2009年05月20日 16:30 [Edit]

紙の本が90%亡くなって欲しいと弾言したくもなる、たった一つの理由

私もまた、この発言を眠たいものと感じた。

「紙の本は電子書籍に駆逐されない」と出版社CEO - ITmedia News
 「(紙の書籍が)こうした新しい選択肢に完全に取って代わられることはないだろう。両方のモデルがある程度統合されることになるのではないだろうか」とMondadoriのCEO、マウリッツィオ・コスタ氏は国外ジャーナリスト向けの会見で語った。
「もちろん、ある程度の“紙離れ”はあるだろう。だが、ページをパラパラとめくる楽しみや印刷された紙の味わい--そういったものはこれからも残っていくはずだ」と同氏。

その一方で、こうならないとも弾言できる。

紙の本が100%亡くなると断言できる、たった一つの理由 - 今週の天牌
何死ぬほど眠たい事言ってるんでしょうか。ある程度の紙離れどころか、紙の本は100%亡くなると断言できます。

理由は、まさに

紙の本が100%亡くなると断言できる、たった一つの理由 - 今週の天牌
断言できる理由、それは紙の本が"印刷"という技術だからです。

だから。紙は、技術であるがゆえに、それを完全に含む技術がなくならない限り、なくならない。

これの一番わかりやすい例題は、「なぜ、ポケベルは完全消滅したのにファックスはなくなっていないのか」を考えればわかる。ケータイメールというのは、ポケベルに出来ることを完全に含んでいた。ケータイメール⊃ポケベルだったのだ。だからポケベルは亡くなった。ケータイを含む電子メールに完全に呑み込まれる形で。

それではファックスはどうか。ポケベルよりロートルで、電子メールの添付ファイルで置き換え可能なはずで、実際それをやってくれる技術すらすでに20年前に確立されているファックスがなぜ亡くなっていないのか?

X ⊃ ファックス となる技術が、存在しないからだ。電話機はファックスを含まない。電子メールも然り。そして何がそうなることを妨げているかというと、紙の存在である。ファックスは、相手の紙に直接書き込む技術であるが故に亡くならないのだ。

それでは紙とはいかなる技術なのか。

それ自身がプレイヤーであり、常にプレイしているメディアである。

紙という技術の神髄は、そこにある。そしてそれこそが、

紙の本が100%亡くなると断言できる、たった一つの理由 - 今週の天牌
紙というのは情報(絵や文字)を伝えるメディアですが、音楽メディアの変遷を見て見ましょう。

音楽メディアに起こったことが紙メディアに起こらなかった理由なのである。音楽というデータは、エディソンの蓄音機以来、常にプレイヤーが必要だった。蓄音シリンダーがレコードとなり、レコードがCDとなり、オープンリールが(フィリップス)カセットとなり、DATとなりMDとなり、ステレオがWalkManとなりiPodとなっても、この点は全く変わっていないのだ。変わっていないが故に、メディアそのものは何度も代替わりできたのだ。

紙を置き換えるためには、「それ自身がプレイヤーであり、常にプレイしている」ことが欠かせない。その点さえ抑えておけば、何も木をパルプして作る必然性はさほどない。実際プラスティック製のものが一部出ている。が、それは材料の違いでしかなく、これらはたとえパルプで出来ていなくても「紙」と呼ばれ、これからも呼ばれ続けるだろう。

パルプ以外の「紙」をも含めての紙は、人類滅亡まで亡くならないだろうと弾言できる。何なら私の本全部をかけてもよい(誰がどう賭けの正否を判定するかはスルー:)。それもまた、それ自身がプレイヤーであることの必然的な帰結だ。紙がどうあるべきかを決めているのは、技術ではなく人体。あれ以上薄くしても厚くしても、めくるという重要な機能が損なわれてしまう。そして目は二次元しか捉えられない。「三次元を見ているじゃないか」という人は、目は表面しか見えないことを失念している。人体の目と手が変わらないかぎり--たとえば目に多層式光学ディスクを読むような機能が着かない限り--紙は紙のままでありつづけるだろう。

で、ここまでが長い前置き。

そろそろ紙で商売している人は、この紙の最高の特長こそが、実は最低の欠点でもあり、その欠点ときちんと向き合わないと紙はとにかくあなたが亡くなりかねないということを直視して欲しいのだ。

