2009年02月20日 18:30 [Edit]

assert(yourself); - 書評 - 断る力

今回は献本ではなく、妻が購入したものを先に読ませてもらった。

勝間和代公式ブログ: 私的なことがらを記録しよう!!: 2/19発売新刊、文春新書「断る力」
今回の本のテーマは
「アサーティブ」
です。アサーティブだとわかりにくいので、断る力、という表現にしました。

うーむ、これはヤラレタ。8割のうれしさと、2割のくやしさ。

なぜなら、assertion に最も縁があるのは、プログラマーだからだ。


本書、「断る力」の書名は、"assertiveness"を著者が「超訳」したもの。

目次 - 目次&はじめに|文藝春秋|勝間和代『断る力』|特設サイトより
はじめに
第1章 総論 「断る力」の圧倒的な効用を理解する
第2章 ホップ 自分の揺るぎない軸を持つ
第3章 ステップ 相手への建設的な影響力を発揮する
第4章 ジャンプ 「断る力」で、自分と周囲の好循環を作る

それでは assertiveness とはなんだろう?

まずは語幹である assert がどういう意味か見てみる。

Oxford American Dictionary (on Mac OS X Leopard)
assert |əˈsərt|
verb [ reporting verb ]
state a fact or belief confidently and forcefully

直訳すると、「事実や信念を、地震をもって力強く主張する」となるだろうか。

破顔せずにいられなかったのは、プログレッシブ英和中辞典の表記。

プログレッシブ英和中辞典 (on Mac OS X Leopard)
  1. …を断言[力説]する, 言い張る;…が(…であると)断言する
  2. 〈要求権利などを〉強く主張する, 擁護する
  3. ⦅〜 -self⦆〈人が〉自己(の権利)を主張する;思っていることをはっきり言う;〈人が〉自分を強く出す;〈物事が〉おのずと明白になる[外に現れる]
  4. 〈ある物(の存在)を〉仮定する.

弾言」は確かに assertive な本ではある。

しかし、なぜ「主張」が「断る」になるのだろうか。ここに著者の冴えがある。

著者は、 assert が何なのかという定義ではなく、 assert がどのようになされるのかという実践に着目したのである。我々はものごとをどのように assert しているのだろうか。

通らぬ主張を、断ることをによって、 assert しているのである。

テストの重要性を知っているプログラマーは、プログラミングというのが assertion であることを頭でも身体でも知っているはずである。あまりにそうなので、assert()という機能は実に多くのプログラミング言語に装備されている。以下はC言語の例。プログラマーでなくても{}が何を意味しているかはおわかりいただけると思う。ちなみにsqrtは平方根を、*はかけ算をそれぞれ意味する。

[Run via codepad]
#include <stdio.h>
#include <assert.h>
#include <math.h>
int main(int argc, char **argv){
    assert( sqrt( 42 * 42) == 42 );
    assert( sqrt( -1 * -1) == -1 );
    return 0;
}

これをコンパイルして実行すると、二番目のassert()で止まってそれ以上先に進まない。

t: t.c:7: main: Assertion `sqrt( -1 * -1) == -1' failed.

そう。sqrt( -1 * -1) == -1という事実に反する文言(statement)を断ったのだ。

今度はソースコードを以下のように書き換えてみる。ちなみにabsは絶対値を意味する。

[Run via codepad]
#include <stdio.h>
#include <assert.h>
#include <math.h>
int main(int argc, char **argv){
    assert( sqrt( 42 * 42) == abs(42) );
    assert( sqrt( -1 * -1) == abs(-1) );
    return 0;
}

今度は、無事全ての「主張」が「通った」。

assertというのは、まさに「だめなものを断る」ことだというのがはっきりとわかるではないか。

なぜ断るのか?

断らないためである。断ってはいけないものを。

assert は affirm (肯定) でもなく、 accept (受容)でもなく、ましてや negate (否定)でもない。しかしその実践にはどちらも含まれている。よって assert とは「断定」することであり、assertiveness は「断る力」となるのである。

本書は著者による「断定のすすめ」であると同時に、著者が今までなにをどう断定し、その結果何を得てきたかを紹介した「断定録」でもある。その具体的な内容は、ここで書くまでもないだろう。しかし、以下の部分だけは blogosphere のために紹介しておく価値がある。

