2009年08月04日 01:30 [Edit]

Epoch is made - エポック・メイキング - 映画評 - サマーウォーズ

残り物には福がある。

初日に見に行こうと思ったら予約の段階で満席。翌日もそう。本日やっと見れた。

これは間違いなく、映画史に残る作品。その意味において本作品の重要性は、Star Warsに勝るとも劣らない。


この作品を見ることにしたきっかけは、なんといってもこのトレイラー。

これを見て、もう観ずにはいられなくなって。

"Animation"に対する「アニメ」が、ついに3Dでも登場したのだ。「アニメ」は Animation から生まれたけど、もはや英語でも "Anime" としか言えない表現手段になっている。 3D の世界では、 Pixar が "Pixaresque" としかいいようがないほど、"What 3D animations are supposed to be"とでもいうべき表現を確立している。

これに対して、「アニメ」における3Dはなかなかそう言えるものがなかった。2Dの「アニメ」を「より楽かつアニメリアルに」表現する手段としてしか使われてこなかった。そしてそうすればそうするほど、セル(といってもこれも実は今やコンピューターだが)部分との「継ぎ目」が気になる。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破でも、一番気になったのはこの「継ぎ目」だった。

しかし、本作における"OZ"は、違う。

なにしろ元から仮想世界なのだ。「リアル」にしたらむしろ「リアル」ではなくなってしまう。それは 3D CG でなければならず、しかし「サイバー」であってはならない。「サイバー」でよければ攻殻機動隊がすでにある。

細田監督は、モティーフを今のモバイルインターネットに求めた。これが大正解だったようだ。

映画『サマーウォーズ』感想 - 琥珀色の戯言
「きっと監督や脚本家は、『セカンドライフ』が日本でも流行ると思っていたんだろうな……」

いやあ、これは違う。さもなければ主人公の友人の2Dなアバターがあんなにすんなりとけ込めない。

このOZの描写は、Star Wars の SFX や、Pixar の Luxor Jr. に勝るとも劣らないほど、エポックメイキングなものではないか。アニメがもはやAnimationではないように、これはもはやCGであってCGではない。なんとよべばいいのか。「コングラ」?

これだけでも本作はエポック・メイキングで、それを観るだけでも価値があるし、そういう気持ちで本作を見に行ったのだけど、甘かった。これほどいい意味でコテコテの脚本だったとは。

まず、大家族というものをこの21世紀に堂々と持ってくるということ自体がすごい。

映画『サマーウォーズ』感想 - 琥珀色の戯言
僕たちは、ああいうのがイヤだから、こうして核家族化してきたんじゃないのか?

そうなのだ。リアルでは。私自身。東京生まれで父の実家で育ったので、物理的にも心理的にも田舎の大家族のいやなところをさんざん見てきた。カズマを見たときには、ガキだった自分をそこに見いだしてさけびそうになった。OZどころかパソコン通信どころかパソコンすらない往事とあっては、キングカズマになるyよしもなく、家出を繰り返すしかなかったが。

そんな田舎の大家族のいやなところも、本作はコテコテに描写している。あれだけの大家族だと、侘助のような「裏切り者」は必ず出てくる。山を売って留学先にトンズラしたこの侘助もまた、自分の境遇にあまりに似ていてびっくりのキャラだ。もっとも私の祖先が持っていた山だの土地だのは、祖父母の代でほとんど売りつくして、同じトンズラでも私には使えない手だったけれども。

しかし、本作では結局いやなところまで含めて大家族も「捨てたもんじゃないよ」なのに対し、私のリアルではそうならなかったのは、結局のところ、本作のもう一人の主人公といってもいい祖母、栄の違いだろう。まさに陣内一族の要。私のそれはといえば....今は公で話すのは辛すぎる。父のことは話せても、祖母のことはまだ話せない。

感傷的になってしまった。本作は、観た者を感傷的せずにはいられないようだ。これだけでも傑作の証だ。駄作なら他人事モードで「ふーん」とふんぞりかえって観ていられるのだから。

もちろん、コテコテなのはプロットもそう。暗号を紙で解く主人公や、黒電話で世界を滑る栄ばあちゃんは、本当にリアルな場面ではありえない、映画ならではのファンタジーなのは間違いない。しかしそこに、「ジュラシックパーク 」の「Unixなら使える」という台詞に感じるような白々しさは、ない。それがないのは

『サマーウォーズ』はアナログ賛歌か? - Something Orange
ぼくはね、これ、違うと思うのですよ。というか、リアル/ネット、アナログ/デジタル、仮想世界/現実社会といった二項対立的な考え方そのものが既に古い。

からだ。栄ばあちゃんの黒電話や主人公ケンジの紙も大活躍したが、カズマのアバターやSX-9だって大活躍したのだ。リアルかネットではない。アナログかデジタルではない。そして大家族と個人でもない。リアルもネットもであり、アナログもデジタルもであり、そして大家族も個人も、なのである。本作は弁証法的な映画でもあった。

そして、ディテール。本作はリアルな小道具が、ふんだんにアニメリアル化されている。主人公が長野新幹線で飲んでいるのは Dr. Pepper だし、カズマが使っているのは Dell の普通のノートパソコン。侘助のケータイは iPhone で、陣内家に設置された SX-9 (だよね?) に給電するのは、日本海を世界一明るい海にしているイカ釣り船。これらは、アニメリアルになっているだけで、メーカー名とかもぼかさずにそのまま登場しているのもすごい。ちなみに OZ の端末は、ケータイから Windows から Mac から DSi まで、我々が普通にネットに繋いで使う機器そのままだ。

