2009年01月05日 18:30 [Edit]

「内向き」で問題ないのは売文家ぐらい

「売文」という、せいぜいノキア一社の売り上げにも満たない市場に関しては、これは事実。しかも「現時点においては」という限定付きで。

「内向き」で何か問題でも? (内田樹の研究室)
日本はまるで事情が違う。
日本には巨大な国内市場がある。
国内市場限定で製品開発しても、売れればちゃんともとがとれる規模の市場が存在する。

そういう市場が二重の意味で少なく小さくなってきたから問題なのだ。


一つは、フラット化。

「国内市場限定」だと思っていたものが、実はそうでないことを売る方も買う方も知ってしまったのだ。

私がはじめてアメリカに行ったのは1980年代のことだが、その当時ですら、ディズニーランドの七人の小人のお土産は"Made in Japan"だった。今だったらそんな贅沢な品はないだろう。"Made in China"に決まっている。

その国の文化が絡んでいる商品ですら、「国内市場限定」とは言えないのだ。

それでも、「仏像は作れても魂は吹き込めまい」というあなた、甘い甘い。

"Catalyst: Accelerating Perl Web Application Development"というのは、ばりばりの英語本であるが、著者の Jonathan Rockway によると、編集者はインドにいて、ずっとmailでやりとりしていたそうだ。

英語圏は、「限定できるような国内市場」がないところまで来ている。

日本語圏がまだこの分野で「国内市場限定」なのは、むしろ皮肉にも英語圏ほど大きくないのが原因だ。もし日本語圏がもっと広かったら、とっくに日本より安い国に製造が移っていただろう。それでもコールセンターが一部大連に移っているようではあるが。

「内向き」で何か問題でも? (内田樹の研究室)
世界標準で製品開発するのと、国内限定で製品開発するのでは、コストが違う。

こうも無知でいられるのが、うらやましい。

違うのである。製品の開発コストというのは、国内限定でも世界標準でもさほど変わりはないのである。ハイテクであればあるほどそうだ。ソフトウェアに至ってはその差はゼロに近い。

コストの差がさほどないのであれば、市場は大きければ大きいほどよい。一番よいのは、世界市場ということになる。そしてこの条件は、フィンランドも日本もアメリカも変わるところがない。

そしてもう一つは、少子高齢化。

ただでさえ「国内市場限定」だと思われていたものがそうでないことがバレているのに、肝心の国内市場は小さくなる一方なのだ。それが去年になって顕著になってきたというのがマスメディアだというのも皮肉なものではあるが、メディアという、ある意味最も内向きの産業ですら、まだ人口減少が本格化していないうちから問題が顕在化しはじめたところに、この問題の深刻さがある。

これは例外的に「幸運」なことなのである。

そう。例外的に「幸運」。

その例外的に「幸運」に頼って生きていられるなら。政治も経済も不要である。この国において後者はとにかく前者が貧弱だった理由もそこにあるのだろう。

だが、わが日本にはせっかく世界でも希なる「内向きでも飯が食えるだけの国内市場」があるのである。

それが風前の灯火となりつつあるのは、今まで見て来た通り。

そこでちまちまと「小商い」をしていても飯が食えるなら、それでいいじゃないか。

そんな小商いでちまちまと食えるのは、実のところ、1/100もいればいいほうなのではないか。

残りは大商いしている人のおこぼれに預かっているというのが実像に近い。

「おまえの言うことはさっぱりわからんね」とアメリカ人にいわれようと中国人にいわれようとブラジル人にいわれようと、私はI don’t care である。

彼らにしてみれば、たとえ私が「もう食うものもありません。なんとかしてください」と言おうと I don't care と言い返せばすむ。それ以前に"I don't understand what you're saying"とわからぬふりをされるのがおちである。"None of our business" はおたがいさまなのだから。

「内向き」でいられるのは、外に向かって体を張っている人たちあってのこと。

大きな国ほど、それがわかっていない人が多いというのは確かなようだ。

Dan the One in Six point Seven Billion


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今の日本のままで「内向き」にしてしまうとジリ貧になるとは思うのだけれど、食料問題とかエネルギー問題とかを人口を減らすとかじゃなくて、技術や効率化で解決し、日本の中で回せるような仕組みができたら凄いことじゃない?と思う。日本がそれを確立できたら、その仕組み
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この記事へのコメント
さすがの内田先生でさえ、「論争」したい気分のときもあるのだろう、と微笑ましかった。

