2008年12月28日 11:30 [Edit]

所有欲のパラドックス

所有が幻想であることは、拙著「弾言」でも指摘した。

所有という幻想 - 池田信夫 blog
契約理論が教えるように、所有権は将来どのように資源を使うか予想できないとき、その残余コントロール権を特定の人が独占することによって権利の配分を効率化する次善のしくみだ。しかし情報のように共有可能な公共財では、このような所有権は意味がない。
弾言」 P. 173
根源的にモノを所有することはできないのです。なぜかと言えば、人間には寿命があるから。どんなモノでも、せいぜい80年レンタルにしかならないんですよ。

では、我々はどうすれば所有欲から解放されるのか。


皮肉なことであるが、そのために最もよい方法は、「使えきれないほど与えてしまう」ことだと考えている。

それが実際に起こったのが、インターネットの回線。

404 Blog Not Found:「良心」レストランは実在する
  • 「お腹いっぱい」の基準は、100MBps/戸
  • 2000円/月を切ると、金を払っているという感覚もほぼなくなる(念のために他の住戸の方にもたずねてみたことがあります)。
  • うつむきたくなかったら、並ぶ人の腹が破れるまで食わせてしまえ。

10Mbpsと100Mbpsの差は、10倍速という「量」だけではなかった。「一人では使い切れない」ことにより、「目一杯使わなきゃ」という気持ちから解放されるという質的な変化がそこにあったのだ。実際のところ、もし全員が目一杯使ったとしたら末端はとにかく幹線は耐えられないが、ネットの幹線が道路の幹線ほど危機的な状況になっていないのは、プロバイダーの尽力もさることながら、ユーザーの気持ちの変化が最も大きいのではないか。

もちろん、中にはそれでも目一杯使う人々もいて、そういう一部の人のために対策しようかしまいかという声は常にある。しかし今のところはそれに踏み切らなくても上手く行っているのは、全員が目一杯使っていないからで、なぜほとんどの人が目一杯使わないかといえば、彼らが「おなかいっぱい」だからだ。

では、

所有という幻想 - 池田信夫 blog
物的な資源も、クラウドのように事前に予約せずに自由に使うことができれば所有権で囲い込む必要はない。

となるか。私はその鍵を握るのは、ネットの回線で出来たことがエネルギーでも出来るかにかかっていると考えている。

残念ながら、今のところエネルギーはそこまで安くなっていない。油はまだ湯水のごとく使えない。いや、実は湯水のごとく使ってきたが、実はその費用は現金払いではなく、環境負荷という形による将来世代へのつけ払いだった。

所有権という「次善」の策を「最善」策に置き換えるために乗り越えなければならない壁が、エネルギーであると私は考えている。この当たりのことは「弾言」第四章をまるまる使って考察したのでここでは繰り返さないが、結論だけ言えばこれは超えられぬ壁ではない。わずか1億5000万km先には、あと50億年は尽きることがない核融合炉がすでにあるのだし。

話を少し引き戻す。所有の耐えられない軽さに気がつく最前の方法は、使い切れないほど所有してしまうことなのだろう。モズの速贄よろしく、使いもしないものを手元に置いておくのはあまり格好のよいものではない。しかし一度は速贄をしてみないと、それになかなか気がつけるものでもないのだ。

Dan the Shrike


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この記事へのコメント
>所有の耐えられない軽さに気がつく最前の方法は、
>使い切れないほど所有してしまうことなのだろう。

ケイロンまで何光年くらいまで近づいたですかね。
Posted by 北斗柄 at 2008年12月28日 12:15
Danさん、はっきり言って、何をおっしゃりたいのか、まったく理解できません。
Posted by うーん at 2008年12月28日 12:27
ネット回線というものから思考を開始してしまうと、わかりにくくなるけれど、例えば「モノ」や「カネ」というものを所有する場合、その所有欲求には「もういいやー」という所有に対する「飽き」とか「所有にかけるコストに対する所有がもたらす利得がこれぐらいのものだな。だからもういいや」という境地にはなかなか達しないんじゃないかなーと思いますね。

