2009年08月08日 17:00 [Edit]

"westory" - 書評 - 学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史

オフィスブラインドスポット石井様より献本御礼。


学校では教えてくれない
本当のアメリカの歴史
上:1492-1901 下:1901-2006
Howerd Zinn / Rebecca Stefoff / 鳥見真生
[原著:A Young People's History of the United States]

喜ばしい。悦ばしい。歓ばしい。慶ばしい。

あの大著が、誰にでも読める形となって、日本でも読めるようになったのだ。

今日において、最も偉大で愚かな国の歴史が、ここにある。


本書「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」は、Alice Walker の歴史の師匠である著者が著した「真合衆国史」、"People's History of the United States"を、さらに読みやすくそして「その後の」歴史を追補した"A Young People's History of the United States"の全訳。

目次
上巻 1492-1901
はじめに
第1章 コロンブスがはじめた征服の歴史
第2章 アメリカの大問題、人種差別と奴隷制のはじまり
第3章 ひと握りの金持ちのための社会
第4章 「建国の父」たちの素顔
第5章 合衆国憲法は本当に画期的だったのか?
第6章 初期アメリカの女性たち
第7章 欲深き指導者たち
第8章 メキシコ戦争
第9章 アメリカ政府が黒人奴隷にしたこと
第10章 政府はだれのもの?
第11章 格差のピラミッド
第12章 軍事介入好きな国、アメリカ誕生
下巻 1901-2006
第1章 階級なき社会であるはずのアメリカ
第2章 第一次世界大戦
第3章 狂気の一九二〇代、そして大恐慌
第4章 第二次世界大戦と冷戦
第5章 立ち上がる黒人たちと公民権運動
第6章 アメリカにとって最初の敗北となったベトナム戦争
第7章 反戦から女性解放運動、そして一九六〇年代のインディアンたち
第8章 激動の一九七〇年代
第9章 一九七〇年代後半から八十年代、政府は国民の不信感を払拭できたのか?
第10章 一九七〇年代後半からの反戦運動と労働運動
第11章 世界最大の武器輸出国アメリカ
第12章 超大国アメリカのテロ
第13章 素顔のアメリカ
第14章 人々が選ぶアメリカの未来
訳者あとがき

目次を見ての通り、本書は同国の栄光より、同国の恥辱に焦点を当てているが、それは決して自虐史観からではない。栄光なら他の本にいくらでも書かれているし、学校でも教えてくれる。

著者がなぜ本書を著したのか。そして「未成年にも読めるよう」編み直させたのか。

信じているからだ。

人々を。

子供たちを。

そして、未来を。

はじめに
なぜ、大人ならば急進的で批判的な見解を耳にしてよいが、十九歳以下のティーンエイジャーには不適当だと思うのだろう?少年少女にはそうした事柄を理解する能力がない、とでも考えているのだろうか?自分の国の政治をありのままに見つめるには未熟だ、と若い人たちを決めつけることはまちがっていると思う。そう。それはありのままとはどういうことか、という問題なのだ。自分の過ちを正すには、わたしたち一人ひとりが、その過ちありのままに見つめなければならない。この国の政治を評価するときにも、同じことがいえるのではないか。

この国にも、「子供たちに負の歴史ばかり教えるのでは、子供たちがこの国に誇りをもてなくなる」と言う人は少なくない。彼らに向かって、私は声を最大にして言い返すことにしよう。

子供たちを見くびるな!

と。

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逆・日本史
樋口清之

「逆・日本史」という本がある。「さかさ・にほんし」と読む。今なお私に取ってのベスト日本史だ。各巻には、副題がついている。あえてもう一度「逆」にして、逆・逆時系列順に紹介すると、「神話の時代」「貴族の時代」「武士の時代」、そして「大衆の時代」となる。

そう。大衆の時代。

これほど誇らしい主題があるだろうか。

大衆の歴史こそ、最も難しいのだから。

あとがき
この本のタイトルがもっとも適切だとは、かならずしもいえない。"民衆のアメリカ史"ならば、一人の人間の歴史より多くのことを語ってくれるにちがいないが、それは再現させるのがもっともむずかしい歴史でもあるのだ。

「逆・日本史」風に言えば、同国は建国以来「武士の時代」にいるといってもいいだろう。それよりも日本の歴史は進んでいる、いやいたのだ。

歴史のことを、英語では history という。 his-story とも読める。学校で教わる同国の歴史は、まさに ヒーロー達の物語だ。そんな物語にあこがれてかの国にあこがれる人は何と多かったことか。

しかし、それは本当は歴史ではなく、伝説(legend)と呼ぶべきなのだ。

しかし、真の民主主義とは、「彼らの物語」をあがめることではなく、「自らの物語」を紡ぐことではないのか。

404 Blog Not Found:惰訳 - Barack Obama's acceptance speech in full
A man touched down on the moon, a wall came down in Berlin, a world was connected by our own science and imagination. And this year, in this election, she touched her finger to a screen, and cast her vote, because after 106 years in America, through the best of times and the darkest of hours, she knows how America can change. Yes we can.
人類が月に到達し、ベルリンの壁が崩壊し、想像力と科学力が世界を繋ぎました。そして今年、この選挙で、彼女はタッチスクリーンに指を触れ、投票をすませたのです。アメリカにおける106年の人生を通して、彼女は最良の時も最悪の時も目にしてきたのです。彼女は知っています。アメリカが、変われるのだということを。Yes we can.

