2008年06月26日 00:00 [Edit]

s/部下/同僚/g - 書評 - 部下を動かす教え方

滝@日本実業出版社様より献本御礼。

初出2008.06.25; 販売開始まで更新

ああ、なんともったいない。タイトルが市場を狭めている。

「部下」を「同僚」と言い換えても成り立つのに。


本書「いつも仕事に追われている上司のための 部下を動かす教え方」は、「生き残る上司」の著者の「教え方」を一冊にまとめたもの。前著も悪くなかったが、本書はずっとイケてる。

目次 - アマゾンキャンペーン - 部下を動かす教え方より
教え上手になって、仕事がうまく回る「仕組み」を作ろう! - はじめに
第1章 「教える」ことで、あなたも組織も成長できる
あなたが教えなければ、会社の成長はありえない
「自分でやるほうが早い」は大間違い
「スピード最優先時代」だからこそ教えよう
教えなければ、上司とは言えない
教えることに「ギブ・アンド・テイク」を求めるな!
教えることは最高の「勉強法」
「仕事のDNA」を次世代に伝えよう!
第2章 部下を「一人前」に育てる教え方の基本
一度に教えるポイントは3つまで
大事なポイントは、くどいくらい繰り返して伝える
大事なポイントを強調する「間」の使い方
教える前に相手のレベルを見極める
専門用語はできるだけ使わない
「たとえ話」は魔法のツール
わからない部分が出てきたら、そのままにしない
部下の反応が悪くてもあせらない
質問がないからといって、安心してはいけない
部下が実行する際には、一切口を出さない
評価は「よかったこと→悪かったこと」の順に行なう
教えたあとも「TACサイクル」を続けよう
第3章 部下の「自信」と「やる気」に火をつける教え方
あなたの部下は「行動派」?「理論派」?
教わることのメリットを明確に話す
「努力は必ず報われる」と信じ込ませる
小さな成功体験を積ませる
「君ならできる!」を上司が言葉と態度で示す
できない部下もできる部下もほめまくれ!
どんなときでも叱るのはNG
部下には遠慮なくしゃべらせる
第4章 どんな部下にも効率がある「タイプ別」の教え方
タイプ1 まったくの初心者
タイプ2 教え方に文句をつける部下
タイプ3 根拠のない自信がある部下
タイプ4 すぐにリスクを考えてしまう部下
タイプ5 自分より年上の部下
タイプ6 自分よりはるかに年下の部下
タイプ7 本気で学ぶ気が感じられない部下
タイプ8 頑張り過ぎる部下
第5章 「多くの部下」を一気にレベルアップさせる教え方
教えの出来は準備で8割決まる!
教わる側には予習をさせる
教わる側の緊張を一瞬で解くアイスブレイク・スキル
教える側のあがりを解消するには?
教える側は「プチ・ハイテンション」が基本
伝わる話し方をする3つのポイント
レジュメと板書の効果的な書き方
図を使った教え方の注意点
「○○先生いわく」で教え方に説得力を持たせる
眠ってしまった人への対処法
必ずやりたいグループ・ディスカッション
「復習タイム」を教える時間に組み込もう
教わったことは今すぐ教えよう! - おわりに

まず本書がイケているのは、構成。まず問題--ここでは「部下を動かす教え方」--を「因数分解」し、「最大公約数」となる総論で、それぞれの問題--ここでは部下のタイプ--という「固有の約数」をサンドウィッチしている。これほどすっきりした構成は、「頭のいい段取りの技術」以来だ。

ただし、最初に述べた通り、「上司」というキーワードがなんとももったいない。著者の生業と著作リストを見れば、確かにこの「上司」にこだわりがあるのは理解できる。が、20世紀が「上から下へ教える時代」だとしたら、21世紀は「教え合う」時代である。「上司」というキーワードが、該当しない人に「オレには関係ねえ」フラグを立ててしまうことを懸念せずにはいられない。

