2008年12月14日 03:30 [Edit]
筒井康隆を継ぐもの? - 書評 - ΑΩ
SF欠乏症は、「ハイペリオン/没落/エンディミオン/覚醒」をもってしても癒せないので読了。
もしかして、この人こそ筒井康隆 、それも神戸に引っ越しする前の、ドシャでメシャな筒井康隆の後継者ではなかろうか。
内容(「BOOK」データベースより) 旅客機の墜落事故。乗客全員が死亡と思われた壮絶な事故現場から、諸星隼人は腕一本の状態から蘇った。一方、真空と磁場と電離体からなる世界で「影」を追い求める生命体“ガ”は、城壁測量士を失い地球へと到来した。“ガ”は隼人と接近遭遇し、冒険を重ねる…。人類が破滅しようとしていた。新興宗教、「人間もどき」。血肉が世界を覆う―。日本SF大賞の候補作となった、超SFハード・アクション。
「宇宙人に憑依される」というのは、もうSFでは20億の針以来のアイディアで、もはやそれだけで一つのジャンルと言ってもいい。しかし味付けしだいでこうも変わるかというのもこのジャンルで、「たった一つの冴えたやり方」にもなれば「寄生獣」にもなる。
で、本作の味付けは、まぎれもなく「トラブル」のそれ。エロくてグロくてオモシロい、「古き佳き」筒井がそこにある。しかも「霊長類南へ」まで入っている。「トラブル」における宇宙人の設定は、地球人をドシャメシャに操るための背景に過ぎないが、「ガ」の設定はそれだけでちょいっとしたハードSFの短編になる。しかもこのハード、設定や論理考証がハードという意味だけではなく、エロいという意味でもハードコアなのだ。
宇宙人の性交をこれほどエロティックに描くことに成功した作家は前代未聞なのではないだろうか。性別すら明らかでないのに、いや、そもそも性があるかすら定かではないのに、「ガ」の「一族」の交接のエロいことと来たら!
そして、グロい。ぬるぬるべちょべちょぐしゃぐしゃという湿ったグロさも、ぎらぎらこげこげぶすぶすという乾いたグロさも素晴らしい。
なのにオモシロい。「ジュワッ」に「ロケットパンチ」。そこには酸鼻を極める光景が確かにひろがっているのに、まるで「ガ」に我を操られているがごとく笑ってしまう。
「21世紀の筒井」という印象は、本作だけではなく「天体の回転について」でも強く感じた。短編が上手なところも筒井的なのだ。
日本のハードSFの質は高い。野尻抱介や林譲治を読むと、日本語を読めてよかったというより、英語しか読めない奴に「ざまぁ」と言いたくなる誘惑にすらかられる。しかし彼らの作品には乾いていて「ぬめりがない」。一方、日本のホラーの質の高さはすでに海外にも知られている通りである。「ぬめり豊か」な作品に不足することはありえない。
しかし、両方を兼ね備えている点で、著者は実に希有な才能である。エログロもハードなハードSFを書けるというのは、実に素晴らしい。そしてエログロはとにかく、ハードSFという点においては少なくとも著者は筒井を凌駕している。
ここ数年、いや10年近くは、我ながらずいぶんとフィクション、特にSFから遠ざかっていたように思う。リア充だったからだろうか。人から薦められて受動的には読むし、お気に入りの作家の最新作(たとえば神林長平)は一応追ってはいた。しかし積極的に知らない作家の作品を追うところまでは手というか目がまわらなかった。こんなすごいヤツをついぞ数日前まで知らなかったなんて!
Dan the SciFilia