その欠点とは、不動産コスト。紙はかさばるのだ。

かさばるということは、所有コストが累進するということを意味する。本好きは見えない累進課税を支払っているに等しいのだ。

404 Blog Not Found:本を所有することの経済的異議
数冊なら机の上でもいいだろう。数十冊なら枕元でもいいだろう。しかし数百冊になると本棚は必須。数千冊を超えると本棚が日用品と干渉するようになり、そして数万冊となると不動産の問題になってくるのだ。

逆に言えば、この問題さえ解いてやれば、「書」はもっと読まれるのは確実で、そしてうまくやればもっと売れるかも知れないのだ。

すでに雑誌とレファ本の世界では、これが起こっている。「それ自身がプレイヤーであり、常にプレイしている」ことにこだわらなければ、書は紙で読む必要は必ずしもない。そして紙にこだわらなければ、書くのはもっと楽になるし、readはとにかくbrowseはもっと楽になる。雑誌もレファ本も、最初から最後まで通して読まないという点は共通している。ランダムアクセスであれば、プレイヤーとメディアが分離している、電子の世界の方がずっと優れているのだ。

ここまでは、我々が日々体感していることであり、わかりやすい。これらは「紙には出来ないこと」をやっているという点でも、紙を減らしはするが亡くすものではないという点もわかりやすさの一助となっている。

しかしそろそろ、「電子技術の特長を活かした」ペーパーレスではなく、「紙の欠点を克服する」ペーパーレスに踏み込んで欲しいのだ。さもなければいくら本棚があっても足りない。

この点において、日本は非常に残念な状態にある。何が残念かといえば、この問題に関して読み手が完全にスルーされていることだ。

ディスカヴァー社長室blog: 「グーグル和解問題」、どこが問題か? ●干場
もちろん、グーグルがスキャンして、世界の人々に、コンテンツが役立つ形にしてくれて、しかも閲覧料の一部もくれるというのだから、いいじゃないか、という考え方もあるだろう。読者の立場だったら、これほど便利なことはない。

でも、

そうした「実」よりは、そもそも、著作権者に無断でスキャンしてコンテンツを自分の所に事実上、独占的に集積し、そして、売る、ということに、たとえそれが、知の共有という高邁な理想から始まったものだとしても、違和感を感じる、というのがみなの思いじゃないだろうか? 資本とインフラに物言わせて、やったモン勝ち、早いモン勝ちみたいで。

日本で最も読み手視点が出来る出版社社長ですら、こうである。なぜ「我々がやりたかったことを Google にやられてしまってクヤシイ」ではないのか。なぜ本が好きな故に、本の(文字通りの)重さに苦しんでいる人々の気持ちを思い計れないのか。確かに Google は巨大企業で出版社は零細企業。講談社クラスですら年商たかだか2000億円。半導体工場一個作ったらすっ飛んでしまう。

しかし、提案は出来るはずだ。そしてそれが出来ていたからこそ、「たかが二兆円産業」以上のプレゼンスが出版業界にはあるのではないか。額で言えばパチンコの1/10以下だが、我々が感じている重要度は逆に10倍どころか100倍というのは私のひいきだろうか。

我々は、もっと読みたいのだ。それを可能にするにはどうしたらよいか。それをもっと考え、実行に移して欲しい。ダイナミックアークぐらいしかないのは、業界全体の怠慢なのではないか。

