2009年07月29日 13:30 [Edit]

資本主義の難点 - 書評 - 新しい資本主義

たつをさんとこと同様オトバンクより献本御礼。

率直にいって、著者の主張のどこが新しいのか、前著「21世紀の国富論」と比較してすら分からなかった。「資本主義の一種」としての著者の主張は、古きよき「ものづくり至上主義」に過ぎない。

しかし、同じ「新しくて古い」主張としては、本書の方が優れている。

なぜなら、本書からなぜ著者がそれを唱え始めたかの動機がきちんと書かれているからだ。


本書「新しい資本主義」が、前著と比べて新しいのは実は一カ所である。

それが、あとがき。

P. 185
 私は、ベンチャーキャピタリストとして、富豪を500人以上は生み出してきたが、見ているとみな、その後ろくな人生を送っていない。
 いちばんお金持ちになったのは、ネットバブルのときに私が出資した会社の社長だった。スイス人の貧しい成年だったが、三十歳ぐらいで、いきなりキャッシュで五〇〇億円を手にしたのである。貧しかった反動で大きな家に住みたいと思ったのか、彼はお城を買った。かつての大富豪であれば、子どものときから召使いにかしずかれることに慣れていただろうが、子どもの頃親子だけで慎ましく生きてきたような人間が、旧に使用人という「他人」といっしょに生活したら、それだけでも精神的に不安定になってしまうものだ。

これこそが、資本主義の難点である。資本主義においては、最もお金を上手に使うものではなく、最もお金を上手に作る者にお金が集まる。私も「金持ちは金の使い方が下手だ」とさんざん主張してきた。

弾言 P. 104
金持ちの最大の罪は、お金を使わないこと。

金を作るというのは多様性を下げる行為であり、金を使うというのは多様性を上げるという行為であることを考えると、「金遣い」(utilization)を最大化する最良の方法は、全員に平等に配ってしまうことだろう。たとえば食事のことを考える。金持ち1:貧乏人9の世界では、金持ちのみがレストランに行けるが、中産階級10の世界では、全員がレストランに行ける。レストランの多様性は、これで10倍となる。

しかしご存知のように、全員に平等に配ると全員がもらう一方になってしまうという状況が発生する。ソ連が崩壊したのはフリーライダーの重みに耐えられなかったからだというのは反論しがたい。

金を増やすには資本主義。金を使うには共産、いや共用主義。このギャップをどう埋めるか。

エナジー。

その一言につきる。これまたさんざん言ってきたことだが。

404 Blog Not Found:目指すところは同じなのだが - 書評 - 経済成長って何で必要なんだろう?
そのために乗り越えなければならないのが、なんといってもエネルギーだ。逆に言えば、エネルギー問題さえ解決してしまえば、経済問題は問題にならなくなると言ってしまって過言ではない。「脱「ひとり勝ち」文明論」もこの点を正しく指摘している。

何が足りないといったら、エネルギーが足りない。フリーにしても差し支えないほどの食い物も確保できている。通信は事実上フリーになった。エネルギーはまだだ。しかしめどは既に立っている。

なぜ現代人のほとんどが、お城に行ってみたいとは思っても住みたいとは思わないかと言えば、お城より「ウサギ小屋」の方がよっぽど快適だからだ。金持ちであることのメリットは、産業革命以来驚くほど減っている。そしてさらに減り続けるだろう。メリットがなくなるところまで。

資本主義が本当に刷新されるのは、それからだろう。それまでは悲しいかな。城しか買うものを思いつかない成金や、財産を相続した「だけ」の連中の金をせびるしかない。

しかし、せびり続けるだけではいつまでたってもそこから抜け出せない。

イノベーションが、必要なのだ。少なくとも一個。

新しいかどうかはさておき、そこは著者に同意する。

Dan the Well-Off by Accident


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この記事へのコメント
やはりこれから日本発のプラウト主義が世界に広まるんでしょうかね?ラビバトラ氏を崇拝してるわけでは無いんですが、方向性としてはプラウトかなと。
Posted by ササミ at 2009年07月29日 18:44
悪銭身につかず、Easy come, easy go.

昔から、人間はそう変わっていないということでしょうか。
Posted by zzz at 2009年07月29日 21:03
「エネルギーはまだだ。しかしめどは既に立っている。」

流石にこれはないと思いますが・・・。
Posted by bob at 2009年07月30日 02:17
畑=太陽の寿命。半永久的エナジー。足を大地に。
Posted by neet-man at 2009年07月30日 09:45
>金を増やすには資本主義。金を使うには共産、いや共用主義。このギャップをどう埋めるか。


7世紀の班田収授法、旧約聖書レビ記25章の安息の年・ヨベルの年のような、競争・発展と、定期的法令化された富の再分配の組み合わせは、上記の問題意識への一つの取り組み例なのかな。
Posted by なつやすみ at 2009年07月30日 10:19
>古きよき「ものづくり至上主義」

こんなたわごとを繰り返している人たちが日本の経済と社会の進歩を阻害しているのだと思っています。

>金持ちの最大の罪は、お金を使わないこと。

より正しくは、「適切にお金を使わないこと」なのでしょう。稼ぐのがうまくて、使うのが嫌いだから金持ちになれるんで、くだらない浪費をして喜んでいるやつらは金持ちにはまずなれません。銀行ほどお金を持っているところはないけれど、銀行ほど小さなお金に細かいところはない。そういうことです。

情報と通信の問題にかなりブレークスルーができているから、物流の問題に優れた解答があれば、経済体制、社会体制は激変すると思っています。私は、東京神戸間に横浜、名古屋、大阪を経由して、すべての駅が高速道路のインターチェンジの近くに存在する、最高時速約300kmの高速貨物鉄道を作れば、日本の物流問題に対して、1つのブレークスルーを提供できるのではないか?などと考えています。
Posted by enneagram at 2009年08月08日 07:24