2008年12月25日 09:30 [Edit]

名文より明快文 - 書評 - 非論理的な人のための論理的文章の書き方入門

ディスカヴァー社より献本御礼。

問題:
あなたはこの本を読むべきか?
結論:
読むべきである
理由:
非論理的なあなたは、本書さえ一読すれば論理的な文章の作り方を会得できるから。
論理的だと思っているあなたは、本書を読めばまだまだ改善の余地があることを実感できるから。

本書「非論理的な人のための 論理的文章の書き方入門」は、三省堂国語辞典の編集委員もつとめる著者が、論理的な文章の書き方を、まさにその方法に則って書き下ろした一冊。

目次 - Discover: ショッピングカートより
第1章 伝えたい考えは「クイズ文」で書く
LESSON 1 言いたいことは伝わっているか
LESSON 2 クイズ文とはどういうものか
LESSON 3 クイズ文の反対は「日記文」
第2章 クイズ文の型を理解しよう
LESSON 1 クイズ文の四つの型
LESSON 2 ディベートはクイズ文を書くのに役立つ
LESSON 3 ディベートを疑似体験しよう
LESSON 4 ディベートからクイズ文をつくってみる
第3章 実践! クイズ文を書いてみよう
LESSON 1 「問題・結論・理由」を用意する
LESSON 2 「問題」の述べ方、ここに注意
LESSON 3 「結論」の述べ方、ここに注意
LESSON 4 「理由」の述べ方、ここに注意
LESSON 5 文章完成に向けてすべきこと

目次を見ての通り、著者はそれを「クイズ文」と呼ぶ。

カヴァーより
問題:
自分の考えたことを文章にして、読者に間違いなく伝えるには、どうすればいいのだろうか?
結論:
そのためには、「クイズ文」という〈問題〉〈結論〉〈理由〉という形式に従った文章を書けばいい。
理由:
なぜなら、この形式は、読者と一つの問題意識を共有し、かつ、読者を一つの結論に導くためのものだからだ。

実はこの形式そのものは目新しいとは言えない。なぜか日本の学校ではあまり教えないようなのだが、英作文ではこれが基本中の基本で、徹底的に教えられる。また、日本でもこの文の使い手は少なくない。野口悠紀雄はその代表格だろう。「「超」整理法」が売れたのは、その内容が「超」整理的だった以上に、文章構成が整理的だったからだ。

にも関わらず、なぜかこの「クイズ文」は学校では教わらない。少なくとも私がこれを義務教育で教わった記憶はない。「起承転結」という「物語の作法」、本書の言葉で言えば「日記文」は教わった記憶があるのだが、これは一体なぜなのだろうか。「国語」で教わるのが「文学」だからだろうか。

かつての、少なくとも20年前までの「国語」において重視されていたのは、曖昧な文書から真意を読む、読解力だったように思う。娘たちの国語の教科書を斜め読みしても、この点においてはあまり変わっていない。「この著者が言いたいことは何なのか」?「そんなの著者にもわからねーよ」という「著者のつっこみ」はちょっとした風物詩にさえなっている。

まだ文章そのものが少ない時代は、それでもよかっただろう。しかし、現代人は、かつてないほど多くの文章を読まなければならない。本を読まぬ人ですら、メールからブログまで、読む機会はかつてないほど増えている。そしてかつてないほど、現代人は文章を書かねばならぬ機会が増えている。

そこでものを言うのは、読解力という読み手側の能力よりも、作文力という書き手の能力である。しかし学校では読文は教えても、作文は教えない。作文そのものは授業にあるのだけど、ただ文を一定量以上書き連ねることばかりが求められ、どれだけ的確に伝わるかという、文章で最も重要な作法は教えてくれない。

本書のような本が必要になる所以である。

私が日本の義務教育に抱いている疑念、いや疑心は二つある。

一つは、複式簿記を教えないこと。

一つは、作文を教えないこと。

この二つがあれば、なんとか生きていけるのに、である。

言葉と食べ物には、一つ共通点がある。どちらも贅沢品でかつ必需品だということだ。

ディスカヴァー社長室blog: 反論無用でお薦めします 〜非論理的な人のための論理的文章の書き方入門  ●干場
というわけで、随筆文学、日記文学とその文化の中から生まれた(!?)ブログ文の大部分も、非論理的文章(弾さんの記事の多くは、違うけど。ちゃんと反論もコメントされてるし)です。

