2008年07月22日 00:15 [Edit]

UI/UXのバイブル - 書評 - About Face 3

アスキーメディアワークス鈴木様より献本御礼。

初出2008.07.20; 販売開始まで更新

こういうしか、ない。

UI (User Interface) そして UX (User Experience)にとっての本書は、CにとってのK&R 、Perlにとってのラクダ本である。すなわち、バイブルであると。

いや、むしろクルアーンと呼んだ方が良いか。第三版であることといい、その厳しい姿勢といい。


本書「About Face 3」は、Visual Basic の父とも評される Alan Cooper と、彼が設立したコンサルタント会社 Cooper.com の俊英たちによる、UI/UXデザインの極意。

目次 - About Face 3になかったのでシコシコ手入力orz
著者について
序:脱工業化の世界で
謝辞
第3版のイントロダクション
Part I ゴールダイレクテッドデザインを学ぶ
Chapter 1 ゴールダイレクテッドデザイン
Chapter 2 実装モデルと脳内モデル
Chapter 3 初心者、上級者、中級者
Chapter 4 ユーザーを理解する:質的調査
Chapter 5 ユーザーのモデリング:ペルソナとゴール
Chapter 6 デザインの基礎:シナリオと要件
Chapter 7 要件からデザインへ:フレームワークの設定とデザインの精緻化
Part II 振る舞いと形態のデザイン
Chapter 8 優れたデザインの総合:原則とパターン
Chapter 9 プラットフォームとポスチュア
Chapter 10 オーケストレーションとフロー
Chapter 11 間接税的な操作を取り除く
Chapter 12 よき振る舞いのデザイン
Chapter 13 メタファ、イディオム、アフォーダンス
Chapter 14 ビジュアルインターフェイスデザイン
Part III インタラクションのディテールのデザイン
Chapter 15 検索:データをもっと簡単に手に入れるために
Chapter 16 アンドゥを理解する
Chapter 17 ファイルとセーブを考え直す
Chapter 18 データ入力の改良
Chapter 19 ポイント、選択、直接操作
Chapter 20 ウィンドウの振る舞い
Chapter 21 コントロール
Chapter 22 メニュー
Chapter 23 ツールバー
Chapter 24 ダイアログ
Chapter 25 エラー、警告、確認
Chapter 26 異なるニーズに対応するデザイン
あとがき:共同作業について
Appendix A:デザイン原則
Appendix B:参考文献リスト
索引

本書は、第一級のUI/UX論であると同時に、第一級のUI/UX批判でもある。単に「かくあるべき」を語るに留まらず、実例を一つ一つとりあげては、それを吟味し、好例であればそれのどこがよいのか、悪例であればどういう対案があるのかを一つ一つ検証している。

その歯に衣を着せぬ姿勢は、特に図版において顕著である。

P. 529 [クリックしてダイアログボックスを表示]
よくある警告ダイアログボックス。バカげたことで作業の進行を止めてしまうこんなものは不要だし、不適切だ。Wordはドキュメントの検索を終了している。そのことを報告するために検索メカニズム自体とは別の機能を使う必要があるのだろうか。ないのなら、なぜ別のダイアログを使っているのか

日本の読者にとってありがたいことに、本書はこれらの図版も可能な限り日本語化されている。訳者は結構大変だったかも知れない。

一ユーザーとしては、大変溜飲の下がる思いをした。「そうだ、その通り」。「YRPの中の連中は、Alan Cooperの爪の垢を全員呑め、いや足を舐めろ」「いや、デジタル家電のリモコンを作った連中は、全員切腹だ!」....と同時に、一「デザイナー」としては、もう本当に目にも耳にも痛い一冊だ。本書はカカオ豆100%のチョコレートのように苦い。が、この苦さはまぎれもなく良薬の苦さだ。

本書は、MacやWindowsといった、OSや、iTunesやPhotoshopといった大物アプリケーションに留まらず、Webアプリも対象となっている。第三版で最も変わったのはこの点である。今やUI/UXというのは、CupertinoやRedmondの「すごい人々」が作ったものを、「その他大勢」が[これはすごい][これはひどい]とケチを付けるに留まらず、およそWebを編集する人であれば誰もが心がけなければならぬものなのだ。本書がバイブルたる所以である。