弾言しよう。

紙は、亡くならない。

しかしその紙の上にあぐらをかいている者は、亡くなる、と。

Dan the Bibliomania


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この記事へのコメント
まだポケベルは使われてますけどね。一部で。
Posted by ん? at 2009年05月25日 14:55
単純に、部屋に溢れる紙の本を何とかしたいです…
Posted by WATERMAN at 2009年05月24日 08:31
電子技術が紙に合わされば良いのかな。
めくる動作が必要な入力機器付けて、そこに移せばなんかそれっぽいかも。
有機ELも薄くなってきたしもう直ぐかな
Posted by   at 2009年05月21日 12:13
賃貸の場合でも、あらかじめ本の収納スペースが欲しいなと自分も思う。
Posted by   at 2009年05月21日 12:05
この先本は、ローソクみたいになるんじゃね?
Posted by at 2009年05月21日 11:57
わかりやすくて面白かったです。
出版業界が変わるには、外からの人材がないと無理でしょうね。
異物としか思えないような者を包含しないと自己革新は無理でしょう。
Posted by   at 2009年05月21日 11:47
最初っからデジタル媒体だと見向きもされない可能性があるんだよな。
こんな釣りタイトルじゃなきゃ見ないって人はいるし、知名度の無い作者なら言わずもがな。年取れば検索をしなくなるし。
なんでもあるのはいいけど目的のものがまだまだ見つけづらいからwebが印刷ものに勝つ日は来ないな。
Posted by mm at 2009年05月21日 11:04
PDFファイルをA4の紙間隔で閲覧できる媒体がすくないのが問題。
ディスプレイは横長のものが多く、縦型はないことはないが、一般的ではないですよね。
ノートPCで読もうと思う縮小して、全体をみて、拡大でその場所を読むなんてことはイライラさせられます。
逆に言うと、新書等の書店サイズのファイルが多くあればいいんですが、・・・。現状、そうはなっていませんよね。
Posted by mt at 2009年05月21日 10:55
記事のタイトルの誤変換をなんとかして
Posted by el at 2009年05月21日 09:18
とりあえずこの文章は、紙に起こしてもWebで見ても読み辛いし眠たいが、結論には同意。
印刷屋がヤバいのはとっくの昔からだが、Webがそれに変わる力になっているかと言えばそれは無い。
Posted by   at 2009年05月21日 08:47
文字や画像がプレイをしててそれを目視できるものがプレイヤーな気がする。
Posted by tk at 2009年05月21日 07:02
あ、上に同じコメントあった
Posted by a at 2009年05月21日 03:24
Kindleはどうでしょう?条件をみたしているとおもいます
Posted by a at 2009年05月21日 03:23
知識を考える上で「知識生産(knowledge production)」と「知識流通(distribution of knowledge)」の二つの視点が重要。書籍というのは知識生産と知識流通に関わるメディアの一つです。

しかし、生産した知識をアウトプットして流通させることに、紙である必要はないけれど、かならずしもデジタルである必然性もありません。

肝心なのは、何を実現させるために(=どんな目的で)知識を流通させるのか?誰に何を伝えるために知識を生産するのか?ということだと思います。

これからの時代は流通やアウトプットの手段が多様化していきます。書籍(パルプ紙)、電子本、ブログ、ウェブサイト、テレビ、ラジオ、ぽっどキャスト、youtubeなどなど・・・

ですから、自分の知識を使ってどうしたいかを考えることが、これまで以上に大切になってきているのだと思います。

紙がなくなるか、なくならないかには関心がありません。何のための知識かがはっきりしないのは、紙だろうがブログだろうが、所詮はクズ。読むに値しない。


Posted by かりそめ at 2009年05月21日 01:59
とりあえず、
パソコンの画面に表示されたこの記事がひどく読みにくく、
きちんと読むには紙媒体が必要なことは分かった。
Posted by   at 2009年05月21日 00:14
キンドルが、あるよ
Posted by あ at 2009年05月20日 20:57
直感的簡単動作に基づいていなければ、読みづらくてしょうがない。また、ディスプレイはなんだかんだで目が疲れる。神経細胞とリンク出来る安全な手段を早くコンパクトに実現してくれ。紙?媒体なんだから変化してゆけばいいんじゃない?そんなことを論じている時点で、時代遅れ。
Posted by   at 2009年05月20日 20:31
アマゾン型の図書館(撃早で配達+牛乳瓶のように自動で回収)が安価な値段であればとりあえず読みたいだけの本の不動産問題は解決。
手元に置いておきたい本が山ほどある人は・・・・電子データと自動製本機でも売ってあげれば良いかと。
電子書籍はなんだかんだでディスプレイなので、目が疲れそうだ。。。
Posted by ny at 2009年05月20日 19:51
ううん。なんかいろいろ複雑に考えすぎな気がする。読むの疲れた。

普通に

デジタル化すれば、管理も配布も、楽ですよ〜 はやくそっちに移行しようね〜 でも、やっぱり本(実物)好きな人もいるから、10%くらいは残るんじゃないかな〜

でいいんじゃないでしょうか。
Posted by sss at 2009年05月20日 19:23
今日のエントリはいいこと言ってますね。

ところで、

>人体の目と手が変わらないかぎり--たとえば目に多層式光学ディスクを読むような機能が着かない限り--紙は紙のままでありつづけるだろう。

いつになるかわかんないけれど、人体の目と手を認識している脳科学・技術の進歩が最終的に紙メディアに引導を渡すことになるのかもしれないですね。攻殻の世界ですな。
Posted by sakurada at 2009年05月20日 18:41
本の重みでアパートの床が抜けて、圧死した方もいましたから、「弾さん家の床がすごい」んでしょうね。
Posted by yasiyasi at 2009年05月20日 17:15
床ってすごいね。抜けないんだね。
Posted by W61CA at 2009年05月20日 16:53