2008年07月17日 00:00 [Edit]

サイバーパンク・ノンフィクション - 書評 - インフォコモンズ

講談社Biz経由で著者より献本御礼。

初出2008.07.15;販売開始まで更新

これは恰好いい Stylish!

役に立つ usefulとか正しい rightとかどうかはさておき、これまでの佐々木作品の中では最も面白い fun一冊であるのは間違いない。


本書「インフォコモンズ (InfoCommons)」は、「Web 3.0とは何か」を嗤わずに考察しつづけてきた著者による、Web 3.0の草案 ドラフト。前作までの「Web 3.0」は、著者自身も含めて嗤わずにいられない代物だったが、この草案はなかなかいける。

目次 - 講談社BIZ-netより;ルビを追加
プロローグ
第1章 情報共有圏という考え方の誕生 
情報のオーバーロードに苦しむ脳 / ひとりあたり本五千冊分の情報 / 限界を超え、前頭葉はパニックに / とにかく時間に追われ続ける / 著名ブロガーが予言する勉強術 / インフォコモンズの誕生 / 情報を共有する人々の不定形なグループ / 情報洪水インフォフラッドはなぜ起こったか / 「自分の行動の通知=ライフストリーム」の増加 / 私的空間パーソナル公的空間パブリックに変わる / 2ちゃんねるで脅迫事件が起こった理由 / 記事のマイクロコンテンツ化 / クチコミは情報の個別最適化 / 情報洪水インフォフラッドと戦ったヤフーとグーグル / グーグルの問題点 / 人はさまざまな情報共有圏で生きている / 雑音ノイズ減らしとたこつぼフォックスホール化問題のジレンマ / 検索エンジンはどう進化するのか / 受動プッシュから能動プル、そしてまた受動プッシュ
第2章 暗黙ウェブの出現
多くの人をうんざりさせたアプローチ / 暗黙インプリシトウェブと行動ターゲティング / ヤフージャパン、優位に立つ / ユーザーの行為から自動収集される情報 / 従来型デートと事前情報型デートの結果 / ミクシィの可能性を超えるマイスペース / 「ストーカーのようなサービス」と反発 / 自分の購買行動が友人にばらまかれる / 情報共有圏インフォコモンズを自動的に構築してくれるシステム / ユーザーの猛反発にCEOが謝罪 / 隠された重大な問題 / 「人間関係のフィルタリング」というひずみ / 詐欺まがいの情報商材がベストセラーに / 迷惑情報があふれるソーシャルブックマーク / アフィリエイトの悪質な手口
第3章 「信頼」と「不安」を生むシステム
クールな情報を見つけてくれるのは誰か / 「信頼トラスト」と「友情フレンドシップ」は対立概念 / セマンティック・ウェブと協調フィルタリングの問題点 / クチコミ五百万件が掲載させるサイト / ベイズ理論を使ったサービス / ビッグブラザーに監視される不安
第4章 ウェブ3・0は「信頼」と「友情」を両立させる
「ウェブ3・0の定義」のコンテスト / フラット化された情報が再集約される / ミシュランと食べログの違い / すべてのデータは可視化される / 集合知モデルの誕生 / 好みの音楽が作る人のマッチング / アマゾンを越えるシステム / 情報共有圏インフォコモンズを築くまでのハードル / 暗黙ウェブは信頼・友情と結びつくのか
第5章 「情報の非対称性」が大問題だ
「見えないコミュニティ」を作るサービス / 本当の友人が生まれる / それでも解決できない課題 / 検索よりランキングを好むマジョリティ層 / スケールフリー・ネットワークという考え方 / 「一対一」でなく「多対多」のネットワーク
第6章 インフォコモンズ後の世界の姿
共同体が消滅し、漂流する日本人 / 素人の知の集合が、専門家をしのぐパワーに / 元優等生がミクシィの日記をやめた理由 / 多方向型SNSは実現可能なのか / すべての人と物と情報をつなぐサービス / バーチャルが主、リアルが従になる日 / 冷たい孤独から温かい共同体へ

