2009年06月14日 06:00 [Edit]

たった一つの持続するやり方 - 書評 - いくつもの壁にぶつかりながら

PHPエディターズ・グループ田畑様より献本御礼。

書評がすっかり遅くなってしまった。発売日前に上げるつもりだったのだが。ちょっと体調を崩している間に発売日が来てしまったが、すでにAmazonでは売り切っているようだ。売れているようでなにより。

「今時の若者はすごい」の例が、また一つ加わった。


本書「いくつもの壁にぶつかりながら」は、特定非営利活動法人かものはしプロジェクトの代表の、19歳から27歳の今までの軌跡。

目次 - いくつもの壁にぶつかりながら?|?書籍?|?PHP研究所より
わたしが出会った、あるカンボジア人少女の物語
第1章 カンボジアの児童買春問題
第2章 かものはしプロジェクトのスタート
第3章 児童買春をなくすための事業モデル
第4章 パソコン教室でカンボジアに進出
第5章 農村の子どもたちを救え!
第6章 あたたかな支援に包まれて

かものはしプロジェクトとは一体何か。

かものはしの使命|寄付・募金・子ども・笑顔。かものはしプロジェクト
強制的な商業的性的搾取を防止する活動を、持続的かつ発展的に行うことにより、全ての子どもたちが未来への希望を持って生きられる世界を実現させる。

実はこの部分、リンク先のページでは画像なのだが、altタグにこの文言がきちんと入っている。同プロジェクトの事業の一環だけあって、なかなかきちんとしているではないか。

「強制的な商業的性的搾取を防止する活動」。ずいぶんと抽象的な言葉だ。しかし著者が19歳の時に出会った現実は、抽象的とはほどとおいものであった。

かものはしの使命|寄付・募金・子ども・笑顔。かものはしプロジェクト
私がこの問題を最初に知ったのは、大学生のときに東南アジアを訪問したときです。買春の被害にあった子ども達を保護する施設で、6歳と12歳の姉妹に出会いました。彼らは家が貧しかったために、売春宿に売り飛ばされ、電気ショックを与えられながら無理やり働かされいたところを保護されたのです。

同じ売春でも、「援助交際」などとぬるい言葉は出てきようがない現実が、そこにあった。1981年生まれの著者の19歳の時だから、世紀の変わり目である。前世紀ではない。私の娘達は現在10歳と7歳だが、カンボジアではもう「立派な商品」ということになる。

そう。売られるのだ。自らを売るのではなくて。

これは売春ではない。人身売買である。彼女達は売春婦ではない。奴隷である。

人権侵害だと叫ぶのは容易い。実際そういう人たちも多い。それもそれなりに効果を上げてきた。が、かの国で行われている人身売買は、赤の他人が赤の他人を売り飛ばすのではなく、親が子どもを売り飛ばすのである。そしてその親達もよく見るとかつては「売れられていた」人々が少なくない。被害者は被害者、加害者は加害者と単純に割り切れたらどれほど楽だろう。

しかし、日本とてついぞ一世紀前は似たり寄ったりの状況だったのだ。戦前は子供が病気になると、「治療費と葬式代とどっちが安い?」という電話相談があったそうだ。電話があるぐらいの近代でさえ、子どもというのは「いざとなれば売る」ものだったのだ。

それでは日本はどうやってそこから抜け出したのか。法の整備もあるだろう。人権意識の向上もあるだろう。しかしその全てを支えたのは、経済成長だった。子どもを売らなくても済むようになって、はじめて子どもを売るのは罪深いものだという意識が根付いたのだ。

これは、世界的な傾向である。そもそもなぜカンボジアだったかといえば、タイが経済発展したからだ。タイで子どもが売られないようになった結果、「市場」がカンボジアに移ったのだ。

子どもが売られないようにするためには、子どもを売らなくてもいいようにするしかない。

それが、著者がたどりついた結論だった。

かものはしの使命|寄付・募金・子ども・笑顔。かものはしプロジェクト
そんなときに出会ったのが現在、活動をともにしている仲間やサポーターの人たちでした。この問題の解決のために一緒に頭を悩ました。何度も現地に調査をし多くの人に意見を聞きました。そして、私たちは「事業」として児童買春の被害を解決していくことに決めました。

それがどのようなものであったか、著者たちがぶつかった壁は何だったのか、是非本書で確認していただきたい。読了後は二度と「近頃の若い者は」などという台詞ははけなくなるだろう。

