2009年01月24日 00:05 [Edit]

心を射抜く一冊 - 書評 - 六法で身につける 荘司雅彦の法律力養成講座

日本実業出版長谷川様より献本御礼。

初出:2009.01.22; 販売開始まで更新

これだよ、これ!

こういう法律の本を待っていた!

法律というものを知りたい人が、最初に読むべき一冊。

すでに読んでしまった本のことをきれいさっぱり忘れてでも、そうすべき一冊。


本書「六法で身につける 荘司雅彦の法律力養成講座」は、「書評 - 最短で結果が出る超仕事術」ならびに「嘘を見破る質問力」が、いよいよ本職である法律について書いた渾身の一冊。間違いなく、著者の最高傑作であり、今後の一般向け法律本のあり方を根底からくつがえすことになる作品。

目次 - Amazonより
第1章 六法ってなんだあ?
1 六法全書の役割
2 法律の基本となる六つの法律
3 六法も分量が多いけど……
4 法律センスを身につける六法の使い方
第2章 法律のキモ「基本的人権の尊重」
1 すべての法律に通じる大原則
2 国民主権と平和主義は偉くない?
3 憲法はお上に対する命令
第3章 憲法の授業―バランス感覚を身につける―
1 統治機構と人権の意義
2 人権規定をどう読むか?
3 対象によって違憲判断の基準が異なる
4 憲法9条の問題
第4章 刑法の授業―論理力を身につける―
1 刑法を知るための四つの練習問題
2 刑法の大原則「罪刑法定主義」
3 刑法のキモ「総論」
第5章 民法の授業―観察眼を養う―
1 民法は私法の一般法
2 民法の体系
3 誰が権利を持っているのか?
4 権利の客体の種類
5 四つの原因から発生する権利の主体同士の関係
第6章 商法の授業―ビジネス感覚を磨く―
1 商法の意味
2 会社法は商法から独立して存在する
3 手形と小切手
4 商法総則のひとつ商行為
第7章 刑事訴訟法の授業―トラブルから身を守る―
1 刑事訴訟法の最大の理念
2 捜査が開始されるきっかけ
3 被疑者を起訴する手続き
4 刑事裁判の進行
5 判決に不服がある場合
第8章 民事訴訟法の授業―争いを切り抜ける―
1 民事訴訟の提起
2 裁判所の審判の対象「訴訟物」
3 裁判所は争っている部分以外は判断できない
4 民事訴訟法の難問「要件事実」
5 刑事訴訟とのちがい

これまでの一般向け法律本というのは、いわばFAQだった。相談内容があり、それを法律家がどう解釈するかという Q & A の羅列。確かにわかりやすいし即座に役に立つけど、はっきり言って対処療法。「法」というヤマタノオロチどころかヤオヨロズノオロチの頭をいくらつぶしても、焼け石に水という感じが常につきまとっていた。

本書は、違う。いきなり法の心臓を射抜き、「法」という怪物の身動きを止めた上で、じっくり各論を括弧撃破して行く。本書に登場する法律は実に少ないのに、憲法、刑法、民法、商法、民事訴訟法、そして刑事訴訟法の六法のエッセンスをすべて網羅できたのは、この「核心から委細へ」という大胆なアプローチがあってこそだ。

今までの法律本というのは、「偶数って何?」という質問に「2でしょ、4でしょ、6でしょ....」と答えていたようなものだ。はっきりいって「算数」である。本書では、最初に「2で割り切れる数」とはっきり答える。「数学」的なのだ。

それでは、本書全体を貫くロンギヌスの槍である、法の大原則とは一体なんだろうか。

基本的人権の尊重、である。

著者に自ら語ってもらう。

P. 18
個人の権利は最大限尊重されるべきものであり、各個人は他者の権利をおかさない限りいかなることをも行う自由を有する
ということです。簡単でしょう。

よって、最重要の法である憲法でも最重要なのは、第十三条ということになる。

P. 41
そして、その憲法の中で一番偉い条文は憲法13条です。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

そしてこう続ける。

 この場合の「公共の福祉」というのを「他者の権利」と考えれば、
個人の権利は最大限尊重されるべきものであり、各個人は他者の権利をおかさない限りいかなることをも行う自由を有する
 ということになりますよね。

