2009年05月04日 21:45 [Edit]

Die Luft der Freiheit weht! - 書評 - アメリカ型成功者の物語

本書のあとがきを書いた滑川海彦さんより献本御礼。

面白い!著者の作品の中では、最も面白かった。

それだけに、「アメリカ型成功者の物語」という主題は、Uncle Samの人気が「100年に一度の大底」にある今、それで引く人が多そうなだけにもったいない。むしろ副題の「ゴールドラッシュとシリコンバレー」を主題に持ってきた方がよかった。あるいは週刊新潮連載当時の「21世紀のゴールドラッシュ」のままか。


本書「アメリカ型成功者の物語」は、1849年のゴールドラッシュから2009年の現在まで、San Francisco Bay Area にやってきた人々が、いかにして金鉱の代わりに大金を手にし、そしてその大金で何をしてきたかの物語である。

目次 - 野口悠紀雄『アメリカ型成功者の物語―ゴールドラッシュとシリコンバレー―』|新潮社より
プロローグ 黄金の州
第I部 地表に金がころがっていた――19世紀のゴールドラッシュ
第1章 所有地に金が出たので無一文になった男
1 金が発見された
2 自由の天地で誰もが金を採れた
3 金発見者の失敗を分析する
4 金採鉱者の悲哀
第2章 成功者は金を掘らなかった
1 最初の成功者のビジネスモデル
2 人々が求めたものを作った男
3 輸送と通信を提供した男たち
4 まだいるゴールドラッシュの成功者
第3章 皇帝と怪盗、そして見聞者
1 初代アメリカ皇帝になった男
2 怪盗ブラック・バート
3 ゴールドラッシュを現地で見た人々
4 社会が成功する条件は何か
第II部 鉄道王、大学を作る
第II部へのプロローグ
第1章 大陸横断鉄道の完成
1 ゴールデン・スパイクを打ち込んだ男
2 マニフェスト・デスティニと大陸横断鉄道
第2章 近代的錬金術の秘密
1 途方もない大金持ちが生まれた
2 独占や政府補助が富の源泉か?
3 株式会社制度では大金持ちにはなれない
4 富を生み出した巧妙な仕掛け
第3章 カリフォルニアへの苦難の旅
1 大陸を横断したチャールズ・クロッカー
2 パナマ地峡を越えたコリス・ハンチントン
3 ホーン岬を回ったマーク・ホプキンス
第4章 リーランド・スタンフォード
1 カリフォルニアに向かう
2 政界に進出する
3 馬を改良し、映画を作る
4 スタンフォード夫妻を襲った悲劇
5 「カリフォルニアの子が私たちの子だ」
第5章 ピカピカ大学、牧場の真ん中に出現す
1 斬新なビジョンで作られた大学
2 当たり前だが、金だけで大学はできない
3 あっぱれジェイン、逆境の大学を支える
4 スタインベックが見たスタンフォード大学
第6章 百年の歳月がもたらしたもの
1 百年たって現われたタイムカプセル
2 百年の歳月は何を消して何を残したか
3 挑戦者精神はいまも生きているか
第III部 ゴールドラッシュの再来――シリコンバレーの起業家たち
第1章 大学院生が作った未来的企業 グーグルとヤフー
1 グーグルのIPOで億万長者が続出
2 億万長者になった「ならずもの」
3 検索エンジンはなぜ重要か
4 検索を制するものはインターネットを制す
5 インターネット広告を救った検索連動型広告
第2章 超新星の爆発 ネットスケープ
1 インターネットの認識が遅れた日本
2 ネットスケープの大成功
3 ブラウザ戦争
4 剣によって立つ者は剣によって滅ぶ
第3章 インターネットの「配管屋」 シスコシステムズ
1 21世紀型の製造業
2 シスコシステムズの誕生
3 シスコ、巨大企業へと脱皮する
4 知性をもつ交換機 ルーター
5 シスコのビジネスモデル A&D
第4章 反マイクロソフトの盟主 サン・マイクロシステムズ
1 サンもスタンフォードから生まれた
2 一世を風靡した「プッシュ」とキム・ポレーゼ
第5章 新しいビジネスモデルの時代
1 シリコンバレーに大金持ちが生まれるメカニズム
2 ソフトウエアの時代へ
3 新しい時代には新しいビジネスモデルが必要
第6章 シリコンバレーとスタンフォード大学の役割
1 ベンチャーキャピタルの役割
2 シリコンバレーという「場」の役割
3 スタンフォード大学の役割
4 「自由の風が吹く」
第7章 日本経済の未来はどこに?
1 これからの産業構造はどうなるのか
2 組織から個人へ――アメリカの大転換
3 日本はどうする
あとがき
文庫版あとがき
「自由、革新、チャレンジ」の空気 滑川海彦
索引

物語だけあって、本書を要約してしまうのは無粋だろう。しかし上記の目次を見ていただければ、本書が主題である「アメリカ型成功者の物語」ではないことは明らかだ。本書はあくまでも西部、それも San Francisco Bay Area の成功者たちの物語であって、他の「アメリカ型成功者」は入っていない。 Wall Street も Wal-Mart もこの中にはないのだ。

私はアメリカ社会を全面肯定できないばかりか、好きになることもできない。しかし、アメリカがきわめて確固たる何ものかをもっていることを、認めざるを得ないのである。それはわれわれが謙虚に学ぶべきことだと思う。

s/アメリカ/(San Francisco) Bay Area/g とすれば、私はこれに全面同意する。が、しつこいようでも「これがアメリカだ」と思ってもらうと火傷する。これもアメリカなら、"Pro-Life"を自称する連中が産科医を殺すのもアメリカなのだから。

本書には、第七章にみられるような、著者の私見も入っている。普段というか通常であれば著者の著作はそれこそが「売り」であったが、本書においてはかえって無粋に感じられた。「では日本はどうするべきだ」とかそういったことはとりあえず本棚においておいて、まずは一読を。

Dan the Ex-Resident Thereof


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この記事へのコメント
「反貧困」湯浅誠 岩波新書を読みましょう。話はそっからです。
Posted by 「反貧困」湯浅誠 岩波新書を読みましょう。話はそっからです。 at 2009年05月26日 03:53
廉価版というか、まんま文庫化ですね。なんで改題したんだろう。
でも副題に「シリコンバレー」という文字列が入ったのはいいですね。
いずれにしろものすごく面白い本です。
Posted by ogijun at 2009年05月05日 15:49

この本は野口氏の
ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル
という本の廉価版という感じなのか。

ゴールドラッシュの時に成功したリーバイスなどのビジネスモデルを通じて現代のネット業界で成功した会社を読み解くのは、非常に新鮮な視点であったのを記憶している。

廉価版でもう一度読んでみようかな。
Posted by test at 2009年05月05日 10:45
国柄によって国家戦略の評価基準に個性があります
アメリカは、ロジスティックスとソフトウェアを組み合わせたところに評価基準を置いて、現実を評価し個別戦略を組みなおします
フランスは、基本は米英に反発しながら、随伴しておこぼれを食うやりかたです。コバンザメですね。
ドイツは、徹底的防御戦略です。
ロシアは、自陣の周辺に碁石を置いて、じりじりと拡張する
日本は、内部化して妥協と協調を目指す
Posted by PK at 2009年05月05日 09:49