2008年10月24日 17:00 [Edit]

女王の王冠 - 書評 - プライムナンバーズ

いつもどおり矢野@オライリー様経由にて赤池@オライリー様より献本御礼。

あのオライリーが数学本を出すので、どんな本かと楽しみにしていたのだけど、

そう来ましたか。

風邪をこじらせている身にはちょっとありがたい。

え?風邪とどう関係しているって?答えは「続き」を。


本書「プライムナンバーズ」は、一言で例えると、「へぇの本素数編」。目次は長いのでここでは割愛し、「O'Reilly Village / オラの村 - プライムナンバーズ」を見ていただくとして、素数からみの話題をアルファベット順に列挙してある。本書の特長は、その列挙数の豊富なこと。完全数やゴールドバッハ予想といった有名かつ重要(であることがわかっている)話題にとどまらず、チャンパーノウンの定数のように、素数といったいどういう関係があるんだよという数やら、「非合法の素数」という、なんだか「πは4である」を定めた法律のようなものまで、およそ素数がらみの「ゴシップ」ならかたっぱしから取り上げている。

要するに、脳力をフル回転させなくても楽しめる本だということだ。「風邪っぴきにもありがたい」の真意がそれ。数学はとにかく脳力を使う。数学本を読んで眠くなるのは、おそらく正しく読んでいる証である。それはものすごく気持ちよいものだが、しかし体力を消耗するのも事実。本書はその点実に気軽に読める。およそ数学の本の中で、これほど気軽に読めるものは何年ぶりだろうか。

その一方、各項目は事実の紹介のみに留めてあり、証明はほとんど登場しない。本書はあくまで「広く浅く素数に関するWhatever」を取り上げる本であって、深く鋭く素数を考察する本ではない。実用性はほとんどないと弾言しておく。これらに関しては、ブルーバックスから良本が二冊出ているのでここで改めて取り上げておくことにする。

cover cover
素数入門/数論入門
芹沢正三

「へぇ」で満足できない方は、是非。

カジュアル数学本ということもあってか、校正もカジュアルだったか。一回通読しただけで二カ所明らかな誤植を見つけた。この場を借りて指摘させていただく。

P. 247
aω(n) ≡ 1 (mod n)

これはωでなくてφ、すなわち

aφ(n) ≡ 1 (mod n)

で、

P. 290
底を10とする場合にはlog10nと表記します。

これは上ではなくて下、すなわち

底を10とする場合にはlog10nと表記します。

が正しい。

それにしても、素数というのはすごい。こういう言い方も変だが、本書ぐらい「浅く」取り上げても味が薄くならないのだ。

P. 124
数学は科学の女王であり、整数論は数学の女王である -- Johann Carl Friedrich Gauss

だとしたら、その女王 = Prima Donna の王冠が Prime Numbers ということになるのだろうか。最も単純にして、最も深淵な神秘、それが素数。どうしてもその深さに目がいきがちなのだけど、こういう浅い切り口もありうるという点をしめしたのが、本書の功績だろうか。

素数の底なしの深淵というのは、美しくもあるが怖いものでもある。はまると日常に戻って来れなくなるほど。むしろ本書ぐらいの浅さが、守るべき日常を持った大人にはちょうどよいかもしれない。

もう一度だけ注意しておくと、本書は他のオライリーの本と違って「役立つ」本ではない。例えば本書を読んでもAKSアルゴリズムが理解できるわけでもないし、それどころか本書には素数が無限に存在する証明すら載っていない。使うことは忘れて、まずは楽しんでほしい。

Dan the "Rather Prime than Alpha" Blogger


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書評リンク - プライムナンバーズ -魅惑的で楽しい素数の事典
プライムナンバーズ -魅惑的で楽しい素数の事典【書評リンク】at 2008年10月24日 21:31