2009年07月22日 06:00 [Edit]
体育会系から理系へ - 書評 - 傷はぜったい消毒するな
傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 - 情報考学 Passion For The Futureを見て、旅の道連れに購入。
なに、このぶっとんだ面白さ!
そう。面白い。これを読めばもちろん傷の直し方もわかるけど、むしろそちらがおまけで本当の主題は「生態系としての皮膚の科学」。エンジニアで非サイエンティストが七転八倒した結果生み出した理論は、総じて役にも立つし面白いのだけど、いやはや、こんな身近なところにこんな凄いのが転がっていたとは。
本書「傷はぜったい消毒するな」は、外科医というなのエンジニアにして「素人サイエンティスト」が熱く熱く語る、傷治療のエンジニアリング経由の皮膚と細菌のサイエンス。熱すぎて火傷しそうだ。
目次 - Amazonより- はじめに
- 第1章 なぜ「消毒せず、乾かさない」と傷が治るのか
- 第2章 傷の正しい治し方
- 第3章 ケガをしたら何科に行く?
- 第4章 私が湿潤治療をするようになったわけ--偶然の産物
- 第5章 消毒薬とは何か
- 第6章 人はなぜ傷を消毒し、乾かすようになったのか
- 第7章 「化膿する」とはどういうことか
- 第8章 病院でのケガの治療--ちょっと怖い話
- 第9章 医学はパラダイムの集合体だ
- 第10章 皮膚と傷と細菌の絶妙な関係
- 第11章 生物進化の過程から皮膚の力を見直すと......--脳は皮膚から作られた!?
- あとがき
目次をよく見て欲しい。なぜ傷の治療に「生物進化の過程」が出てくるのか。これはプロのサイエンティストでないエンジニアが、プロでないがゆえに既存の理論にとらわれずに展開した理論であり、これこそが「浸出液」である。それがどんな理論かはぜひ本書で確認していただきたい。
傷治療のエンジニアとしては、著者はすでに地位を確立しているように見える。というか、てっきり湿潤治療はすでに定番として確立していると本書を読むまで思い込んでいた。というのも、我が家の娘達--特に長女--は、子どもらしくしょっちゅうけがをするのだが、都度湿潤治療を受け、その直りにいつも感心していたからだ。キズパワーパッドももちろん常備している。
しかし、肝心のプロが、まだ湿潤治療を受け入れていないようなのである。そのために著者は「たかが」傷治療のためにパラダイムシフトまで持ち出すどころか、原核生物と真核生物の進化まで論じてしまう様子は、まるでバクテリアの増殖のようだ。
なんか私と芸風が似ている。職人の技にとどめず、玄人からのブーイングの嵐もものとせず自説を展開していく様子が。著者はネットを始めたのも(あまりにも)早い。早くも1996年にはウェブページを立ち上げたそうだ。もっとも「あまりに早く」からウェブページを立ち上げた人によく見られる。とても「みにくい」ページではあるが。
今時 Marquee タグにお目にかかるとは。「新しい創傷治療:医師リスト」も、Wiki化すればもっと楽になるのに....まさに
P. 180おまけに学会に行くと、手動式方向指示器を開発して有名になった教授や車内用提灯の発明で学会の理事になった先生や木炭自動車を開発した大学医局の関係者が大勢いるわけだ。
を、はからずも著者自らが体現したページになっている。
もっとも、著者はあくまでも医者である。ウェブ技術が卓越してるのに相変わらず車内用提灯よりよほどマシである。
本書で最も共感したのは、やはりあとがきである。
では、医学は科学だろうか。もちろん医学は科学の一分野だと信じているが、実はそう考えていない医師が多いのである。「医学は科学ではなく芸術である」とおっしゃる高名な先生もいるし、『医学は科学ではない』と題された本を出版されている有名な医師もいらっしゃる。また、医師としてより作家として有名な方も、自身のエッセイで同様のことを書かれていた。つまり「臨床医学は曖昧な部分を持っている。そこには医学の非科学的な部分が存在し、それこそが医学の本質なのだということらしい。
しかし、医学は科学たりえようとする努力を忘れてはいけないし、科学に近づくための自己変革を常に続けていかなければならないと思うのだ。