足元を見よ
http://blog.tatsuru.com/2009/01/13_1136.php
Posted by Kei at 2009年01月13日 18:27
>IQの問題としかいえません
>IQが高い文章です

ちょっと笑ったwどんだけIQ連呼すんだよw
IQの本当の意味わかってんのか?
Posted by 通りすがり at 2009年01月13日 00:57
日本は輸出立国!
それには円安!円高は悪!
とにかく政府は円安誘導に徹し、日本の信用を
失墜するようなことも上手に連発し円が売られるように
しなければならない!

とまぁこんな画一的な考え方しかないの?

というのが内田氏の主張。

これに対する異論が批判文でそれ以外は全部妄言。
内田氏の話の枝葉のとらわれて混乱するとは情けない。
Posted by 冷静に at 2009年01月12日 16:03
「内向き」で何か問題でも? をじっくり読みましたが、このエントリを含め批判しているのをいくつか読みましたがびっくりしました。
なんというかそもそも「批判」になってないからです。
完全に的をはずしていて、どうして?って悩むほどです。
これはIQの問題としかいえません。

今回内田樹という人を初めて知って他の文章も読みましたがかなりIQが高い文章です。これをちゃんと読めるIQの人って少ないと思いますね。
批判者方のIQは平均的だと思いますが、こうした人たちが文意(論理構造)を誤って理解してしまうのですから。IQ調べる意味で入試に使える文章ですね。
Posted by nao at 2009年01月10日 23:19
この内田さんは、日本で入手出来る大半の消費財・食材・素材が「何処から来ているか」真剣に考えた事があるのですかねー?

全てとは言わずとも、生活や生産の多くを低コストで支えているのは「輸入」のお陰ですよ?

そのシステムを根幹で支えている「為替トレード」について真剣に考えた事があるんですかね?

「内需」と「輸入」だけで未来永劫喰っていけると思っているのだとしたら、おめでたい限りです。

とある業界(興味がある人は当ててください)は10年前は日本勢が世界市場の7割を独占していましたが、偉いオッサン達の「内向き」な姿勢がたたり、10年後の今は逆転して欧米勢が7割を独占しています。

本当におめでたい限りです。
Posted by eakas at 2009年01月08日 07:55
続き
また、例えば、ほぼドメスティックと思われるような不動産業でも、大都市の開発案件などは外資の大胆な介入が無ければ資金調達も契約仲介もできないケースが多く、決して内向きだけでやっていける時代ではない。また、外資が東京などに投資するのも、東京などに集中するグローバル企業が国際競争で成長することを見込んでこそで、人口減少する国内のみに目を向けていたら、絶対に投資対象になどならない。まあ、今はその外資が減ったせいで壊滅的になっているわけだが、これ以上外資を逃がしたらさらに悲惨になる。町の不動産屋や土建屋でさえ、地価の動向に影響を受けるから、無関係ではいられない。

「小商いで食べている」ように見えても(町の不動産屋や土建屋のように)否応無く外向きの世界に強固に結び付けられてしまっているわけで、「外に向かって体を張っている人」がいなくなって国際的な評価が下がれば、たちまちに「小商いで食べている」ように見える人たちも影響を受けるのですよ。
Posted by X at 2009年01月06日 23:57
> "そんな小商いでちまちまと食えるのは、実のところ、1/100もいればいいほう"どころか、実はほとんどの人がその小商いで食べているのです。

