2008年07月04日 19:30 [Edit]

誰が誰をリードするのか - 書評 - リーダーになる

訳者および出版社より献本御礼。

お恥ずかしいことに、私としては珍しく本書はしばらく「積読」状態になっていた。単に他の荷物にまぎれていたというのがその理由だが、それがむしろよいタイミングであったように思う。私がこれを読んだのは、「404 Blog Not Found:とっとと世の中を動かすたった1つの心がけ+3つの理由」を書いた直後のことなのだから。よい答え合わせになった。


本書「リーダーになる」は、「リーダーとはどのような存在であるかを」、出版当時--1988年および2003年のアメリカ人に向けて書いたものであるが、しかし本書に登場するリーダーたちは、当時のアメリカ人のみならずありとあらゆる時代のありとあらゆる国の人々である。

留意して欲しいのは、本書には「リーダーとは何か」は書いてあっても、「どうやってリーダーとなればよいのか」は書かれていないという点である。本書は「How to 本」ではなく、「What本」なのである。

目次 - Amazonのも増補。海と月社ホームページに何も見当たらなかったので
謝辞
人間は、自分を変えられる - 初版への序文
本当の自分を見つけ、育てよ - 増補改訂版への序文
インタビューしたリーダーたち
第1章 現状を打破する
第2章 基本を理解する
第3章 自分を知る
第4章 世界を知る
第5章 直感に従う
第6章 自分を広げる―体当たりし、すべてを試みよ
第7章 混乱をくぐり抜ける
第8章 人を味方につける
第9章 リーダーを助ける組織、くじく組織
第10章 未来をつくる

リーダーは、ボス(a boss)でもマネージャー(a manager)でもない。このことは本書の至る所に登場する。たしかにこれらの人々がリーダーであるに超したことはないけれども、彼らはリーダーではなく、そして彼らをリーダーと取り違えたことが、現代アメリカの問題だとはっきりと書いてある。

P. 98
マネージャーはものごとを正しく処理し、リーダーは正しいことをする。

私の手元に原文はないが、しかし下の英語がどうだったか復元するのは簡単だ。こうだったはずである。

Managers do things right. Leaders do the right things.

それでは、リーダー(a leader)とは何か。

自分自身を導く人のことである。

人々が彼らに導かれるのは、あくまで結果なのだ。

だから、リーダーには誰もがなることが出来る。確かに本書に登場するリーダーたちは、自分自身以外にも多くの人々を導いてきた者ばかりであるが、しかし彼らの一人とて、自ら行かぬところに人々を追いやったりはしない。もし彼らがそうしたのであれば、その時点で彼らはリーダーではなくなる。本書にはそういった「元リーダー」も数多く登場する。

ボスやマネージャーは、職能(job descriptions)であり、そうなるためにはまずはその職を得なければならない。リーダーは違う。リーダーというのは人格(character)なのだ。だから誰でもリーダーになれるし、そうすべきだと著者は行間に書いている。

リーダーになる、とは自分自身になるということなのだ。

「自分自身になる」。今日日は誰もが口に出す言葉ではあるが、これがそれほど簡単なことだったら、本書は不要なはずである。

P. 101
自分を知り、自分自身であることは、口で言うほど簡単なことではない。もし簡単なら、これほど多くの人がが借り物のポーズで歩きまわり、どこかで聞いてきたような考え方をまくしたて、集団からはみだすことを恐れて、必死に社会に適合しようとしているはずがない。

注意して欲しいのは、著者がこう語りかけている対象はアメリカ人だということである。日本よりもはるかに他者と異なる点のアピールを強いられている国でさえこうなのだ。「借り物のポーズで歩きまわり」「どこかで聞いてきたような考え方をまくしたて」「集団からはみだすことを恐れて、必死に社会に適合しようとしている」ことをずっと強く社会に求められてきた日本において、この言葉はいっそう重い。

自分自身になる、とは、なるべき自分に自らを変えていくということである。本書もまた、改訂されたことでこの結論のサンプルとなっている。日本語訳もされた初版から改訂版までは15年の歳月が経っているが、この間に世の中がどれほど変わったかを、本書は雄弁に語っている。この間に、ソ連が崩壊しネットが普及した。この変化は本書に如実に反映されている。おそらく第1章は原型をとどめていないはずだ。

しかし、本書の主題、「リーダーになるとは」(on becoming a leader)は、驚くほど変わっていない。おそらく何千年前の賢人に尋ねても同じ答えが返ってくるだろうし、何千年後まだ人類が存続していたとしてもこの答えは変わらないだろう。

まずは自分自身を導こう。世の中は後からついてくる。

Dan the Leader of His Own


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この記事へのコメント
lieutarさん、
いつもありがとうございます。多くの一がtypoを直してくれてありがたい:)
Dan the Typo Generator
Posted by at 2008年07月04日 20:07
s/これほど多くの一が/これほど多くの人が/ ですかね…
Posted by lieutar at 2008年07月04日 20:04