独自の表現、丁寧かつコテコテのプロット、そしてディテールへのこだわり。

本作は、大作にふさわしい要素を全て持っている。

本作を観ずにして、この夏は終わらない。

Dan the Thrilled


この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
サマーウォーズすごかった。 これほどの密度とこれほどの全開フルスロットルぶりの映
この夏『サマーウォーズ』という映画に会えたという幸運と必然【[mi]みたいもん!】at 2009年08月14日 13:31
エンターブレイン乙丸様より、まさかの献本御礼。 サマーウォーズ完全設定資料集 ホビー書籍部編 アニメにはこの手の副読本がつきものだけど、元が元だけに、ありそうでなかった資料集となっている。
Making of the Epoch - 書評 - サマーウォーズ完全設定資料集【404 Blog Not Found】at 2009年08月20日 13:59
(一部論理問題に関する用語を「うみねこのなく頃に」から借用した。僕はまったくプレィしていないが「うみねこのなく頃に散」というタイトルはとても素敵だ)。  「数学の自由研究」という検索キーワードで来る人が多いので、書く。今度は真面目に数学の自由研究だから、
【情報】この夏休みはサマーウォーズの侘助の台詞から数学の自由研究をしたり道徳の自由研究をしよう【晴録】at 2009年08月21日 01:25
一部感想を付け加えました。2009.9.18 16:30国内外における映画・アニメ賞など23冠を受賞している大傑作アニメーション作品『時をかける少女(通称:時かけ)』の監督、細田守の『サマーウォーズ』を8/1の封切りの日にFYE221さんとレイトショーで....
戦争というより事故だった:サマーウォーズ【iXUS - イクサス】at 2009年09月18日 17:43
この記事へのコメント
おお〜!!!このログを読んだら、更に観たいと思うようになりました。
有給消化を利用して平日の昼間でみにいっちゃおうっと♪
Posted by miwako at 2009年08月04日 03:35
熱意は伝わった。
あとは、もうちょっと人に伝える努力をしてくれ。
いくらブログだからって、書き散らかすな。
Posted by こうじ at 2009年08月04日 13:23
ブログだから書き散らかしていいんじゃない?
ただなんだし。
Posted by bob at 2009年08月04日 20:58
本作は弁償主義的映画ですから、払ったチケット代にぴったり見合う価値を提供してくれます。関西で言う「値打ちあるわ−」です
弁証主義的というのなら、あれもこれもぐるっといっかい回って包み込んでるということで、やっぱり値打ちあるはずです
Posted by おずおず at 2009年08月04日 21:23
問題は、CMを見る限りでは何が面白そうなのか全然分からないことですね。
夏田舎モノもいい加減にしろよと言いたくなりますし(そりゃ手っ取り早くノスタルジーを表現できるけどさあ)。
Posted by WATERMAN at 2009年08月05日 00:21
WATERMANに同感です。あれだけだとあんまり面白そうに思えないんですよね。広告手法の問題かと思いますけど仕方ないんでしょう。
映画館で見るか否か迷っていましたが完全に背中押されました。行ってきます。
Posted by ishio at 2009年08月05日 02:15
平日に午前半休とって、スーツ姿で観に行ってきました!
やばいわ、これ。メチャクチャ面白い。エキサイティング。ノスタルジック。ただし、万人受けはしないと思うけど。
いや、弾さんが書いてるような視点からだと、誰にでも意義のある映画かもしれんが、エンターテイメントとして楽しめるのは、少しばかりネットをたしなむ人でないと。「キターーー」という文字列を見たこともないという人は、興奮すべきところで興奮できないかも。(逆にその程度に分かる人なら是非オススメ!)

最近の弾さんのオススメの「アイの物語」といい、本作品といい、このブログで紹介されなきゃ見向きもしなかったのに、試しに見て(読んで)みたら、なんだど真ん中ストライク最高じゃん!となって勝手に親和性の高まりを感じてる今日この頃でした。
また掘り出し物あったら教えてくださ〜い。

いや〜、しかし面白かった。
Posted by J3 at 2009年08月12日 13:49
> 黒電話で世界を滑る栄ばあちゃん

s/滑る/統べる/
Posted by 773 at 2009年08月18日 05:38
今日、やっと観れました。
面白かったです。

『攻殻』や『アイの物語』に通じるものがありますね。
仮想世界と現実世界。
それぞれが描く、近未来のそれぞれのかたち。

それから、「家族」についても考えさせられました。
ぼくの家も300年以上の歴史があります。
また、三日後に親族が数十人集まるイベントが予定されています。。。


スーパーカズマ、かっこよかったですね。
Posted by dnonb at 2009年08月20日 23:21
はしめましてです
ここのブログを見て、早速映画館へいきました!

ただたた、眠たいだけでした・・・・・
内容が読めすぎて最後までは見るのがきつかったです^^;

映像だけを楽しむならもう少しだけでいいから内容が欲しかったです
映画館で楽しむのって映像、音響、とありますが内容は大切です

久々、所々寝てしまいましたよ・・・
Posted by エスプレッソ at 2009年08月31日 10:10
これだけワクワクしない映画をわざわざ劇場に足を運んでみてしまったのが腹が立つ。
OZもインターフェースは面白いのかも知れないけど、作品内のレベルが分からないし。
OZは交通信号・水道管は操れても電話回線は手が出せなかったり。

映画内の世界で何ができて何ができないのか、をきちんと描写しない、できない映画は糞だ。
Posted by 細田守 at 2009年09月28日 05:56