そら間違ってますよ。
トヨタやホンダが国内で自動車売っても「貿易依存度」には反映されないが、トヨタやホンダの技術・品質・価格は輸出を通じて国際競争で磨かれたもの。トヨタやホンダのような「外に向かって体を張っている人」は同時に国内でもビッグプレイヤーであって、その力は内田式内向法では絶対に養われない。
自動車であれば、もしトヨタやホンダが内田式内向法による貧弱な競争力しか持たなければ、現代(韓国)とか中国とかインドとかにシェアを持っていかれて、国内の産業はより空洞化する。今回、首切り対象になった期間工や派遣工の何倍もの期間工や派遣工が職を失うだろう。
逆に鎖国して自動車を禁輸にすれば(そんなことをすれば石油すら輸入できなくなるだろうけど)、自動車は国内だけの閉鎖的・独占的市場となって、品質が落ちて価格は逆に高くなり、全体としての需要は落ちてさらに期間工や派遣工が職を失う。
Posted by X at 2009年01月06日 23:56
ここまでくると「ためにする批判」のような気がする。
ちょっとしつこすぎる。内田樹もおかしいことを言うけど
もっとおかしい評論家や学者はたくさんいるだろう。
何か個人的に恨みでもあるのかと勘ぐってしまう。
Posted by 口内炎 at 2009年01月06日 21:20
いつも面白いんだが、このエントリは説得力にかけてるような。。。調べてなさそーなモノ言いと、テキストもなんかどっかの落書きみたいな不明瞭さが気に掛かる。ワザと?”内向き”に対する反論キーワードが”フラット化”ってのが今ひとつイけてないです。
Posted by danの負けだろ at 2009年01月06日 00:06
 2006年のデータブックオブ・ザ・ワールドから貿易依存度をおおざっぱにまとめると、

10%前後の国:アメリカ、日本、インド
20%前後の国:イギリス、フランス、ロシア
30%前後の国:ドイツ、中国、韓国、タイ

 のように分類されます。日本は世界的にみてももともと貿易依存度は低いのです。
 "そんな小商いでちまちまと食えるのは、実のところ、1/100もいればいいほう"どころか、実はほとんどの人がその小商いで食べているのです。むしろ、外に向かって体を張っている人こそ少数であり、そうした人が日本経済に貢献しているのは事実ですが、その割合が過大に評価されて、国内をおざなりにしているから、日本の経済は回復しないのです。

 一度、弾さんの考える産業が日本経済のどの程度を占めているのか、全体の比率を計算してみるとよいのではないでしょうか?
Posted by akira at 2009年01月06日 00:04
内田氏は文章も論理もうまいが世間知らず。
本人は自覚していないようだが・・・
Posted by witty_fool at 2009年01月06日 00:01
とはいえ、彼の齢なら縮小が顕在化する前に逃げ切れる。
Posted by 団塊さんにも困ったもんだ。 at 2009年01月05日 23:21
内田先生は全く大丈夫ではない「文系」教員のうちのおひとり
Posted by K at 2009年01月05日 23:12
内田樹は感覚が10年くらい遅れている気がする、大丈夫なのだろうか?
Posted by s at 2009年01月05日 22:34
内田樹らしい思考だと思うが、その意見の是非は読者の判断に委ねられるところだろう。ただ、問題意識は共有しているんだろうね。今後の日本経済の方向性をどの方向に向けるかという問題意識だろうね。国内に限っていえば、パイをどのように分配するかの話だね。パイを台形に見立てると、上底と下底の高さが高いのが格差が大きくて、低いのが格差が小さくなるんだろう。この分配は公平性の問題かな。それから、国外に目を向ければ、製造業か金融業かじゃないかな。製造業は工場が海外移転して現場が減っているし、国内の労働者人口も減っている。みすみす外国に渡すのはもったいないけれど、造船業と同じでいずれは外国が強くなるだろう。たとえ、自動車でも。とりあえず、日本は金融業に挑戦してみたらいいのでは?国際的に活躍する金融業がいないのだから、逆に考えれば、まだ進出する余地がある。ただし、他の先進国のような優位性はないけれど、まあ、仕方あるまい。いずれにしても、産業が移り変わってゆくのは近代文明の原則じゃないかなぁ。現に他の欧米先進国がそうじゃないのかな。後は、少子化を推進することで少ない職数に人口を合わせるしかないのじゃないかな?たぶん、少子化は止めるのではなく推進するようになるんじゃなかろうか?高齢者対策としてはインフレにするとか…。長生きしたからいいんじゃないかなぁ。となると、年金改革は今度こそ積立て方式に変えた方がいい。ともかく、先進国の末路は少子化して小国化することじゃないかな。十分、充実した国の生涯をまっとうしたんじゃないの?
Posted by N at 2009年01月05日 22:04