それにしても近頃の若い者はすごいが、そのすごいのありようがやはりかつての若い者とは少し違う。こういうのもなんだが、かつてのすごい若者は現状と競合していたのに対し、今時の若い者は現状と協調しつつ問題を解決していくのだ。「デジタルネイティブが世界を変える」に描写されている若者の姿が、そこにある。たとえば著者はプロジェクトが軌道に乗るまで(そして多分今も)実家住まいだった。一度は両親に反対されたが、説き伏せたのだ。「かつての若い者」だったら反対された時点で家を出て、かえって「世間に早々と負けて」いたかも知れない。

今時の若者は、若者ならではの情熱を、かつての若者ではありえないほど賢く使っている。

彼らにもっとまかせようじゃないか。

Dan the Middle-Aged


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「日本は児童買春の加害国だ」と言われたという。児童ポルノの事だろうか? いくつもの壁にぶつかりながら村田 早耶香おすすめ平均やらない善より、やる偽善社会起業家とは等身大の社会起業家児童買春問題を知ろう若さゆえに、若さだから、出来る、期待するAmazonで詳しく見
[本][おすすめ][社会]世界の問題意識を持ち、果敢に立ち向かう女性たち【人の心とこの社会をPCで検索「…」 - Going Cheeze】at 2010年10月12日 15:28
角川書店第二編集部亀井様より献本御礼。 「夜のオンナ」の経済白書 門倉貴史 毎度のことながら素晴らしい。 世界同時不況の今にあっても、「人に言えない経済学」に関しての著者の一人勝ち状態はまだ続くようだ。 本書には、世界仰天ニュース的な興味本位の話....
世界最古職業最新事情 - 書評 - 「夜のオンナ」の経済白書【404 Blog Not Found】at 2009年10月14日 05:07
いくつもの壁にぶつかりながら(2009/06/13)村田 早耶香商品詳細を見る  【 目 次 】  わたしが出会った、あるカンボジア人少女の物語  ...
いくつもの壁にぶつかりながら 村田早耶香(著)【Makeup Life! メイクアップ・ライフ!】at 2009年09月05日 13:30
そろそろこの話題について語っておくか。 『Santa Fe』を1年間で処分すべしとする与党案に驚く - 保坂展人のどこどこ日記マスコミの注目を集めていたアグネス・チャンさんは、タイのチェンマイでビルマ(ミヤンマー)から売られてきた子どもたちが、いかに酷い扱いを受けてい....
コドモ買うよりモノを買え! - 国際児童売買春をなくすには【404 Blog Not Found】at 2009年06月28日 19:08
この記事へのコメント
かものはしのまるやき、よほど読まれたくないようですね。上の人。

支援者を他の団体の施設に案内して寄付をねだったとか、
郵政の国際ボランティア募金を全部使ったことにして、
あとから返すように要求されたとか、知られたら困りますよね、いろいろと。
Posted by Dr.TOTO at 2009年06月23日 18:56
私も”かものはしのまるやき”って見ましたが、
不愉快な思いを抱きました。
少なからず、人のために頑張っている人たちをあそこまで
こけにするのは、どうでしょうか。

NGOとしてどこまで成功するかどうか、
やってみなければわかりません。

村田さんの言動の矛盾点をついていらっしゃいましたが、
重箱の隅をつついたような指摘が多く思いました。

少なくともカンボジアの子どもたちを救いたいという気持ちは
本物だと思います。
Posted by dodo at 2009年06月22日 10:41
僕も少し気になったので見てみました。

>かものはしのまるやき
>http://duckmole.exblog.jp/

これどこもまで本当なのかわからんけど、やっぱり「かものはし」を新しいNGOの成功例みたいに捉えるのは微妙なのかな。
「今時の若者はすごい」の一例というか、若者への刺激になればいいけど、時が来れば、こんなNGOは消えて行くんだろうな。
Posted by susu at 2009年06月18日 20:21
>かものはしのまるやき
>http://duckmole.exblog.jp/

いやはや
たまげました

このNGOの代表って、演技性人格障害だろう

詳しくは上記のブログをご覧あれ
Posted by Dr.TOTO at 2009年06月18日 00:48
日本は衣食足りすぎて礼節を損なうってかんじ

Posted by 過ぎたるは at 2009年06月15日 06:53
反社会学講座 第24回 こどもが嫌いなオトナのための鎮魂曲
http://mazzan.at.infoseek.co.jp/lesson24.html

