2008年10月09日 23:30 [Edit]

安心はあなたの仕事 - 書評 - 安全。でも、安心できない…

いつものように松本@筑摩書房様より献本御礼。

今月のちくま新書は、実りの秋らしく豊作で、出来れば全部紹介したかったのだけど、今の私の持ち時間が世界経済も真っ青なぐらいキビしいので、もっともタイムリーなこの一冊を紹介させていただくことにする。


本書、「安全。でも、安心できない...」は、安全と安心の違いを説いた一冊。ちなみに安心と信頼の違いを説いたのが「安心社会から信頼社会へ」で、本書とあわせて読むのに最高の一冊である。

目次 - 筑摩書房 安全。でも、安心できない… ─信頼をめぐる心理学 / 中谷内 一也 著にないのでmailでおとりよせ
はじめに
第1章 「安全」だけでは足りない!
安全と安心の違い / 安全の被害はないのに…… / 事件についての学生との会話 / 極悪非道でなくても / 人はパターンで認識する / 見抜けなくても仕方ない / 万全の監視は困難 / 完全な安心も無理 / リスク管理は安心を与えるか / 安全をとるか、安心をとるか
第2章 信頼の心理学
分業社会における安全 / 外部依存は止められない / 分業社会における安心 / 二種類の情報処理 / 「遺伝子組み換え」の評価 / 自分で判断はムリ? / 信頼に「値する」と信頼できるように「みえる」 / 信頼の非対称性原理 / 信頼が悪化しにくい状態
第3章 信頼のマネジメント
信頼できる人の条件 / 「正直さ」?「思いやり」?「一貫性」? / 信頼は二要因で決まる / 誠実さの「演出」 / ブラックジャックは繁盛するか? / 「外部の査察」が有効な場合
第4章 価値観と信頼感
信頼理論の新たな展開 / 主要価値類似性モデル / 信頼するのは「第三者」か「仲間」か / 花粉症の人、そうでない人 / 結果を重視する人、プロセスを重視する人 / 赤土流出をめぐる信頼調査 / 信頼の文脈 / 「関心の低い人」が重要な理由
第5章 感情というシステム
信頼だけではない / 一般人のあり方 / 望ましくないことの過大評価 / さまざまな犯罪の発生頻度推定 / 不安感情という要因 / 感情ヒューリスティック / 感情が力を持つとき / 感情のシステムと理性のシステム / 感情システムの合理性 / 「恐ろしさ」と「未知性」 / 理性も受け入れられる
終章 「使える」リスク心理学へ
安全と安心の関係再考 / 他者への信頼 / 信頼の要素 / 自らをさらすという方法 / 価値類似性の認知 / 何が重要か、は状況が決める / 他人事の場合、当事者の場合 / 人びとの感情と向き合うこと
おわりに
引用文献

本書を読んだ上でこんにゃく「ゼリー」の顛末を見てつくづく感じたのは、「安全は提供できるが、安心は提供できない」ということである。マンナンライフは前製品より、そして他社製品よりも安全な製品を提供してきたにも関わらず、製造中止を決めてしまった。

あんたジャージでどこ行くの: マンナンライフを潰せば気が済むのかと
マンナンライフの事故件数が3件、他メーカー製が14件だから、事故発生の確率は下記の通り。
  • マンナンライフの事故発生確率=3÷42,900,000=約「1億分の7」
  • 他メーカーの事故発生件数=14÷21,450,000=約「1億分の65」
この数字だけを見ると、マンナンライフ以外の製品における事故発生確率は、マンナンライフ製の「9倍以上」ということになる。

それでは、誰が蒟蒻畑を殺したか。

本書はこの事件が起きる前に上梓されているが、本書を読んだ後であれば答えは自ずから見えてくるだろう。答えはあえて書かない。自分で見つけてほしい。自分で見つけられない人は、安心を得られないのだから。

そう。安心はあなたの仕事なのである。マンナンライフでも議員でもなく。

提供者に出来るのは、安全まで、なのである。それを安心に転化するのは、本来利用者の仕事なのである。

本来利用者の仕事であるはずの安心まで提供者に期待するのは誤りである。しかしこのことに利用者はもちろん、提供者も気づいていないのだ。為政者はいわずもがな

以下、長いが著者の結びを引用する。一人でも多くの人に安心が誰の責任か改めて考えてほしいので。

PP. 196-197
しかし、筆を置くにあたっていささか夢想的なことをいわせていただくと、社会が異なった立場の人びとで構成されているという前提を取払い、すべての人が「自分の中にある相手の立場」が理解できれば、社会のリスクマネジメントをもっと健全なものにできるのに、と思う。自分の中にある相手の立場というのは、次のようなことである。すなわち、消費者としてだけ存在する人はほとんどいない。消費者は、同時に、会社、その他の組織、あるいは主婦やフリーランスとして働く労働者(ないし元労働者)である。行政マンも帰宅すれば一住民であり、消費者である。このよゆに、個人の中にはいろいろな立場としてその人が存在する。消費者は王様とばかりに、ご無理ごもっともが通用しても、同じ人が労働者として理不尽な目にあわされていては意味がない。安全管理をめぐっても同様である。消費者・市民が自分の中にある労働者としての立場を感じることができれば、逆に、企業や行政側の人が一消費者、一市民としての自分の気持ちを引き出すことができれば、どこまでの安全を実現すべきなのかについて合意が得られやすくなると思う。
しかし、これは容易なことではない。容易なことでないどころか、むしろ社会心理学が明らかにしてきたのは、人のものの考えや行動は、その時におかれた立場や、その場の状況にかなり支配されてしまうということである。自分が歩行者である時は、横断歩道でいっこうに停車しない自動車の群れにいらだつが、ハンドルを握ると歩行者の立場を忘れてしまって、無茶な横断をする歩行者に対して腹が立つ。このような経験は珍しいことではないだろう。

あなたは安心「出来る」だろうか?そうでないとしたら、本書を手に訓練しておいた方がよい。

それこそが、あなたの仕事なのだから。

Dan the Prosumer


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この記事へのコメント
ここからは危険です。っていうのは、
ここまでは安全ですから。って保証になるのか
って話ですかね。


マンナンつまらせる人間って、
餅を噛まないで飲んでた人種なんですけどね。

そんなもん、家庭で解決しなさいよ。
Posted by higekuma3 at 2008年10月16日 13:55
トラックバックが通らないようなので、こちらに書き込みます。
拙ブログでも同書の紹介を書きましたので、ご参照ください。

http://a-gemini.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-07a7.html
Posted by a-gemini at 2008年10月12日 17:21
安心を植え付けてほしいんジャロ
Posted by at 2008年10月11日 11:37
安全を安心に転化しようとして、それを強引に押し付けてくる提供者もいてますよね。本当に安心できるのか確認しようとすると、鬱陶しそうな顔されたり・・・

しかし、何はともあれ日本人は「自分の身は自分で守る」という意識が全体的に低い様に感じるものまた事実です。。
Posted by k.yoshioka at 2008年10月10日 18:08
安全と不安は商売になるが、安心されたら商売にならない。
多分そういうことなのだと思います。
Posted by Nasty at 2008年10月10日 10:41
××××
Posted by 古物商で中古車ビジネス at 2008年10月10日 05:31