引用するのは、「断る力」の勘違いとして最も痛い例である。

PP. 159 ネットにおける「果たし状」〜批判を繰り返す人の心理を考える
例えば「勝間和代」という人物について、マスメディアその他から入手できた情報だけを元に、批判を繰り返し、自分のブログのエントリーや場合によっては私のブログへのコメントという形で意見を表明する人がいます。
その人は、私だけではなく、過去にも、例えば梅田望夫さんのような、ある時点で「旬な人」「時の人」を取り上げて、批判的というか、それを通り越した悪口を言い立てていることがわかりました。
つまり、この人は勝間和代や、梅田望夫さんを嫌っているからというよりは、「旬な人を嫌う、批判するということがスタイルであり、持ち味なのです。そして私はこういった旬な人への批判を
「果たし状」
と読んでいます。

私のところにもよく来るのはご覧のとおり。一言で言うと、彼らは self assertion が出来ない人々である。出来ないから、assert the famous に走るわけである。assert というのが生物学的に自然な行為である以上、いや、生きて行くという行為が assert そのものである以上、自分を assert できない者が、手頃な対象にそれを試みるのもまたそれほど驚く行為ではない。

しかし、assert の効用を受け取るのは、assert したものよりもむしろされたものであることもまた真実なのである。

P. 161
こういう批判を繰り返す人が、[批判の対象である]Aさんよりも優位な立場に立つことはほとんどありません。なぜなら、私がふだんこれまで接してきた、大きな業績を成し遂げてきた人たちは、例外なく「I'm right. You are also right」というスタンスの人たちで、自分たちに自身があるのはもちろんのこと、周りの人たちに対しても実に寛容で、他人に対する批判など、批判のための批判はほとんどありませんし、何か注文をつけるにしても、根拠と対応策をしっかりセットにして、建設的な批判を行う人たちだからです。

私がなぜ Perl に惚れているかといえば、"Your code is also right"がその哲学に織り込まれているからだ。しかしPerlですら、意味のない文字列をコードとして実行することはできない。ネコがキーボードの上で踊っても、それがコンパイルされる確率はゼロに近いぐらい低い。寛容は何でも受け入れることではない。受け入れられぬものを上手に断ることでもあるのだ。

とにかく、「果たし状」には、もっと自分を認めて欲しい、あるいは認められている人たちのあら探しをしたい、という強い欲求があるので、その人たちに対する一番ふさわしい対処法は、
「ほうっておく」 ということになります。

「スルー力」という言葉や「disる」という表現がギークから生まれたのはあまりに当然ではある。断る力が最も旺盛なのは彼らなのだから。

それにしても、断る力というのは大した物だ。断る力が手に入ると、断らせない力も一緒についてくる。本書は682番目の文春新書なのだが、カバーを見てもそうとわからない。シャアのモビルスーツより assertive ではないか。三倍以上の速度で売れるという見込みがあってこその assertion だろう。

というわけで、締めはこれで。

君は、生き残ることが出来るか?

Dan the Assertive


この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
「起きていることはすべて正しい」たしか彼女は早口でそう言っていた。そのとおりだと思った。このスピードを求められる時代、寝ている暇などない。私はいつも起きている。すべて正しいのだ。
断る力(書評・感想 勝間和代著)【blog50-1】at 2009年07月11日 07:30
勝間和代の本をまた読んでしまいました。 私は勝間和代が嫌いです。生理的に。 私の奥さんも「友達にはなりたくないタイプ」と言います。 しかし、言っていることは至極正当。 今の日本(人)に必要なことを、(弾さんも言っているが)手を変え品を変え、メディアを変....
「断る力」と「会社に人生を預けるな」【インターネット2.0的】at 2009年05月05日 01:21
断る力「断る力」という署名の本書だが、決して「断るテクニック」を書いてある本ではない。本書はまさに「断ることが出来る人間になるためにはどうすればいいのか」ということを綴った本である。小飼弾氏がブログ(404 Blog Not Found)で述べているとおり、また、著者の勝....
断る力【紺碧日記】at 2009年03月04日 00:22
仕事をしていない私は借金で生活していますが、もう終わりです。 家計簿を付けている...
死亡フラグが立ちました【edry(えどりぃ)の粋狂】at 2009年02月24日 00:28
勝間和代さんの講演会に行ってきた。経済評論家としては異例といえる女性参加者の数に圧倒されつつ、1時間30分のあっという間の講演会。演題は「ビジネスで成功する!7つのフレームワーク力」勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考...
勝間和代のアナロジー(講演会抜粋)【blog50-1】at 2009年02月22日 10:17
ブログをやるようになって、最近勝間和代という人の名前をよく目にする。小飼弾氏のブログ「404 Blog Not Found」の最近の記事にも「assert(yourself); - 書評 - 断る力」という記事が紹介されていた。確かに実生活やビジネスの場で、断ることは重要である。それも相手に嫌...
カツマカツヨさんじゃなかったのね【文理両道】at 2009年02月21日 09:27
書評リンク - 断る力 (文春新書 682)
断る力 (文春新書 682)【書評リンク】at 2009年02月20日 22:53
この記事へのコメント
はじめまして
勝間さんの著書『断る力』『史上最強の人生戦略マニュアル』の書評を探していて、このブログにたどり着きました。ぜひ書評リンクをさせていただきたいのですが。