これはもう弾言を通り越して断言する。今後「まともな職」にありつくためには、教える能力が欠かせなくなると。上司に教えることもなく、教える術も持たない人が、正社員になれる公算は小さくなるばかりであると。

確かに今でも組織図は木構造になっている。責任と権限という、上下関係の要に関しては、この木構造がなくなることはないだろう。しかし、組織を木としてしか使えない組織が、組織を時と場合に応じて網としても使える組織に抗することはますます難しくなる。野球のようにプレイヤーの役割がはっきりとしたゲームは廃れ、サッカーのようにプレイヤーの役割がリアルタイムで変化するゲームがますます主流になるということである。ボールがどこにあるかで、リーダーとフォロワーが刻一刻と変わっていくのが、会社に限らず、組織の主流になる。

一言で言うと、平社員といえどリーダーを務める機会は今後ますます増えるということである。もちろん、肩書きによってリーダーを務める機会の多少はあるはずで、上司の方がその機会は多いはずである。しかし、「上司だから教えなきゃ」ではすでにないのだ。「教えられる奴が上司になる」、時代はそこまで来ているのだ。

しかし本書のすごいのは、本当にs/上司/同僚/gとしてもほぼ全くほころびが出なかったこと。それは本書自体にそれを受け入れる柔軟性が存在することの証でもある。上司以外の人は、ぜひそうやって本書を読んで欲しい。

で、本書の主題、「教える」だが、実は教える方法として最強なのは「教わる」ことである。不思議なもので、「教えよう」とするとなかなか学んでくれないのが、「(何がわからないのか)教わろう」とすると、面白いように学んでくれる。私は年上の受験生に英語と数学(ときどき物理他)を教えていたことがあるのだが、なぜそれが曲がりなりにも通用したかといえば、何が分からなかったかを生徒に教わっていたからだ。

本書の主張も、まさにそれである。「教えたかったら、教われ」「教わりたかったら、教えろ」。私にとって、頭脳だけでもなく肉体でもそれを再確認することが出来た。心でも体でもお勧めできる一冊である。

Dan the (Teach|Learn)er

追記:実はその私が一番苦手としていた(教師|生徒)は、肉親。さすがに本書でもそこまでカヴァーしていない。どなたか書きませんか?


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この記事へのコメント
野ぐそってハンドルは言い得て妙だよね。
他人(のブログ)に擦り付けて、相手の品位を落とす。
言いたいことあるなら、トラックバックして自分のブログでやりゃいいのに。
ちなみに、とおりってのは通りすがりの意だけでなく、コメントには答えないというブロガーの方針に沿って付けてみました。
Posted by とおり at 2008年06月28日 21:18
難しいです。
Posted by とも at 2008年06月26日 11:53
弾言より断言のほうが強いのか。
Posted by Anonymous Coward at 2008年06月25日 10:23
> 追記:実はその私が一番苦手としていた(教師/生徒)は、肉親。さすがに本書でもそこまでカヴァーしていない。どなたか書きませんか?

 それができれば、世の中もっともっと幸せになるんでしょうねぇ。
Posted by 名無しさん at 2008年06月25日 10:07
 エントリーは以前に比べて非常に読みやすく頭に入りやすくなったけど、弾翁の発言は全体的に力強いから、読み続けると醤油ガブ飲み状態になって厳しいかもね。自身の生きる強さが、仇にならんことを願うよ。

 一般の読者さんはもう少し真人間(笑)だから、甘いものも辛いものも美味しいものも不味いものも何でも食べるけど、食べ「続けること」が、出来んのよ。身が保たん。続けるなら甘くて安くて努力の要らないもので。

 「上司」な人ってのは、そこが分からんからね。それだと読んでも失敗する。むしろ読むだけ害。そんな感じ。
 上司→上梓・城址・情死・上肢・上巳、だわいな。イケイケやって突き抜けて倒れて死ぬ的ニュアンス。
Posted by 野ぐそ at 2008年06月25日 09:12
s/書かせなくなる/欠かせなくなる/g
Posted by みんち at 2008年06月25日 08:14