歴史は彼らのものではない。

あなたのものであり、わたしのものなのだ。

過去の恥辱から目を背けさせることこそが、歴史を奪うことなのだ。

そして、あなたの歴史とわたしの歴史が無関係ではありえないように、同国の歴史とこの国の歴史はつながっている。彼らを学ぶということは、自らを学ぶということでもあるのだ。多いに学ぼうではないか、彼らの愚行と偉業から。

Dan the One of Sixty-odd Billon Historians


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この記事へのコメント
>コクシ

・・・・・・。
Posted by dd at 2009年08月14日 10:03
読んでみて沸くだろうなーと思ったらやっぱり沸いてた。
Posted by コクシ at 2009年08月12日 21:53
「正しい」歴史とか「間違った」歴史とか「負の」歴史とか「唯物史観」とか「自虐史観」とか歴史の話をすると必ず正邪善悪や書き手の感情が入る以上「子供たちを見くびるな!」とは言えない気がする。
Posted by 通りすがり at 2009年08月11日 19:05
ニユートン物理学をすっ飛ばして相対性理論を教えたり、ユークリッド幾何学を端折ってリーマン幾何学を学ばせたりすることはないのに、なぜ歴史では、負の歴史をこそ学ばせるべきだということが、子供の理性をあてにして主張されるのでしょう?自国こそ世界一だというよーな夜郎自大は以ての外でしょうが、それなりに評価しうる歴史を歩んできたということを先に教えておいて、その後にキチンと背景を説明した上で負の歴史を教えるのがスジじゃないかと思ふんですが。
Posted by t_f at 2009年08月11日 05:51
言いたいことはわかりますが、子供が自分で判断できると考えられるのは、大人が与える情報に偏りが無い場合に限ると思いますよ。

それほど偏りのある教育が蔓延しているということで。
Posted by kayes at 2009年08月11日 01:05
こんにちは!どこの国でも、自国の歴史にある「光りの部分」に特化して子供たちに歴史を教えますよね。(日本以外は…汗)しかしアメリカはインディアンを侵略して生まれた国家ですから、これだけはなかなかストレートに認められないでしょうね…。
Posted by 目の下の小じわが気になる子ちゃん at 2009年08月10日 17:51
> oo

あなたは今この瞬間、ネットの世界を0.1%つまらなくした。野暮という武器で。
Posted by ジャスラッコ at 2009年08月10日 15:55
こういう本の画像って、普通の個人でも簡単に掲載許諾が得られるんですか?Amazonに画像がないと言うことは、Amazonが許諾を得られなかったと言うことですよね。
Posted by oo at 2009年08月10日 15:45
>子供たちを見くびるな!
こういう決めぜりふはなんとでも解釈できるので、
主張になっていないですね。
Posted by takahashi at 2009年08月10日 12:22
> 世界が平和になるとしたなら、その時、日本語は主要な言語になっているでしょう。

じゃー、インドネシアの少数民族にひらがなを使わせる運動でもしますかね。
Posted by TNT at 2009年08月10日 11:01
見くびるな、といわれても。
良くも悪くも子供は白いところが多いような。
むしろ、教育の力を見くびりすぎですよ。
Posted by Gh at 2009年08月10日 09:57
世界が平和になるとしたなら、その時、日本語は主要な言語になっているでしょう。
先進国の言語の中で、唯一、助詞を失っていない言語だから。
on in with は何を封じ込め、日本語の助詞は何を封じ込めたのでしょう?
Posted by PK at 2009年08月09日 18:24
いやー。影響される人も多いでしょう。
しかも、日本の場合は負の面ばかりを教えてますから。

見くびるとかじゃないですし。
Posted by ビッグ at 2009年08月09日 14:32
私も、猿谷要先生の中公新書のアメリカの歴史のダイジェストは読みました。

学校の世界史でも、ヨーロッパ史や中国史に比べて、アメリカ史はきちっと教えてもらえないし、大学の受験参考書でも、アメリカ史の記述はきわめて貧弱です。

紹介される本の是非はともかく、日本人は、もっとアメリカ史に関心を持ち、学習すべきであることは本当です。

ただ、アメリカは、ヨーロッパのように、中世にラテン語を使ってイスラーム文化を学習した経験がないから、他者理解能力は欠けるかな。インディアンの言語の言語学研究を一般のアメリカ人が相当程度知識を持っているとは思えないし。まあ、日本が、アメリカにとって、中世ヨーロッパにとってのイスラーム文化社会になることができて、アメリカ人が、日本語のコンテンツを自前で英訳して必死に学ぶような事態を作り出せれば、日本も、世界史に偉大な貢献をできるというものなのでしょう。そういうことも大いにありうると思います。
Posted by enneagram at 2009年08月09日 08:24
Sixty-odd Billon Historiansが難解。BillonはBillionのスペルミスだとしても、Sixty-odd Billonで六百億人余り。これも、 six-odd billionと言いたかったところなのか、他に何か深い意味があるのか。
Posted by 通りすがり at 2009年08月08日 22:42
私が受けたのは負の歴史ではなく負の思考でした
まず「日本は悪である」とフィルターがかかるような


Posted by JE at 2009年08月08日 22:31
目次の欄ですが…
第1章 コロンブスがはじめた制服の歴史
制服→征服
ではないかと…
Posted by 通りすがり at 2009年08月08日 21:43
子供たちを見くびるなって、クメール・ルージュの例もあることですしねえ。
よほど情報の取捨選択に先天的に秀でてでもない限りは、子供は、良くも悪しくも教条主義者でしかありませんよ。
この類のアメリカサヨクのタチの悪いオプティミズムにはマユツバで臨むのが常識でしょう。
Posted by t_f at 2009年08月08日 21:09