「人生最強の名言集」とういうサイトの中に「座右の書」として『断る力』を紹介しているページになります。
http://jsm.livedoor.biz/
Posted by 武田幸一 at 2009年07月18日 09:48
>つまり、この人は勝間和代や、梅田望夫さんを嫌っているからというよりは、「旬な人を嫌う、批判するということがスタイルであり、持ち味なのです。そして私はこういった旬な人への批判を「果たし状」と読んでいます。

断る力を一言で言うと、体制への批判、会社組織などへの強い主張だと私自身は理解しました。
ただ本著では、これが、言葉たくみに言い換えられて、良い仕事をする為には、断る力が必要だと書かれている。
著者の初期の頃の本は、読者親切に解りやすい内容、読者に有用な内容が書かれていました。ただ、途中から、売上いっぺん主義、内容はそれなりに凄そうで、売れそうな本になっています。
文書構成もひどいものです。これを無条件に賞賛する人もいかがなものなんだろう。
またassertiveは、strongly insistであって、rejectではない。完全な誤訳としかいいようがない。
Posted by しゅん at 2009年06月15日 16:56
断る前に人に断られたりきられた経験が豊富な私です。
これを読んで勇気をもらったら最悪ですね(笑)。
ますます世間の居場所がなくなるというか。
断らない勇気とか書いて欲しかったなあ(笑)。
本人からしてビシビシ断りそうな感じじゃないですか?
元からその資質をもってる人はいいですけど、ない人への
処方箋になるんですかね?例をあげればナンパ指南書のような
理解はできるけど実践は不可能な気もします。
Posted by 断られた at 2009年03月15日 03:40
「事実や信念を、地震をもって力強く主張する」となるだろうか。

地震→自信


最高の格言だと思いました。しかし、有名著名人ともなると、ブログ批判から何やらと、仕事が忙しくて、大変ですね…。

有識人張りに、これからの情報通を乗り切ってくらはいノシ

応援か・・・
Posted by @名ナンシー at 2009年02月24日 16:39
みんな、弾さんをサイボーグかなんかと勘違いしてないか?
弾さんだって、寝るし、食べるし、糞もする人間だ。
弾さんが個人的に勝間さんを溺愛しようが、
それは弾さんの生きる道。
Posted by 断固外 at 2009年02月23日 05:31
これは義理でも何でもなく
本気でこうエントリーしたならちょっと幻滅ですね。。。
ま、ある一つのフレーズだけ気に入ったということならいいですけども。
Posted by katsu at 2009年02月22日 22:19
日本に増えた方が良いタイプだが、
粗品濫造でまるで中国製見たいな
本を出しつづけるのは止めてほしー
Posted by かつまわよー at 2009年02月22日 17:23
勝間さんは素敵な人だと思いますが、短いスパンで本を出すことによって、その価値を下げているのではないかという疑問が拭えません。
彼女を見ていると、老後に安心を見出せないこの国で2度離婚しつつ、自分のやりたいことをやりつつ経済状況を向上させ、母として3人の子供を育て、かつ新しいキャリアを探るということは、これほど形振りかまわぬパワーとスピードを必要とするのだ、という深い思いにとらわれます。
Posted by 読者 at 2009年02月22日 15:45
カツマ臭 ぷ〜ん
Posted by きくごち at 2009年02月22日 10:42
>今回は献本ではなく、妻が購入したものを先に読ませてもらった。

Danさんの奥様も勘ぐっているのではないでしょうか。
Posted by posted by at 2009年02月22日 05:20
勝間の火病を見事に受け流す弾さんすごいw
Posted by vnh at 2009年02月22日 03:24
湧くね

