2008年04月17日 20:15 [Edit]

この記事をクリップ! newsing it! Buzzurlにブックマーク b.hatena.ne.jp/entry 経済の「複素」像 - 書評 - 「お金」崩壊

集英社新書編集部より献本御礼。

すぐに書評したかったのだけどやっとAmazonでも発売が開始されたので。

経済、そして経済学に「なんだか騙されている」と感じている人、必読。


本書、〈「お金」崩壊〉は、「確かに経済学者たちの言うことはつじつまがあっているのに、なぜそこに違和感が残るのか」を明快に説明してくれる一冊。弾流の言い方をすると「複素経済学入門」ということになる。

「お金」崩壊| 青木 秀和| 集英社新書|BOOKNAVI|集英社
私たちのお金はどこへ行ってしまうのか?
私たちが貯蓄する「お金」は公の借金返済に投入されている。しかし、それは返せる当てのない借金だ。もはや、「お金」には実体も価値もない。こんな社会からの脱却を呼びかける、新しい経済論。
目次 - 手入力
第一章 空洞化する貯蓄
第二章 なぜ公の債務は増え続けるのか?
コラム 夕張市に凝縮された自治体の昨日、今日、明日
第三章 お金の本質
第四章 お金を〈冗談〉にしないために
コラム 軍縮を語らない「温暖化防止キャンペーン」のインチキ
おわりに

すでに経済学をある程度学んできた人は、本書の215ページをご覧いただきたい。以下の図が目に飛び込んでくるはずである。この図の掲載許可を下さった著者ならびに編集部に感謝を。

two-economies

これこそが、「複素経済学」の全体図である。上の円が虚部、下の円が実部。上では資金が、下では資源が循環している。上をeconomy、下をecologyと言い換えてもいいだろう。

この図は、市場経済に対する違和感の根本原因も明らかにしてくれる。エコノミストの話からは、下の円が抜け落ちているのだ。しかし、エコロジストが話をする時には、上の円が軽視されているかすっぽり抜け落ちていることが多い。

この図一枚のためだけでも、本書は入手しておく価値がある。

それでは本書のタイトルの命題、お金はなぜ崩壊しうるか。

今やお金の大部分が、上の円に属するからだ。上の円は「虚部」。人間の共同幻想が生み出しているからだ。もう少し正確に言うと、ブレトン・ウッズ体制が崩壊、貨幣が「無本位制」になったときに「虚」となったと言える。

P. 150
世界の金融資産は、一九九五年からの一〇年間、六〇九五兆円(五十三兆ドル)からなんと一京三八〇〇兆円(百二十兆ドル)にも達している。にも関わらず、この間に世界総生産は、三〇〇〇兆円(二六兆ドル)から四〇〇〇兆円(三五兆ドル)になったにすぎない*11。
  1. http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/contribute/g/02/index4.html

GGP (Gross Global Product)が3割増しにしかなっていないのに、金融資産が倍以上になる。なぜそれが可能になったかといったら、金融経済が完全に「仮想化」されたからだ。「モノ」の裏付けがないからこそ、たった10年で倍以上(年率8.5%)という「成長」が可能になったのだ。

それだけなら、問題とは言えない。「その分インフレが進んだだけ」という言い方も出来なくはない。問題は「虚経済」の急成長に耐えられるほど「実経済」が大きくないこと、にも関わらず両方の経済がリンクしていることにある。虚が虚、実が実だけで回っているならいい。しかし圧倒的に多きな虚で実を手に入れようとした時、実はどうなってしまうのだろうか。

本書は、「今そこに問題がある」という世界経済の診断書である。私もここまでは気がついていた。気がついていたからこそ「複素経済学」などという言葉をでっちあげたわけだ。しかし、さすがの著者も処方箋までは提示していない。著者ですら「金本位制に戻れ」とは言えないのだ。

どうすればいいのか、私も答えを持ち合わせているわけではない(いや、実は一つ考えているのだが、それは本entryの範囲を越える)。しかし、そこに問題があること、なぜそれが問題となるのかは、治療法を考えるためにも必要なのではないか。

Dan the Complex Economist


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この記事へのコメント
> 実は一つ考えているのだが、それは本entryの範囲を越える

モッタイナイヨ!
無限の可能性を信じてみませんか
Posted by たか at 2008年04月17日 21:51
この図を見て思い出すのは、以前こちらのブログのコメント欄に書き込まれていた"Money As Debt"という動画です
スパムと思いつつ冷やかし半分に見て、衝撃を受けたのを覚えてます
# 敢えてURLは無し
Posted by mogera at 2008年04月17日 22:22
装飾品としての希少価値しかないモノをカミキレに置き換えられるだけの思考力を相当程度に共有できるまでに至った点では賞賛に値する言ってみるテストちぅ
Posted by at 2008年04月18日 01:05
>「その分インフレが進んだだけ」という言い方も出来なくはない

いいえ。できません。
Posted by   at 2008年04月18日 07:46
>虚が虚、実が実だけで回っているならいい。しかし圧倒的に多きな虚で実を手に入れようとした時、実はどうなってしまうのだろうか。

つ 2006年1月18日の東京証券取引所
Posted by    at 2008年04月18日 10:46
(誤)多きな
(正)大きな

意図的だったらスマソ
Posted by 11031 at 2008年04月18日 11:23
「信用(credit)」の意味を、もう一度しっかりと考え直すべきでしょうね。「無信不立」
Posted by torux at 2008年04月18日 17:02
>しかし圧倒的に多きな虚で実を手に入れようとした時、
>実はどうなってしまうのだろうか。

電源開発の例のように、
最低賃金のように、
土地用途規制のように、
独占禁止法のように
法で規制すれば良いんじゃない?

バブルの時に、「東京都の地価で全米を買える」とか、
「北方領土は金で解決すればいいじゃん。お金が
無いソ連は大金渡せば売ってくれるよ!」
なーんて話があったけどそんなの実現できないわけだしぃ。

Posted by 経済学は例外をたくさん扱うよ! at 2008年04月18日 20:26
つまり、どうしても頼まれた以上はどの本の書評も前向きに書かなければならない中で、トンデモ本の書評(主に経済関係)についてだけはあえてトンデモ書評を書くことででみなに気づきを与えてるんですね?そうですね?
Posted by わかった! at 2008年04月21日 22:24
よーするにカネは「使われないことで価値を維持できる権利」。だからみんなが使おうとするだけで紙屑になる。
たとえば「村を買える」という有名なでっかい石の輪があるとする。その石の輪で村は買えるけれども村が二つになったわけじゃないので、もしみんなが「カネを受け取ったらすぐに使う」という行動を取るならそんなカネは石コロに過ぎない。逆にそのカネを使わなければそれは「村一つ分」の価値があるとされるわけ。

だから...

>>「その分インフレが進んだだけ」という言い方も出来なくはない
>いいえ。できません。

なんてコメントもあるけど、そのインフレは潜在的なだけで確実に進行してると言える。
Posted by tarosuke at 2008年04月22日 16:44