2008年11月16日 03:00 [Edit]

A man I love to hate - 吉本隆明の声と言葉。

糸井重里事務所より献本御礼。

ずいぶん前に頂いたのだが、すっかり紹介が遅くなってしまった。

そうなったのには訳があって、読了感をどう言語化すればいいのかわからなかったのだ。


本作「吉本隆明の声と言葉。」は、タイトルどおり、吉本隆明の肉声を納めたCDと、糸井重里との対談文からなっている。その吉本隆明が、私の Love to hate の対象だ。

Love to hate.

この言葉は、よく「死ぬほど嫌い」とか「蛇蝎のごとく嫌い」という訳され方をする。しかしこの言葉、単なる"hate"を強調した言葉ではなく、「嫌うことを愛する」という直訳どおりの意味でもあるのだ。

この Love to hate で私は引っかかっていたのだ。

「どうせ日本語で言い切れないならそのまま言ってしまえ」と開き直るのに時間がかかったのだ。

著者を嫌う理由は、あまりに多い。

昔の人の方が、やっぱり偉かったと思う。

嫌うだけなら、これで十分である。曰く「昔って何さ。人類発祥以来この世に登場した人は1000億ほどだそうだが、あんた全員チェックしたのか」「そういうお前はなんで子どもをこさえたんだ」「隆明よりばななの方が偉いよ、オレ的には....」

しかし、吉本隆明には、これがある。

言葉の一番の幹は、沈黙です。言葉となって出たものは幹についている葉のようなもので、いいも悪いもその人とは関係ありません。

だから、単なる hate では充分ではなく、充分かどうか以前に不適当で、 love to hate でなければならないのだ。

私にとって、そういう人は決して多くない。

そしてそういう人こそ、私がこの世を愛すべき理由なのだ。

Look, the world is large enough to harness both kinds. Those I love, and those I love to hate.

なぜ私が全体主義のごとくに耐えられないかと言えば、一言で言えば狭量だからだ。正しいもののみ存在が許されるのなんてまっぴらごめんだ。自分自身、そういう世にあっては真っ先に消される存在だろう。

そのことを確認するのに、著者のような存在ほどありがたいものはないのだ。

Dan the Man who Loves to Hate the Author


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この記事へのコメント
激烈な批判だとか厳しい物言いをするので相当hateされちゃってる吉本さんですが…そういう言辞も詩人だからこそ可能だった気がします。アートですね、たぶん。

自分が感動したのはその理論のユニークさと厳密さ。これはバリバリの理系出身だからでしょうが。概念や用語まで理系であることが源泉になってるみたいで、ベクトル変容、パラ・オルト位置、遠隔対称性…物理化学や数学的な用語が基礎にあって、文系の思想家さん評論家さんたちが右往左往して大騒ぎ?かシカト…してるような。

このCD、さすが糸井さんの編集で、ポイントがわかります。独特の言い回しもgoodかも。これ聴いて興味をもったら書籍の方にtryすると新しい世界が開けますよ、キット。特に理論書。音楽やファッション、高層ビル、ブレランや資本主義の批評をしてる『ハイ・イメージ論』なんか難解さも楽しめるのでオススメ!
Posted by sheep5 at 2009年02月06日 15:27
昔の人のほうが、
社会的記録物が残らない分、
たちふるまってた気はするね。

殺しておいて、知らんぷりとか
ボヤから全焼させて、
保険金、全額もらって儲けるとか。
Posted by higekuma3 at 2008年11月19日 01:30
「思考しえぬことを我々は思考することはできない。
 それゆえ、思考しえぬことを我々は語ることもできない」

「語りえぬものについては 沈黙しなければならない」 by ウィトゲンシュタイン

【ウィトゲンシュタイン哲学の真髄】

 透明人間 あらわる あらわる
 ウソを言っては困ります
 あらわれないのが 透明人間です

 ピンクレディー 「透明人間」より
Posted by K2nd at 2008年11月18日 07:15
吉本隆明さんもすごいですが、
カレの講演の「音源」をライフワークとして
やり続けた、
宮下さん(?)と、その音源をデジタルファイル化した
糸井さんが、すごいんですよ。


アナログデータをデジタル保存する事業は、
すごく大変です。


紙焼きの写真も、腐ったり、焼かれる前に
保存しないとね。

フィルムは、NHKとかが、やってくれてるみたいですが。
Posted by higekuma3 at 2008年11月17日 01:11
こんにちは。
吉本隆明は、バブル期だった学生時代に話題になったサブカル論から入り、皇国史観論とか、一部ですが読みましたので懐かしく感じました。著作で見られるエキセントリックさと、テレビでの露出とのギャッブに驚いたものでした。「電波少年」にまで出てましたものね。
Posted by 交通ルール at 2008年11月16日 16:16
気持ち、かなり分ります。「反核異論」の頃までは賛否うずまきつつも、かなり熱心な読者だったんですが…。
Posted by Namekawa, U at 2008年11月16日 12:07
弾兄ちゃんいつ寝てんすか?
Posted by 夜中だぜ at 2008年11月16日 04:15