自然科学にくらべたら、バイオってよっぽど「ウサギ」的じゃないの。

Dan the Impatient


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この記事へのコメント
言及ありがとうございます。
弾さんがこの話題に絡んでくるとは思いませんでした。
引き出しの多さにびっくり。まさか元分子生物学専攻とは…

若造の意見ですが、本当にin silicoは科学研究プロセスを加速してるのか、いまいち具体例が浮かびません。

勉強不足かな…視点変えて論文探してみます


あと、元専攻なのに弾さんからその手の話題が出ないのは、
ひょっとして生物学に見切りを付けたのかな、と邪推してしまいました。
Posted by Hash at 2008年04月17日 01:34
元化学工学科で就職でSIやって今は監査なんて変な奴としては
如何に後顧の憂い無く無責任にトライアンドエラーを低コストで
繰り返せるかと言う点に実験屋の人が情報系の人にうらやましさを
感じているのではないかと考えます
だって自分のPCの中でシコシコプログラムを組む分には
時間コスト以外はほとんどリスクもコストもかからないですから
そうやって楽しんでスキルをつけられるって言うのは
他業種ではあまり見ませんもの
実験をスパコンでシミュレートするのでもそれなりにコストが
必要ですからね
Posted by ard at 2008年04月15日 03:23
計算機科学とライフサイエンスを経験したことがあるので一言。

ドライ(in silico)に比べてウェット(in vitro/vivo)はやはり実験のコストが高い気がします。時間もお金も。ただ、バイオサイエンスの分野では、データベースの充実、実験キットの普及、計測技術の向上で仮説→実験→検証サイクルが速くなっていることは事実でしょう。

あと、ナマモノは思い通りにならないことが多いので、バイオな人は大体いつも工学系の人を羨ましがる傾向にあるようです。
Posted by Sein at 2008年04月14日 18:23
バイオの分野は才能よりも「数打ちゃ当る」的な人海戦術が効果的なイメージがあります。
Posted by bob at 2008年04月14日 12:35
いつも思うのですが弾さんの文章は後ろのパラグラフから読む方がわかりやすい。
意図的に並べ替えたりしているのでしょうか。
Posted by ぶぎょう at 2008年04月14日 12:10
いつも思うのですが弾さんの文章は後ろのパラグラフから読んだ方がわかりやすい。
意図的に並べ替えたりされているのでしょうか。
Posted by ぶぎょう at 2008年04月14日 12:08
11031さん、
いつもありがとうございます。
ことえり、必師だな:)
Dan the Typo Generator
Posted by at 2008年04月14日 10:10
(誤)師ミュレーション
(正)シミュレーション
Posted by 11031 at 2008年04月14日 08:54