まずは内容 コンテントはさておき、本書の体裁 スタイルである。目次を見ての通り、ルビのオンパレード。それも「よみがなを振る」のではなく「文脈 コンテキスト意味 セマンティクスを並列表現」するために使っている。

実はこのスタイル、著者のオリジナルというわけではない。私がはじめてこの体裁 スタイルのルビを目にしたのは、筒井康隆の作品だった。「トーチカ」を読んで焦した イラサイトのは私だけではないだろう。

これが一挙に開花したのが、宇宙が出てこないSF サイバーパンク、厳密にはその翻訳だったように思う。ニューロマンサーあたりを嚆矢に、サイバーパンクは数多く書かれ、そして訳されてきた。そういえば著者はサイバーパンクの大ファンである。

しかし、単に自分がファンだからという理由で体裁 スタイル真似る コピーほど、著者は軽い人ではない。著者がこれの導入に踏み切ったのは、Web 3.0という「現実」が、まさにサイバーパンクだからに他ならない。

そう、本書はフィクションではなくノンフィクションなのである。確かに現時点において、我々は脳内侵入 ジャック・インする技術はおろか、義体を作る技術もない。しかし情報洪水インフォフラッドは、Web 1.0以前のどのサイバーパンク作品が描写したよりもすでに苛烈であり、検索エンジンの威力を的確に言い当てたフィクションは、私の知る限り存在しない。個人的に、未来を最も正確に言い当てたSF作家は筒井康隆だと思うが、その筒井康隆でさえYahooもGoogleも予見していなかったのだ(でも2ちゃんねるは予見していた。これってすごくない?)。

サイバーパンクは、今、そこにある現実 リアルなのだ。

そんな世界における社会とは一体何なのか。著者による解答が情報共有圏インフォコモンズなのだ。そこは、情報そのものがlinkでありtieであるような世界。そこでは「硫化水素の材料」と「本」が、「自殺」によって繋がる。

私は、常々組織というのは

  1. 一対一
  2. 一対多
  3. 多対多

の順で進化すると言ってきたが、情報共有圏インフォコモンズとは、この多対多の世界における単位 ユニットなのだ。実はそこでは個人そのものも複数の情報共有圏インフォコモンからなる、情報共有圏インフォコモンズ原子 アトムが実は分割不可 アトミックな存在ではなかったように、個人 individualもまた電子雲のように境界も存在もあやふやな「物体」なのである。

それにしてもこのルビ、やはり縦書きの方がかっこいい クール。このかっこよさは実物でないと確認できない。各自ともぜひ自ら体験してほしい。そうそう、情報共有圏インフォコモンズの時代において、スタイルは決定的な優位点となる。ひょっとして著者 佐々木さん はすごい鉱脈を掘り当てたのではないか。

Dan the Collection of Infocommons


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書評リンク - インフォコモンズ (講談社BIZ)
インフォコモンズ (講談社BIZ)【書評リンク】at 2008年09月05日 20:40
この記事へのコメント
記事と無関係でアレですが、
このページだとルビが振られたところもずれずに表示されていますね。

環境 windows vista/firefox 3.0
Posted by ton at 2008年07月16日 01:13
地球規模の検索エンジン・情報エージェント

・サイバーパンクな世界ではあたりまえのガジェットにすぎないので
  取り立てて語られることすらない。
  まだ全然現実が追いついてない。
・ウェブが実現、普及してみると、やはりフィクションにはない
  展開を見せている。事実は小説より寄なり。

どっちなんでしょうね。
Posted by tori at 2008年07月16日 02:12
 ルビといえばむしろ河惣益巳でしょう。

 でも、この本のルビはあんまり芸がなくてツマンナイね。
Posted by 寿命 at 2008年07月16日 09:51