2008年06月24日 22:00 [Edit]
わかってどうするかが問題 - 書評 - これならわかるネットワーク
著者より献本御礼。しかもサイン入り!
Geekなぺーじ : これならわかるネットワーク880円(税抜き)という価格帯の本の中では、私が知る中で一番しっかりと通信技術を解説している本だと感じました。
うむむ、この観点から行くと、実は「郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ」という強敵がいて、解説に限って言うと、あちらに軍配を上げざるをえない。著者が劣るのではない。岡嶋裕史がすごすぎるのだ。
それでも、あえて言う。プロを目指すなら、読むべきはこちらだと。
本書「これならわかるネットワーク」は、実際にIPv6の割当を担当していたTCP/IPの専門家が書いた、TCP/IPの一般啓蒙書。私のCTO時代にIPv6の割当をしてくれたのも、実は著者である。
目次 - これならわかるネットワーク インターネットはなぜつながるのか? 長橋賢吾 講談社が貧弱なのでGeekなぺーじ : これならわかるネットワークより拝借|
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著者はネットワークのプロではあるが、テクニカルライティングのプロとは言い難い。その差が「郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ」に現れている。いや、本書だって充分以上にわかりやすいし、ブルーバックスの常連読者ならむしろ本書の「かっちり感」を支持するはずなのだが、しかし「わからない」人にどちらを薦めるかといったら、やはり「郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ」の方を薦めざるをえない。それくらい「郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ」はよく出来た本である。
にも関わらず、私はなぜ「プロを目指すなら本書」と言うのか?
それは、本書が「現在のTCP/IP」にだけではなく、その過去と未来を書いているからなのだ。本書にあって「郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ」にないもの、それは歴史である。
実は技術を理解する上で、歴史があるのとないのとでは、「わかる」の深さが変わってくる。たしかに「今」を知っていれば、今あるものは「使える」ようになる。しかし「なぜそうなった」のかがわからなければ、明日どうなっているかを予測し、昨日とは違う今日のそれを理解するのは難しい。本書は歴史が入っている分冗長であるが、この冗長さがまさに「エラー訂正コード」として働くのだ。
そんなわけでお勧めなのが、両方とも手に入れて読み比べること。これをやった後なら、プロ用の書籍、たとえば右の「カニ本」も難なく読みこなせるはずだ。こちらはプロが使う本。知識だけではなく、ifconfigだとかrouteだとかいった、具体的な道具の使い方まで載っている。
本書を推薦している村井純は、日本のインターネット界で知らなきゃ逝ってよしな重鎮であり、そしてカニ本の翻訳者の一人である。この人が太鼓判を押すならという人も少なくないだろう。
しかし、本書を含め三冊を改めて読んで嘆息したのは、「今やほとんどの人は、こういう知識を必要としないのだなあ」ということ。かつてインターネットに接続するというのは、自らIPアドレスやネットマスクやらDNSやらの設定項目を埋めるということであった。PPP接続でさえ、DNSサーバーのIPアドレスが時に必要だった。
しかし、今ではDHCPのおかげで、家庭やオフィスであれば「何も設定しない」のが常識となった。「つなぐための知識」が必要なのは、システム管理者だけ。「ぼくつなぐ人、あたし使う人」ってわけである(←のパロディ自体歴史じゃあ)。
これは別にTCP/IPに限った話ではない。技術というものの宿命である。高機能化は、むしろエンジニアとユーザーの距離を隔てる方向に働く。今日日のプログラマーは、たとえば20年前のプログラマーよりずっと多くのテクニックを知っている。これはプログラマー歴20年+の私がはっきりと証言できる。「昔はすごかった」というのはガセだ。なぜその逆だと思われるかといえば、ごくわずかに残った、現役でも通用するベテランプログラマーからは話を聞くからだ。技術がすごかったのではなくたまたま証言者がすごかっただけの話だ。
その一方で、ユーザーとなるのに必要な知識はますます少なくなる。「三の倍数と三が入った時だけアホになる」と言われて「三の倍数」が何を意味するのか知らなくても、今やネットに繋がる。そういう時代にネットワークの基礎を学ぶというのは、どういう意味があるのだろうか。改めて考えさせられた。
一つ確かなのは、そういう時代においてもエンジニアは必要だということである。DHCPのおかげでユーザーがアホでよくなっても、DHCPサーバーを設定する奴は依然必要なのだ。ISPが世界に一つしかないわけでない以上、誰かがBGPの設定をしなければならない。むしろプロに要求される知識レヴェルは上がっているのだ。
本書は、その意味で啓蒙書として「あと5年は戦える」レベルにある。10年とはさすがに言いづらい。IPv4とIPv6の未来がいまいち不透明だからだ。しかしIPv6時代になっても、本書で得た知識は使えるだろう。クラスABCなど今は使わない技術であっても、その時の知見そのものは不朽だからだ。
TCP/IPの世界に、ようこそ。
Dan the Man Who Was Born in the Year of RFC1
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過去との連続性の中から現在のインターネット技術が生まれた、というのがこの本のコンセプトでして、その点を汲んで頂きまして、著者名利につきます。
おお!言われてみれば確かに。
私がものを知らんだけだろうか?
mac版ipconfigのことです>ifconfig
弾さんマカーだからなあ。
#この人だとtypoしてるとしか思えないのがアレだけど:-)
×「文章と図版でわかる解説のしくみ」
○「文章と図版でわかるインターネットのしくみ 」
いま見なおしてみたら「郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ - 郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ」でしたね。
※コメント消したい・・
mac 版とゆーよりは、UNIX 系ですね。
"if" はインタフェースの略です(多分)
# dankogai さんは typo 以外のコメントには返信しないので、念のため。