全体的に、やはりというか、好例にはApple製品が多く、悪例にはMicrosoft製品が多い。しかしこれは著者たちがAppleびいきでは決してない。彼らは極めてフェアである。たとえば同じMicrosoft製品でも、Excelのカーソルの切り替え方を好例として取り上げているし、Apple製品でも、ワンボタンマウスは悪例として取り上げている。その点でいえば、今のところ一番褒められているのはGoogleだろうか。トップページもSkechupも好例として取り上げられている。ただし、このトップページ、本書の図版では、「何もない」google.comのそれではなく、下にタブがついたgoogle.co.jpのそれと差し替えられている。この部分のみ「過剰翻訳」を感じた。著者たちの感性から行けば、日本語版のトップページは蛇足的なはずなのだが。

とはいえ、本書が最も弱いのが「各国の独自事情」であるとも感じた。L10N(ローカライゼーション)の重要性に関しては本書もきちんと説明しているのだが、あくまで一般論に留まっている。日本というより日本語の場合、英米のUIをそのまま持ち込めないものも多い。特に縦書きなんてそうである。

もっとも、UIの場合、各国の独自性以上に、人類の脳内モデルの普遍性が大きい。そう。脳内モデル。本書たちが最も強調しているのは、「脳内モデルにUI/UXをあわせろ」ということである。「UI/UXに脳内モデルを合わせる」のではなくて。後者の例に対しては、ほんと著者たちは容赦ない。この点において、日本の読者は、日本の事情が本書にほとんど登場しないことにむしろほっとするのではないか。もし著者たちに私のプラズマTVのリモコンを見せたら、そのリモコンで私の頭をぶちわりそうである。

苦さ格別の良薬。およそ手に触れる「ものごと」を作る人であれば、常備しておくことを強くお勧めする。少なくともWeb屋は必携。ケータイ屋は読まなきゃ本書の角に頭をぶつけて死ぬべし。

Dan the Lousy UI/UX Designer


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そんな時間は無いだろうと思うかもしれないが、時間が無いなどということはないのだ。耳が痛くなるいい本が出るそうだから、読んでみよう。ちょうど叩かれるに適した例が手元にあっ...
デザインの勉強しようかなぁ【ぴらぴら週記】at 2008年07月20日 01:38
書評リンク - About Face 3 インタラクションデザインの極意
About Face 3 インタラクションデザインの極意【書評リンク】at 2008年08月20日 14:11
この記事へのコメント
(誤)別の昨日
(正)別の機能

(誤)カカオ豆100%のチョコレート
(正)カカオ豆99%のチョコレート

(誤)およし
(正)およそ
Posted by 11031 at 2008年07月20日 01:31
11031さん、
いつもありがとうございます。自分でも別のtypoを見つけたのでついでに直しました。
Dan the Typo Generator
Posted by at 2008年07月20日 02:18
アラン・クーパー節健在!。おなつかしや。
『The Inmates Are Running the Asylum』の日本語版『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』を編集したのはもうずいぶん昔のことですが、「『踊るクマ』ウェア」とか「技術ヲタ判別テスト」あたりの話は今でも十分通用するでしょう。
「脳内モデルにUI/UXをあわせろ」は技術がどれだけ進歩しても気をつけるべき普遍的命題ですね。
Posted by t2enonu at 2008年07月20日 15:43
> ケータイ屋は読まなきゃ本書の角に頭をぶつけて死ぬべし。

脅迫されたので自腹で買って読んでみました。
世界シェア50%以上のNOKIAのケータイ屋に勧めてくださいw

あと通信事業者の品質に対する変なこだわりから膨れ上がる開発費のいい償却方法ありませんかね?リセットボタンの議論もいつの間にか消えているし、待受でアプリが死ぬiPhoneはいい設計だよ〜。

GoogleのAndroidもいい解だと思うのですが、SaaSのように品質保証に対するお客様のウケが良くないので。コマッタモンダ。



Posted by ケータイ屋 at 2008年08月04日 19:19