(苦笑)私は論理的な文章だけしかない世界は貧し過ぎると感じるが、しかし論理的な話し方を学ばせずして文学を棒読みさせるのは、それこそパンを与えずしてお菓子を与えるようなもったいなさを感ぜずにはいられないのだ。

本書は、本来教科書として配られるべき本である。なぜ「パン」が有料で「お菓子」が無料なのか。

かわいそうなのは、ゾウではなく我々の娘たちであり息子たちではないのか。

いやいや、褒めるつもりが朝からあさっての方向に憤ってしまった。しかし感情的かつ論理的な文章というのは、最も読ませるものではありませぬかととぼけつつ本entryを締めくくることにします。この分野の本としては「議論のルールブック」以来の得物。給食費だと思って一冊入手してみてくださいませ。

Dan the Logically Emotional


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書評リンク - 非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門 (ディスカヴァー携書) (ディスカヴァー携書)
非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門 (ディスカヴァー携書) (ディスカヴァー携書)【書評リンク】at 2008年12月26日 22:31
確定申告の季節がもうすぐやってくる。というわけで2008年分の支払調書を仕分けたりしているのだが、今回はその数に圧倒されかけている。 なぜそうなったかといえば、本blogの書評を広告に使いたいという出版社がものすごい増えて、使われる都度謝礼を頂けるようになったか....
レポートのコピペがダメな理由とそれを防ぐ以外な方法【404 Blog Not Found】at 2009年02月08日 15:18
ディスカヴァーより献本御礼。 越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 越前敏弥 以下の言葉に偽りはない。 ディスカヴァー社長室blog: あなたならどう訳す? 日本人なら必ず誤訳する英文 ●干場編集担当のフジタ部長が、つけたコピーは、 「英語自慢の鼻をへ....
ガチな歯ごたえ - 書評 - 日本人なら必ず誤訳する英文【404 Blog Not Found】at 2009年02月14日 16:48
非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門 (ディスカヴァー携書) (ディスカヴァー携書)(2008/12/20)飯間 浩明商品詳細を見る 非論理的な人の??.
わかりやすい文章を書くために 【書評】非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門【メタノート】at 2009年03月05日 18:51
筑摩書房松本様より献本いただいたもの。紹介が遅くなってしまった。 国語教科書の中の「日本」 石原千秋 これは面白い。あのつまらなかった教科書が、こうも面白く読めるとは。 そしてわかった。なぜあれが「日本語」ではなく「国語」と呼ばれているかが。
日本語!=国語 - 書評 - 国語教科書の中の「日本」【404 Blog Not Found】at 2009年09月18日 14:26
原稿用紙10枚を書く力(2004/09)斎藤 孝商品詳細を見る◆質を上げてから量に向かうのではなく、量をこなすことで質を上げる(中略)とにかく目的を達成しよう。その目的は量だ。だから一日の書くノルマを決めて、その枚数をこなすということを一定期間やってみる。(p016...
原稿用紙10枚を書く力/齋藤孝/大和書房/【10分で理解するビジネス読書ノート】at 2009年10月12日 09:30
中公新書編集部より献本御礼。 日本語作文術 野内良三 これはすごい。 おそらく新書として上梓された作文指南術中、最強の一冊。「書きたい」ブロガーから「読ませたい」ブロガーになりたい人必携。必読でなくて必携。読む本ではなく使う本だから。
「伝わる」から「読ませる」へ - 書評 - 日本語作文術【404 Blog Not Found】at 2010年06月11日 11:34
この記事へのコメント
アルゴリズムは論理的文章の極致ですもんね。
かと言って文学的ではないかというとそんなことはなく、簡潔なプログラムは詩のように美しい。
Posted by bob at 2008年12月25日 10:06
 クイズ文は「正解はひとつ」「真実はひとつ」的な思考回路に陥る可能性が高いから、馬鹿に薦めたら馬鹿が加速するだけでしょ。本来賢い人の知性をオタク止まりにしてしまう可能性もあるから、初等教育以上ではさほど使わない方が賢明だよ。基礎・基本で重要なのは言うまでもないことだから別にいいけど。

