2008年10月22日 19:00 [Edit]
サブプライムはわかるのだけど - 書評 - サブプライム危機はこうして始まった
ランダムハウス講談社笹森様より献本御礼。
うーん、確かにサブプライムローンとそれをめぐる問題に関してはよくわかるのだけど、なぜ「たかが住宅ローン」が「全球的」金融危機を引き起こしたのがか今イチ伝わらない。
目次「サブプライム危機はこうして始まった」の原題は"Economic Tsunami"。確かに現在起こっていることは原題の通りだけど、本書でわかるのは邦訳の部分、すなわち「サブプライム(住宅ローン)の危機」の部分。残念ながら本書にはCDSなど、「ローカルな津波をグロバールに伝える仕組み」についての解説はない。
目次 - ランダムハウス講談社より- 第一章 危機の淵源
- 第二章 アメリカン・ドリーム
- 第三章 地獄への路は善意で舗装されている
- 第四章 データで見る危機の実態
- 第五章 害虫は決して死なない
- 第六章 サブプライム危機の犠牲者たち
- 第七章 今、どんな対策が講じられているか
- 第八章 今後の対策を提言する
しかし、この住宅ローン部分だけでも、本書を読む価値はある。「住宅ローン」と一口に言うが、借り手から見て日本のそれとはだいぶ異なるのだ。ただし読み飛ばしてはそういったところを見落とすので、本書を読む際には数字が出てくるところでは「徐行」して読んでいただきたい。
たとえば....
P. 147それは、当初3年間は元金部分を支払わず、5.99%の金利分のみを支払うタイプだった。その金利は2007年に7.25%へと"調整"され、その後、最高13.5%まで6ヶ月ごとに金利が上昇していくローンだった。
まずもって、日本において元金部分を支払わない住宅ローンというのがないだろう。もちろん銀行と相談してそういうローンを作ってもらうことは可能だが、少なくとも「量産品」でこういうのはない。会社の運転資金用のローンとしてはむしろ日本でも一般的であるが、会社が曲がりなりにも金を生み出すのに対して、住宅はそうではない。
はずだ。
にも関わらず、当初金利のみ支払うローンがあるというのは、住宅が「金を生み出す」装置だと関係者全員が誤解していたとしか思えない。確かに住宅価格が下がらないのであれば、元金部分は家を売った際に清算してしまえばいいのだし、貸し手も借り手もそういう目論みであったからこそ、こういう日本の常識では考えられない住宅ローンが成立していたのだろう。
その点で残念だったのが、本書にMEWに関する言及がなかったこと。ちなみにMEWとはこういうもの。
404 Blog Not Found:神か悪魔かグリーンスパンか - 書評 - グリーンスパンの正体日本では考えがたいことなのだが、アメリカの住宅ローンにはMEW = Mortgage Equity Withdrawal という「蛇口」がついている。家の評価額が値上がりしたら、その分現金で下ろせるのだ。
本書で描写されるかの国における住宅ローンのもう一つの特徴は、人種間の金利格差。有色人種はより高金利でないと借りれないのだ。
そうした合州国の住宅市場事情に関しては本書は決定版ではあるのだが、そこで起こった問題がなぜ全世界に波及したかまでは本書から読み取ることは出来ない。別の解説本が待たれる次第である。
Dan the Tiny Part of Global Economy
この記事へのトラックバックURL
全てダメ、じゃなくて部分的に良いよ?って紹介でしょ
私の知る限りサブプライム問題についてぐっちーさんの解説ほどわかりやすいものはありませんでした
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/p/74/
現象面についてもそうだが、記事の内容や解説についてもである。
情報は満載であるのに掘り下げ方が足らなくて役に立たない本は多いが、なぜこんな悲惨な信用破綻がおきるようになったのか、その根本原因を理解させてくれる点でこの本を読む価値は十分にある。「アメリカン・ドリーム」についての背景は初めて知る内容だった。
また読み手に金融リテラシーが十分備わっていれば、この本から読み取ったことを投資行動などにも生かせたかもしれない。
「ソロスは警告する」を含め、サブプライム危機関連の本が、世界の信用危機や今日の円高急転までに発展してきた流れはもちろん、CDS市場の崩壊まではカバーしていないのはいたしかたない。
この原稿が書かれていた今年の5月や6月時点で、リーマンやAIGが破綻することやその後の急展開を予想できれば一財産築けたであろう。
破綻に追い込まれたヘッジファンドなどのことはよく聞くが、この混乱に乗じて大儲けした話はごく少数のようだ。
アメリカの最新の情報を知るには原著が読めれば一番よい。しかしそれが無理なら下手な解説書よりこのような翻訳書のほうがよい。 新書版の日本人の解説書も悪くはなかったが、アメリカ人によるアメリカ人の問題認識については、この本には及ばないように思った。