そう。著者は「公共の福祉」を「他者の権利」と言い換えてよいと言い切っているのである。

ここまではっきりと言い切ってくれた法律家は、他に居なかったのではないだろうか。

私が以前

404 Blog Not Found:本当は怖い日本国憲法
憲法12条に照らし合わせれば、何をしても「公共の福祉」にならないなら「権利の濫用」認定されかねない。もちろん第21条(言論の自由)も。

という疑念を発したのも、そこまでの自信がなかったからである。「そうじゃないよ」というコメントやトラックバックもたくさん頂いたが、今ひとつ納得できなかった。いずれもここまですっぱりと言い切ってなかったからである。

とはいうものの、私は100%納得したわけではない。「公共の福祉」と「他者の権利」が不一致な例もあまりに多く、そしてそういう場合には「公共の福祉」の名の下に個人の権利がないがしろにされてきた例もあまりに多く見てきたし、その逆に、明らかに他者の権利が損なわれているのに個人の権利がまかりとおっている例もこの国にはあふれているのを知っているからだ。

しかしそれは、著者の目にしてみれば、我々の法律力が足りないからそうなる、ということになる。例えば憲法第九条。これもまた「基本的人権の尊重」から導くことができることを著者は示した上で、

P. 71
もはや、自衛隊を合憲とするのは、今の憲法では不可能でしょう。

と言い切っている。この状態の放置は、まさに法律力の欠如の結果なのである。

はじめに
「法律力」とは私の造語で、法的思考力と法解釈力を併せたものです。

いいかげん「○×力」の乱造は勘弁してほしいという立場の私だが、この「法律力」は全面的に支持する。我々日本国民に足りないのが、これだ。「個人の権利は最大限尊重されるべきものであり、各個人は他者の権利をおかさない限りいかなることをも行う自由を有する」という法律力の源泉がその力を最大限発揮出来ていない理由もそこにあるのだから。

もっと法律力を!

Dan the Free Man, de Facto and de Jure


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小飼弾氏のhttp://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51168974.html:title=このエントリ]とかこのエントリを読んで、『法律力養成講座』は読んでいないが、「法律」と「法律力」について、現役法学部生として2、3気になったことを*1。   1.「常に公共の福祉のために」で
[法律]法律力について私が知っている二、三の事柄【一法律学徒の英語と読書な日々】at 2009年01月23日 01:51
心を射抜く一冊 - 書評 - 六法で身につける 荘司雅彦の法律力養成講座 -404 blog not found 私が以前 404 Blog Not Found:本当は怖い日本国憲法 憲法12条に照らし合わせれば、何をしても「公共の福祉」にならないなら「権利の濫用」認定されかねない。もちろん第21条(...
論ずる対象の理解が不充分なうちに自分の言いたい意見に沿う形で対象を理解しようとするから無理があるんじゃないかなぁ。【まこさま日記。】at 2009年01月23日 23:06
六法で身につける 荘司雅彦の法律力養成講座(2009/01/24)荘司 雅彦商品詳細を見る  【 目 次 】   第1章 六法ってなんだあ?   第N..
六法で身につける 荘司雅彦の法律力養成講座 荘司 雅彦(著)【Makeup Life! メイクアップ・ライフ!】at 2009年03月01日 02:18
この記事へのコメント
括弧→各個?

初指摘
Posted by ヤマダ at 2009年01月22日 20:55
自衛隊は現代の検非違使なんですよ。令外の官。
Posted by mikura at 2009年01月22日 23:30
一番大事なものは第一条に来るものでしょう。

大日本帝国憲法および日本国憲法の第一条が言及しているのは?


9番目とか13番目とか、本当に大事だったら書く順番を間違えてる。
Posted by コーエン at 2009年01月23日 00:14
いや「いつ」それが「大事だと認識されていたか」によるだろw
法律は今作られたわけではない
Posted by at 2009年01月23日 00:25
条文は重要度順に配置されているわけではない。
Posted by   at 2009年01月23日 03:53
基本的に13条を重視する見解に賛成です。
ただ、『日本国憲法』松井茂記(有斐閣)46頁、313頁
『憲法の争点』(第三版)(有斐閣)252頁
に「個人の尊厳」を中核に置く通説への批判があるようです。
Posted by 法学徒 at 2009年01月23日 08:45
一度、最高裁判所民事判例集や判例時報・判例タイムス等の判例集で
行政訴訟事件の判決文を読まれることをお勧めします。
如何に「公共の福祉」が司法が行政を擁護するのに都合の良い単語で
あるかが、賢明な貴兄ならお分かりになると思います。
Posted by 一読者 at 2009年01月23日 16:27
「公共の福祉」を「他者の権利」と読み替えることが許されるとすると、直ちにリバタリアンへの道を転げ落ちるという懸念があります。
Posted by Kei at 2009年01月23日 18:19
ヽ( ・∀・)ノ● ウンコー
Posted by at 2009年01月24日 03:24
この記事へのコメント
括弧→各個?