 数学、物理、科学、化学みたいに「実験に対する答えが出る(微差や誤差は比較的考慮しなくていい)」領域においては理解を深めるために必要な考え方だけど、国語、社会、歴史なんかに応用すると、社会性や発想が硬直化するだけ損だよ。微差や誤差に相当する領域の人たちの生活をある程度考慮しないと成り立たないのが「社会」だろうに。

 だから弾翁は数学とか得意分野について語れば師匠でも一般社会常識はどちらかと言うと欠如してるよねって言われるんだ。実際に社会常識が欠如してるとかそういうんじゃなくて、そうと見做されても不思議じゃないような論立てをしすぎる。俺の言う通りにやれば貧困(或いは苦境)から抜け出せる的に話を進めすぎるんよ。

 それもまた論理思考の弊害なんだって部分を言わずしてただ薦めるから、こらまた強烈な詐欺ですなあって言われるんだ。
Posted by 野ぐそ at 2008年12月25日 11:12
 世の中の大半で下層に行き渡る人間てのは殆どが(必ずしも文系では無い)理系無知(システム不慣者)なんだけど、それに対して「勉強しろ」では遅いんだよ。そんなゆとりも知力もないヤツが殆どなんだ。そういう人々に対しては「頑張れ」とか「辛抱・我慢しろ」とか「身の程弁えて贅沢すんな」とか。そういう部分から言わないと駄目よ。それを言われて「その程度のことは言われんでもやってる」って怒るような人こそ、「じゃあ次逝けよ」ってだけのことなんだ。

 そこんとこ(それは当然お前らやっとけ式に)すっぽかして行き成り次のフェイズから話をするから、だったら専門領域の話だけやってりゃいいじゃねーかって言われるんよ。楽しちゃいかん。

 下すぎるからやんねえ的なことを思っちゃったら、そこが自分の限界だと思った方がいいよ。上昇志向な世界観を持つ人間が下を見ないのは、その時点で単なる怠慢だ。サボって楽して搾取しましょう言ってんのと大差ない。

 それじゃあ「下々」の私としては、まともに構う気にはならんね。
Posted by 野ぐそ at 2008年12月25日 11:16
一読はしたいかなと感じています
ただ、それが全てであるとは
言い切れない部分も内容としてあるでしょう

参考書的な本は
全てが正しいとして読むのではなく
普段使っていないアイデアを探しながら読むのが
アイデアを利用して疲れない方法だと感じます

使えるか使えないかは
読んだ人が決めればよいわけで
使うことでこういう参考書的な本は
良くも悪くも生きるだろうし
使うことでより良いアイデアが芽生えるのではないかなぁ

そんな風に感じました
言葉の旅人 池田修一

Posted by 池田修一 at 2008年12月25日 12:37
高校のときの英語のグラマーの先生(もちろん日本人)が、授業の終盤に
行う確認問題を「QUIZ」と言っていた理由がなんとなくわかりました。
確かに日本語で作文する授業はもっと増えていいですね。
同じく高校で「国語表現」というのがあったけど、先生の都合で作文では
なく、俳句中心の授業だった。
作文の授業って、間違いなく論理構築力や表現力、語彙力が強くなるけど、準備や採点で先生の負担がかなり大きそう。
先の英語による英語の授業と同様に、少人数でないと厳しいですね。
Posted by 俗人 at 2008年12月25日 13:26
弾さん、これは、ぜったいネタですよね。
Posted by 風竜胆@文理両道 at 2008年12月25日 19:44
野口悠紀「夫」じゃなくて野口悠紀「雄」だよ。
Posted by ほげお at 2008年12月25日 23:21
ほげおさん、
ありがとうございます。
#Amazonがそれでも検索で引っ掛けちゃうので気づくのが遅れました。
Dan the Typo Generator
Posted by at 2008年12月26日 02:41