2010年05月03日 03:15 [Edit]

諸君、これが現実だ - 書評 - 増補版 スペースシャトルの落日

JSEA 日本宇宙エレベーター協会の年末総会兼忘年会が拙宅で開催された際に、ご足労いただいた著者にサインを頂いた。

初出 2008.12.30 増補版のちくま文庫化を受け2010.05.03更新
松浦晋也のL/D: 宣伝:新著「スペースシャトルの落日」が5月20日に発売されます
宇宙旅行の夢を皆に与えてくれたスペースシャトルは、実際には世紀の失敗作だった。宇宙開発の未来を拓くものとして世界に喧伝されたスペースシャトルの真の姿とその背景、その影響と今後の宇宙開発において日本が進むべき道を探る。

宇宙開発に興味がある人に留まらず、巨大プロジェクトに興味がある人なら、絶対読んでおくべき一冊。

著者にのみ可能な鬼手仏心が、ここにある。


本書「スペースシャトルの落日」は、宇宙ジャーナリストとしては日本でも第一人者である著者が、スペースシャトルの功罪を外の人として書いた一冊。

目次 - Amazonより
序章 二度と間違えないために
第1章 スペースシャトルはこんなもの
第2章 スペースシャトルが起こした事故
第3章 そもそも間違っていた設計コンセプト
第4章 世界中が迷惑し、だまされた
第5章 スペースシャトルの次に来るものは

国家プロジェクトとして見たスペースシャトルが失敗作であることは、単純に費用だけ見ても瀬戸大橋や青函トンネルに劣るものではない。このこと自体は、宇宙に興味がない人にもよく知られている。

しかし、本書の鋭さは、ある一点において、スペースシャトルが日本の「採算度外視」プロジェクトのどれよりもひどい失敗だったことを指摘している点にある。

世界中を、だましてしまったことだ。

今や有人宇宙飛行では世界最先端となったロシアですらだまされてブランを作った。それだけならまだしも、有人宇宙飛行に手を出していないESAやNASDA(現JAXA)もだまされていたと著者は喝破する。

彼らの主力ロケットの第一段エンジンに液体水素-液体酸素エンジンを採用したことである。

なぜそれが「だまされたこと」になるのかは本書をご覧いただくとして、言われて見れば確かにそうである。化学ロケットとしては最大の比推力を発揮する理想のエンジンは、実に気難しいエンジンでもある。H-IIのLE-7開発では、日本の宇宙開発ではおそらく唯一の死者まで出している。

「それでも開発に成功したのだからいいのではないか」という意見も支持したいし、実際私自身本書を読了するまで支持していたのだが、それが「スペースシャトルの呪い」であり、そしてケロシン-液体酸素エンジンと比べていかに高くつくかという本書の指摘には納得せざるを得ない。

それでは、なぜ世界中がだまされていたのか。

それが、権威主義と官僚機構の恐ろしさなのだ。

スペースシャトルとは、世界中の宇宙関係者にとって、まさに Too Big to Fail だったのだ。

「NASAがやってるんだから間違いない」。これに抗える人がどれだけいるだろう。

P. 233
告白しよう。私もあっさりとだまされていた。

そう、著者も含めて。

英語で"Rocket Scientist"というのは、実際のロケット科学者のみならず、「最も頭のいい人」を指す比喩でもある。「そういう人たちがやっていることなら間違いない」という呪縛がいかに強いかといえば、一機のみならず二機も合計14名ものクルーの命とともに事故で失った今でさえ口にはばかるほどである。

正直、著者にここまで言われても、まだNASAを信じたい自分がいる。スペースシャトルが失敗作であることを認めてもなお、NASAの挙げてきた功績はあまりに大きい。しかし、アポロ後のNASAの成果を見ると、Voyagerのように「シャトルがなくても挙げられた」ものどころかGalileoのように「シャトルを使わなければもっとよかった」ものまであり、「NASAがよかったからスペールシャトルもよいはず」ということには全くならない。

P. 235
何度もあちこちで書いているのだが、ここでも繰り返そう。「自分の頭で考えよう」。自分で考え、自分の手と足で目標を目指すなら、宇宙は決して遠くない。

宇宙だけではなく、地上でも成り立つ教訓ではないか。

Dan the Prisoner of the Gravity Well


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書評リンク - スペースシャトルの落日~失われた24年間の真実~
スペースシャトルの落日~失われた24年間の真実~【書評リンク】at 2008年12月30日 23:37
404 Blog Not Found:諸君、これが現実だ - 書評 - 増補版 スペースシャトルの落日
404 Blog Not Found:諸君、これが現実だ - 書評 - 増補版 スペースシャトルの落日【】at 2012年01月16日 10:43
この記事へのコメント
そろそろ、今年の総括、お願いしたいです。
Posted by まいった at 2008年12月30日 02:55
danさん、先日はありがとうございました。
で、
「翼…? あんなものは飾りです!」
「偉い人には、それが分からんのですよ」
「認めたくないものだな。──過ちというものを」
ああ、わたくしも本を持っていけばよかった……。
Posted by tom-kuri at 2008年12月30日 02:55
しばらくこのブログ読んでみたけど、Danさんの書評は媚売ってる感じして気持ち悪いよね。Danさんのブログキャラとしては信念をもった人のような気がしてたんだけど、献本ばかり評してアフィリエート収入期待してるから、はっきりいってそこら辺の太鼓持ちと全く変わらない。こんな事後評価のズルい難癖本にまで納得させられるなんて、失望しました。

Danさんは、既にテレフォンショッピングレベルの広告屋さんに成れ果ててます。
Posted by うーん at 2008年12月30日 05:28
シャトルが全盛のころ、米軍が退役ICBMにブースターを付けて自前で衛星を打ち上げていたりしたのをpgrっていたけど、いまからするとこーいった内情を知ってたんだろーな。
Posted by t_f at 2008年12月30日 05:31
シャトルは大失敗というのは『多様化世界』で読んだ。
80年代にはもう、軍関係も科学関係もシャトルを憎悪していたという感じだったようですね。
Posted by いんけろにうむ at 2008年12月30日 09:04
>Danさんの書評は媚売ってる感じして気持ち悪いよね。
ここんとこ同意。
特に勝間本とか勝間本とか、あと、勝間本とか。
Posted by A false charge at 2008年12月30日 10:41
素人の書評に文句つけても…
Posted by 7743 at 2008年12月30日 16:12
スペースシャトルが「詐欺」だとしたら、今後のグローバルな海洋開発プロジェクトで同じように、世界中がアメリカに「だまされないで」ほしいものだと思います。

海洋開発こそ、「瀬戸大橋」や「青函トンネル」が格好の前例なのでしょうから。
Posted by h7bb6xg3 at 2010年05月03日 10:08