まぁ、日本でも、つい最近まで、子供を売るどころか、
殺すことが当たり前だったようです。

江戸時代とかは、死が当たり前のように、ごろごろと転がっていたので
子供を売るとか、殺すことにも、さして葛藤は無かったのでしょうな。

日本の場合、経済の発展のおかげで子供が売り買いされなくなったと
いうよりは、軍事力を増強するためには子供を大事にしたほうがいいので
そうなっただけで、立派な理由で子供が大事にされたわけではなかったようですな。

我々も生まれるのが100年早ければ、カンボジアの子供たちと同じことになっていたのでしょう。
Posted by KKMM at 2009年06月14日 19:57
「しかしその全てを支えたのは、経済成長だった。子どもを売らなくても済むようになって、はじめて子どもを売るのは罪深いものだという意識が根付いたのだ。」

まさに「衣食足りて礼節を知る」ですね。
Posted by bob at 2009年06月14日 17:19
80年代の書籍を読むと、児童売買春みたいなのがアジアでは横行しているとあるけど、まだそういうのがあるってことなんだろうか。いわゆるセックスツーリストだな。家計維持的な(非強制搾取的な)児童労働の話はまだあると聞くな。俺はそういう本を読まないから、関連本の伝聞になるが。
Posted by   at 2009年06月14日 15:52
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E8%BA%AB%E5%A3%B2%E8%B2%B7

人身売買は現在でも暴力団が暗躍して行われているという指摘があり、2007年7月23日には借金のカタとして女性を風俗店に売り渡したとして栃木県警が暴力団員と風俗店を人身売買罪を初適用して逮捕・検挙した[2]。

とか
ウライラット ソイミーさん
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%82%A4%E3%83%9F%E3%83%BC
(しかしどうも出展がわからない)
とか 割と 日本も謎が多いんだZE
Posted by a at 2009年06月14日 15:30
いつもブログ拝見させていただいております。
早速、紹介いただいた本読んでみたいと思います。
Posted by くまお at 2009年06月14日 12:56
> しかしその全てを支えたのは、経済成長だった。

> これは、世界的な傾向である。そもそもなぜカンボジアだったかと
> いえば、タイが経済発展したからだ。タイで子どもが売られないように
> なった結果、「市場」がカンボジアに移ったのだ。

想像だけで語るのはやめましょう。

「タイで子どもが売られないようになった」のは米国の圧力によるところが非常に大きいのです。「ベトナム」特需による経済発展は、むしろ児童買春問題の悪化を後押ししています。

そして、5年ほど前からカンボジアに対しても同様の外圧が加えられ、児童買春はほぼ沈静化しています。
「10歳と7歳」が売られるような時代では、とっくにないのです。

いまどきカンボジアの売春宿では、などと言っているのは食い扶持を維持したい団体だけで、まっとうな所は、もっと見えづらい、強姦であるとかDVであるとかに視点を移しています。

かものはしについては問題点を執拗に追及しているブログがあるので、いちどご覧になってはいかがかと思います。

かものはしのまるやき
http://duckmole.exblog.jp/

著者がカンボジアを初めて訪れた時期まで偽っているだなんて、お気づきにならなくてもしかたありませんが。

私はまだ本書を読んでいませんが、「電気ショックを与えられながら働かされていた」とされるのはベトナム人の少女です。
10歳に満たないような被害者のほとんど、十代前半の過半数は、ベトナム人であることを、統計は示しています。

そのことは、ちゃんと書いてありましたか?
Posted by GOE-MON at 2009年06月14日 11:55
このエントリーの本題とは違いますが、カンボジアは、アーガマ(阿含経)に依拠するテーラワーダ(上座部)仏教かそれに近い宗派の仏教を信仰する仏教国ということになってはおりますが、この話からも、カンボジアの仏教なんていうのは、仏教でもなんでもないということがお分かりいただけると思います。

いいんです。日本の「仏教」は仏教でなかろうと、似非仏教であろうと。

本当の仏教徒とは、昭和のオオクニヌシノミコト様の故田中角栄元首相です。私は、田中角栄氏を本尊とする道教徒です。でも、それが、日本仏教を再生するひとつの道です。

金銭にこだわったから、薬師寺の金堂も西塔も南大門も復興できたのです。仏教徒は、真の仏教徒でありたいと願うなら、リアルでないといけません。
Posted by enneagram at 2009年06月14日 09:50