間違っちゃったw
Posted by shino at 2009年02月22日 01:03
またしょうもないのが沸いてますな
Posted by shino at 2009年02月22日 01:02
ブックオフでかおう
Posted by 貧者 at 2009年02月21日 23:54
記事とコメントで、おいしく仕上がってますね。
Posted by チロリン at 2009年02月21日 21:13
>「断る力」がないと「2ちゃんねる」で不満をぶちまけてしまう。

あれだけ2ちゃんで叩かれているにも関わらず、それを認識し、さらにあえて著書で煽ってしまう勝間さんの精神力の強さは異常というか変態w
ある意味尊敬します
Posted by donosatia at 2009年02月21日 14:09
> 君は、生き残ることが出来るか?
柔らかく断る力があるというのは、「弾力」になるのかな。
突っ撥ねられるボインボイン感が気持ち良いから、人が寄ってくる。
Posted by edry(えどりぃ) at 2009年02月21日 12:37
 「なんでここまで勝間推し?」と一瞬思った。

 が、よーく読んでみると、引用部分、ほとんどの人が、「上から目線の勘違い女」と、不快に感じるだろうと思われる文章をわざと選んでいる(それとも、全編、この調子?)。

 応援してると見せかけて、実は勝間おろし?それとも単なる贔屓の引き倒し?

 それにしても、勝間氏、誹謗中傷をスルーするのはけっこうなんですが、明らかな間違い・事実誤認は素直に訂正すればいいのに(仏教の三毒)。

 この本を書店で見たとき、真っ先に浮かんだフレーズ「出版オファーを断る力」。いえ、齋藤孝さんのことですけど。
Posted by 寿命 at 2009年02月21日 11:25
なんか
断らなきゃいけない
シチュエーションが、発生したということね。
Posted by higekuma3 at 2009年02月21日 11:20
さて、近々コメント欄がバッサリ行くのかな?

てかね、この人の本のネタって、自己啓発大好きなねらーそっくりなんだよね
この流れだとそろそろ認知療法の亜種が出そう
Posted by ねらー at 2009年02月21日 05:47
みんな大好きだ
Posted by ↑ at 2009年02月21日 02:52
よく解らないですが勝間さんの広告塔たる弾さんらしい書評ですね。
Free is heavy.
Posted by sijina at 2009年02月21日 02:18
まだ本出してたんだ
最後の稼ぎ時かね
Posted by 名無し at 2009年02月21日 02:11
disって、hip-hop界隈から発生したと聞きましたが、ギークから生まれた言葉なんですか?
Posted by 通りすがり at 2009年02月21日 01:38
全然スルーしていない勝間さんに萌えた(笑)。
なんいうか、人間味があっていいと思う。
華麗にスルーしまくっている人の方が気持ち悪いというか。

Posted by トリックスター at 2009年02月21日 01:21

assert
 でしゃばる。
 我を張る。
 (根拠はないが)断言する。
 (権力などを強引に)行使する。
Posted by うーむ at 2009年02月20日 23:17
お二方ともそろそろ旬じゃないと思うのでご安心ください。
Posted by 眠り姫 at 2009年02月20日 22:53
売れれば批判されるのも当然。まさか著書で反論するとは。。
ご自身で書かれている「放置」が全く出来てないですね(笑)
そもそもブログやコメント欄に書かれたという批判内容が読者には分からないのに、建設的か嫌がらせかは判断つかない。
こういうコトを書くのなら、過去に寄せられた批判を整理して、自分は間違っていないと論破すれば良い。まあこの人は現実に間違った事も書いてるし。
Posted by ny at 2009年02月20日 22:23
勝間さんが来る前に記念カキコ笑

彼女は次から次へと本を出すけど、ネタが尽きないのかな・・・?
立ち読みして面白そうだったら今回も買ってみようと思います。
Posted by 掠平 at 2009年02月20日 21:29
直訳すると、「事実や信念を、地震をもって力強く主張する」となるだろうか。

地震→自信
Posted by 初投稿 at 2009年02月20日 21:05
はてなブックマーク 勝間和代の黒歴史
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://anond.hatelabo.jp/20090219030846
Posted by えい at 2009年02月20日 20:13
何をおっしゃりたいのかよくわからないけど、勝間さんにそうとう入れ込んでるのは分かりまつた。
Posted by うーん at 2009年02月20日 19:37
出版社って一体なんなんだろう。
Posted by FDA at 2009年02月20日 18:59