初指摘
Posted by ヤマダ at 2009年01月22日 20:55
自衛隊は現代の検非違使なんですよ。令外の官。
Posted by mikura at 2009年01月22日 23:30
一番大事なものは第一条に来るものでしょう。

大日本帝国憲法および日本国憲法の第一条が言及しているのは?


9番目とか13番目とか、本当に大事だったら書く順番を間違えてる。

Posted by コーエン at 2009年01月23日 00:14
いや「いつ」それが「大事だと認識されていたか」によるだろw
法律は今作られたわけではない
Posted by at 2009年01月23日 00:25
条文は重要度順に配置されているわけではない。

Posted by   at 2009年01月23日 03:53
基本的に13条を重視する見解に賛成です。
ただ、『日本国憲法』松井茂記(有斐閣)46頁、313頁
『憲法の争点』(第三版)(有斐閣)252頁
に「個人の尊厳」を中核に置く通説への批判があるようです。

Posted by 法学徒 at 2009年01月23日 08:45
一度、最高裁判所民事判例集や判例時報・判例タイムス等の判例集で
行政訴訟事件の判決文を読まれることをお勧めします。
如何に「公共の福祉」が司法が行政を擁護するのに都合の良い単語で
あるかが、賢明な貴兄ならお分かりになると思います。
Posted by 一読者 at 2009年01月23日 16:27
「公共の福祉」を「他者の権利」と読み替えることが許されるとすると、直ちにリバタリアンへの道を転げ落ちるという懸念があります。
Posted by Kei at 2009年01月23日 18:19
Posted by at 2009年01月24日 03:29
この記事へのコメント
括弧→各個?

初指摘
Posted by ヤマダ at 2009年01月22日 20:55
自衛隊は現代の検非違使なんですよ。令外の官。
Posted by mikura at 2009年01月22日 23:30
一番大事なものは第一条に来るものでしょう。

大日本帝国憲法および日本国憲法の第一条が言及しているのは?


9番目とか13番目とか、本当に大事だったら書く順番を間違えてる。

Posted by コーエン at 2009年01月23日 00:14
いや「いつ」それが「大事だと認識されていたか」によるだろw
法律は今作られたわけではない
Posted by at 2009年01月23日 00:25
条文は重要度順に配置されているわけではない。

Posted by   at 2009年01月23日 03:53
基本的に13条を重視する見解に賛成です。
ただ、『日本国憲法』松井茂記(有斐閣)46頁、313頁
『憲法の争点』(第三版)(有斐閣)252頁
に「個人の尊厳」を中核に置く通説への批判があるようです。

Posted by 法学徒 at 2009年01月23日 08:45
一度、最高裁判所民事判例集や判例時報・判例タイムス等の判例集で
行政訴訟事件の判決文を読まれることをお勧めします。
如何に「公共の福祉」が司法が行政を擁護するのに都合の良い単語で
あるかが、賢明な貴兄ならお分かりになると思います。
Posted by 一読者 at 2009年01月23日 16:27
「公共の福祉」を「他者の権利」と読み替えることが許されるとすると、直ちにリバタリアンへの道を転げ落ちるという懸念があります。
Posted by Kei at 2009年01月23日 18:19
Posted by   at 2009年01月24日 03:30
「公共の福祉」=「他者の人権」という図式は、憲法学ではいわゆる通説とされていて、どの教科書にも書いてあります(一元的内在制約説といいます)。
憲法に興味がおありでしたら、一応は専門書をひも解いてちゃんと勉強なさった方がいいと思います(煽りとかではなく、真剣に)。
現行憲法初期の判例が、いかに都合よく公共の福祉を濫用してきたか(何も理由を説明せず、「このような制約は公共の福祉の範囲内だ」と言って終わらせたりします)。
それに対して学説が、以下に公権力による人権の制約を限定しようと腐心してきたか。そして、その結果いかにして内在制約説が生み出されたのがよくお分かりになると思います。
もっとも、最近では、この図式ではすべての人権制約を説明できないのではという問題点も認識されています。例えば、「町の景観を維持するために広告の掲示を制限する」なんていう場合を正当化できないのではないかという点です。
考えてみたらいかがでしょうか。
ちなみに、これらの話は、大学1年性で習うレベルの超基本的な知識ですので、書店で専門書を立ち読みすればどこにでものってると思います。
Posted by 法学徒 at 2009年01月26日 15:29