これは、プログラミングと計算機科学の関係にも通じることだと強く感じる。面白いことに、ハードウェアとソフトウェアが発展すればするほど、プログラマーに要求される計算機科学の比率は減り、むしろプログラマーのやることは生物を扱うことに近くなって来ている。「バグ」、「コンピューターウィルス」、「プロセスを殺す」....プログラマーが使うジャーゴンは、数学者や物理学者のものより、医者や生物学者のものに近いし、しかも年々近くなっていく。
プログラミングで直接人を殺してしまう可能性が(今のところは)低い点は医者がプログラマーをうらやむ点である一方、患者に自己治癒力がある点はプログラマーとして医者がうらやましいところではある。
なぜそう考えるかというと、私が行っているケガやヤケドの治療は極めてクリアカットであり、生物学や化学の基礎的事実に合致した現象しか起こらないからだ。実際、ケガやヤケド、あるいは化膿した傷の治療では、人間の体の反応は極めてシンプルで論理的であり、非論理的な部分はほぼないといっていい。
確かに患者の体は一人として同じものはなく、同じ患者ですら昨日と今日では別モノではある。その意味においで治療という行為は一過性で偶有的ではあるが、だからといって実験も実践もなしに「再現性がない」と匙を投げたのでは、藪医者と呼ばれても仕方がないだろう。
とはいえ、エンジニアとサイエンティストを一身で兼ねるには、現在はあまりに世界は広くなってしまった。「皮上フローラ」の本格的研究は、臨床医である著者の手にはあまるだろう。だから本書でもそこに関しては理論だけ展開している。一つ確かなのは、我々は皮膚のことを腸内より知らないということだけだ。その大腸の手術でも、実は消毒はしていない。「消毒しても仕方がない」からしていないのだが、それでもうまく行っている。「傷は消毒するな」には、実は臨床的根拠も十二分にある。
頭半分だけでも読んで欲しい。それだけで少なくとも傷は直るようになる。しかしそれだけで終わらせるにはもったいない。
はじめにそんな「知の荒野」に遊ぶ楽しさを存分に味わっていただけたら幸いである。
スリキズを気にせずに遊んでいただきたい。キズは著者が直してくれるのだから。
Dan the Scientist, However Amateur That May Be
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http://www.tsutaya.co.jp/works/40363359.html
よんでみたら?
上手いまとめ方
キズパワーパッド効きますね。はじめて使ったときは軽い驚きでした。本当に傷がきれいに治る。いつ取り替えるのがベストかだけは悩ましいですが。
雑菌で感染する人がいるのも事実なわけで
その辺の判断が難しいね
あきらめろと担当医に言われました。
偶然 著者のサイトの治療法を見つけ
担当医に治療方法の変更をお願いし、
現在 指は元通りです。
この本に記される湿潤療法は本当に患者のためになる方法だと
身をもって確信しております。
著者、夏井先生が執筆することで
医学界から攻撃されなければいいなとか
がんばってほしいなとか
一般庶民ながら願っています。
我が師匠の夏井先生の意図を完璧に理解されている感じですね。
ちなみに、夏井先生の努力の甲斐あって、医師の間でもかなり普及してきています。特に若い先生はほとんどがこの治療を知ってるので、
古い先生方が引退される20年後には、パラダイムシフトが完成するでしょう。ちなみに、もっとも普及していないのが大学病院です。
我が師匠の夏井先生の意図を完璧に理解されている感じですね。
ちなみに、夏井先生の努力の甲斐あって、医師の間でもかなり普及してきています。特に若い先生はほとんどがこの治療を知ってるので、
古い先生方が引退される20年後には、パラダイムシフトが完成するでしょう。ちなみに、もっとも普及していないのが大学病院です。
この「新しい創傷治療」を知りました。
新書によって、大きく世の中が変わっていくようで
本の力って凄いです。
ちなみに私もキズをなおすときは洗浄+ボディソープなどの軽い消毒、そして湿潤療法がベースです。
とはいうものの「絶対消毒するな」とまではいかなくてすでに感染してたり縫合糸や植物のトゲなど異物のある(あった)ときはイソジンや抗生剤の軟膏使うことも多いです。
いまのところは非侵襲的と侵襲的両方をうまく使い分けてあげるのが医者の役目なのかなあ、なんて考えているのですがこの辺他の先生方のやりかたや御意見訊いてみたいところです。
「絶対消毒するな」は出版社の人が考えたコピーかもしれませんけど。


