2008年06月02日 15:30 [Edit]

書評 - 理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く!

著者および編集者の連名で献本御礼。

なんというゴージャスな企画。

著者がうらやましい。これだけのメンバーから経済学の個人授業を受けて、授業料払うどころか印税もらえるなんて:-)

まさに

404 Blog Not Found:これぞ真打ち - 書評 - ラクをしないと成果は出ない
83 「本格的に勉強したい」分野の仕事を引き受ける

の実践例。


本書「理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く!」は、hirax.netの中の人によるWeb連載、エンジニアのための経済学最適インストール/Tech総研を大幅加筆の上、書籍化したもの。

目次 - 手入力
はじめに
第1講 本当の成果主義って何ですか?
講師:大竹文雄
アンケート みんなに聞いてみました:「変化が続く毎日」「変化のない毎日」のどちらかを選ばなければならないとしたら、どちらを選びますか?
第2講 給与格差時代に希望が持てますか?
講師:玄田有史
コラム:経済学の「中途半端なバランス感覚」
アンケート:みんなに聞いてみました 明日は今日より、「明るい」「希望がある」と思いますか?
第3講 お金をたくさん持っている人が幸せですか?
講師:友野典男
アンケート:みんなに聞いてみました 選択肢の数が多いほど「満足で幸福」ですか?
第4講 結局お金って何ですか?
講師:松原隆一郎
アンケート みんなに聞いてみました:成果報酬 v.s. 「固定報酬」、あなたの現状と理想は?
アンケート 経済学者にも聞きました:好きな経済学者を教えてください
第5講 インサイダー取引ってなぜ悪いんですか?
講師:小島寛之
コラム:"技術の成長率"の低下が「失われた10年」を生んだ?
アンケート みんなに聞いてみました:インサイダー取引が「悪い」のはなぜだと思いますか?
第6講 なぜ今「会社は誰のものか」が問題なのですか?
講師:奥村宏
アンケート みんなに聞いてみました:「会社は誰のもの」だと思いますか?
第7講 市場で決まるモノの価格は適切ですか?
講師:西村和雄
コラム:ポール・グレアム の「知っておきたかったこと」と城山三郎の『素直な戦士たち』
アンケート みんなに聞いてみました:「分数もできない大学生」のような"みんな"が行う判断はただしいと思いますか?
第8講 経済学で戦争は止められますか?
講師:森永卓郎
アンケート みんなに聞いてみました:戦争に利益(効用)があると思いますか?
アンケート 経済学者にも聞きました:「分数もできない大学生」のような"みんな"が行う判断はただしいと思いますか?
第9講 平均的でない人も経済社会で幸せになれますか?
講師:中島隆信
アンケート みんなに聞いてみました:経済学の目的は何だと思いますか?
第10講 "経済学の世界"には、どんな魅力と危険があるのですか?
講師:小島寛之
アンケート みんなに聞いてみました:エンジニアという職業選択は合理的だと思いますか?
第11講 経済学・自然科学・工学の間にはどんな関係があるのでしょうか?
講師:栗田啓子
コラム:ワットの蒸気機関と「(神の)見えざる手」
コラム:「賭けることができる人」が経済を動かしている
アンケート みんなに聞いてみました:経済学者の"マルクス"を知っていますか?
第12講 経済が低成長でも、「豊か」な暮らしができますか?
講師:中村達也
コラム:「比較・成長・競争」がなければ「幸せ」になれない?
アンケート みんなに聞いてみました:豊かになるために必要なものは何ですか?
アンケート 経済学者にも聞きました:豊かになるために必要なものは何ですか?
巻末
「経済学」×「テクノロジー」の世界年表
「経済学」に興味をもっった人のためのブックガイド

ふう。なぜここまで詳しく目次を「再構成」したかというと、本書がどんな本かが実に雄弁に語られているから。およそノンフィクションというのは目次が全体の「サムネール」になっている必要があるのだけど、本書のそれは特によく出来ている。これだけの目次が用意されているにも関わらず「理系サラリーマン専門家11人に「経済学」を聞く! 平林純 | 光文社ペーパーバックス | 光文社」にも「hirax.net::inside out::2008-05-23」にもそれがない。画竜点睛を欠くことはなはだしい。今やWebサイトも本の一部という時代なのに。

本書の特長は、「単に」知識はなくとも知恵があるインタビュワーが、知識がある専門家から知見を得ているだけではなく、「みんな」という市井の人々による「経済学感」も提示していることである。本書の知識の流れは、専門家→読者だけではなく、読者(を含むみんな)→専門家という双方向なのだ。実に得難い一冊である。

どの講も素朴かつ本質的な質問が投げかけられており、インタビュワー、そして生徒としての著者の脳力の高さがうかがえる。著者はもとより、インタビュイーたちもさぞ楽しいひとときを過ごしたのだろう。実にうらやましい。

とはいえ、偏りが感じられるところも一カ所あった。「好きな経済学者を教えてください」という質問に対し、アダム・スミスが11名中5名、ケインズ、ヴェブレン、石川経夫がそれぞれ3名。ハイエクを上げたのが一名というのは、素人目から見てもかなりケインジアンバイアスがかかっているのではないだろうか。野口悠紀雄あたりを加えるだけでバランスがぐっとよくなったように思う。

とはいえ、本書が類い稀なる経済書であることは間違いない。経済の書であるだけではなく、1000円弱という値段は経済的である。EconomicalかつEconomicな本書を手に入れない経済合理性は、日本語を読める人には存在しなさそうだ。

Dan the Economic Animal


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初出2008.07.20; 夏の間しばらく更新経済学をめぐる巨匠たち (Kei BOOKS)現代の社会システムにとって経済活動は心臓部に相当すると思われる訳ですが、経済活動とはそもそもどういったことを表しているのかという前提をしっかり押さえ....
そもそも経済活動とは何か?【イクサス】at 2008年07月22日 01:59
この記事へのコメント
「野口 悠紀」さん、
失礼しました。なるほどたしかに。
piyoさん、
見出し抜けでした。これまた失礼いたしました。
Dan the Typo Generator
Posted by at 2008年06月02日 23:20
目次の第9講が抜けています。
Posted by piyo at 2008年06月02日 22:35
Posted by 野口 悠紀 at 2008年06月02日 19:11