なぜなら「いざ」がありますから。ノーマルでない社会に備える習性が、人間にはある。

人間というか動物の根本に根ざした「飢えへの恐怖」は、この「いざ」とかに対して、他者に対してエクスクルーシブに自分が生き残れるという、所有がもたらす安心感から心が脱却できるかというと、それはそう簡単にはいかないと思いますよ。
Posted by reichan at 2008年12月28日 12:43
核融合炉,たぶんできたとしても、かなりの未来じゃないかな。
まずは、高速増殖炉をなんとかしないと。途上国の経済成長とともに、今後も伸び続けるエネルギー需要、エネルギー需給がどうなるのか考えるだけでも恐ろしい。
Posted by 風竜胆@文理両道 at 2008年12月28日 17:39
MXやWinnyが社会にもたらしたものはそれだったと思います。また所有欲が起きないものに関しては保管の為のコストのかからないレンタルで十分ですし。
Posted by キノコ at 2008年12月28日 23:05
>根源的にモノを所有することはできないのです。なぜかと言えば、人間には寿命があるから。どんなモノでも、せいぜい80年レンタルにしかならないんですよ。

 なるほど、弾翁が詐欺師か乞食レベルの妄言をするのは、こういうところに源泉があったのね。

 寿命がある限り管理保管する権利・義務のことを「所有」って言うんじゃないの? 目が白くなってからのことは知らんからどうでもいいけど、目が黒いうちに自分の愛着あるモノが他人の管理下に置かれて自分の意思が及ばないとなると、それは「もどかしい」でしょ?
 そういうもどかしさを解消する意味で自身の善管(?)権利・義務を最大限に尊重するのが「所有」だからさー。「せいぜい80年レンタルにしかならない」ことを称して「所有」って言うんだよ。

 何を言ってるの、このアホは? って感じ。
Posted by 野ぐそ at 2008年12月29日 08:22
興味深くもあります
これからのエネルギー問題に関しては
各国の悩ませる種でもありますし
核融合炉に関してはあまり知識が無いものの
廃棄物に関する問題や
保全に関する問題が
クリアにならなければなりませんし
課題としては大きいですね
何かの本か、テレビで太陽光発電に関する内容を
拝見させていただいたことがありますが
エネルギーの変換効率向上に努めているものに
依存する可能性もあるという話を見たか聞いたかしました

800文字以内ということで小分けします
Posted by 池田修一 at 2008年12月29日 13:21
所有欲の開放については
飽和状態を導き出し
選択の豊富さや供給量の多さで
所有することが当然であるかのように
するという考え方は
ある意味相反するところにありながら
妙に納得しておりました
ただ、なんとなく
意見に流される方も多いので
誰もが持っている物に対する
持っていないための所有欲
というものに関しては
難しいかもしれませんね

所有しようという意欲から
そのための手段として工夫する
その工夫から次の所有したいものに対する
努力をするということもあるのでは
そんな風にも感じています

変な話ではありますが
どんなに必要と感じていても
所有してしまうと
一気に熱が覚めることがあります
物だけでなく人間関係にもあると思います
最初から与えられるもの
もしくは、無償で与えられるものには
ありがたみを感じなくなるという
感覚の麻痺もあります

あまり方法としては好きではありませんが
所有欲をコントロールすることよりも
所有させてコントロールするという方法は
近隣の国で行われていた方法です
(書けません国名なんて)
もしくは今も行われているのかもしれませんが

所有欲を削ぎたい分野においては
どちらかというと
競争力の激減に伴う技術力の停止を覚悟で
同じものを同じだけ振り分ける
偽装的平等意識を利用するという方法も
あるのではなかろうかと感じていました

そんな方法はどちらかというと
進めて欲しくないやり方ではありますが
拝読させていただき
そんなことを感じておりました
2008/12/29
池田修一
Posted by 池田修一 at 2008年12月29日 13:23
お母さんが(見えなくても)いつもそばにいるということがわかれば(信じられれば)、赤ちゃんは(無闇に)泣かなくなる、という話を思い出しました。
「お金持ち」の子供ががつがつしないのも、そういうこと。。。
ちょっと話がずれてます?
Posted by う at 2009年01月06日 18:25
>核融合炉,たぶんできたとしても、かなりの未来じゃないかな
核融合炉と書いてあるのは、太陽のことですよ。
Posted by boku at 2009年01月15日 18:57