2009年08月15日 02:00 [Edit]
なんともすごすぎる人だ - 書評 - いち・たす・いち
中田力教授の本を、ひととおり取り寄せて読んでみた。
を見てびっくりしたからだ。
立花隆「脳とビッグバン」中田教授には、すでに一回六、七時間のインタビューを三回も行っているが、行くたびに、新幹線の最終電車にかけこみ乗車するまで話を来続けることを繰り返している。この先の話がそれくらい面白いのだが、まだ一般読者に伝えるレベルまで仮説が成熟していないということで、この話は止めておく
とはこれのことだったのか。
しかしここではあえて「脳のなかの水分子」ではなく、「いち・たす・いち」の方をとりあげる。こちらの方が研究者としての著者の姿勢がよくあらわれて面白いというのが一つと、「渦理論」を差し引いても一般科学(者)啓蒙書として実に面白いというのが一つである。
目次著者は、スーパー臨床医であると同時にスーパー医学者である。そのスーパーぶりは、人間離れしているといっていい。
「脳とビッグバン」中田教授は、東京大学を一九七六年に卒業して(神経内科先攻)から、医局に入る前にアメリカにわたり、カリフォルニア大学バークレー校のメディカル・スクール(サンフランシスコ校)に転じた。レジデントもアメリカでやり、専門医の資格も三つ(神経医、神経放射線医、神経生理学)とった。バークレー校の学生時代から、NMRに興味を持ち、その頃から、NMRに一貫して(はじめは使う立場、やがて開発する立場で)かかわってきた。
というところだけ見ると、著者はあくまでMRI研究の人に見えるが、臨床もすごかったのである。その様子は「アメリカ臨床医物語」から伺い知ることが出来る。なんとERにつとめていたのだ。
「アメリカ臨床医物語」 P. 42弾は脳を貫通していた。
おそらく即死だったろう。
DOA(到着時死亡)
サインをして、ER(緊急外来)を出た。すれちがった外科のレジデントが、緊急手術の患者さんが死んだことを知らせてくれた。コカインによる子宮破裂の症例だった。顔立ちのいい、若い白人の女の子だった。病棟に戻ると、末期がんの患者さんが域を引き取る前だった。昏睡状態になってから三日が過ぎている。DMR(蘇生努力をしない約束)の患者さんである。
みとる人間は自分だけ。ある意味で、アメリカらしい。
こんなタフな生活していて研究する暇がいつあるんだという感じだが、15年連続でNIHなどの public grant を勝ち取っている。「アメリカ臨床医物語」は、二兎を見事に得た成功者としての自信に満ちあふれた、それだけにむしろ典型的なアメリカンドリームの話である。
ところがこれが本書では、そんなことはおくびにも出さない。
冒頭では、渦理論はおろか、脳科学すらほとんど出てこない。淡々と、しかし著者ならではのユニークな視点で物理史をおさらいしていく。学だけではなく学者を語るこのスタイルは、肩すかしされていることを忘れてしまうほど魅力的だ。
P. 78プランクは可能な限りの策を講じて息子の助命を嘆願した。それに対してナチス政府は一つの妥協案を提示した。それは息子の終身刑への減刑の見返りにプランク自身がナチスに入党するとの条件であった。プランクの名声をもってナチスの地位を高め、ナチスそのものの正当性を勝ち取ることが狙いであったことは言うまでもない。
プランクはこの条件を拒否した。そして1945年2月23日、アーウィン・プランクの死刑が執行された。
こういった話が、半分以上続いた上で、やっと脳の話に入る。「天才は冬に生まれる」も同様の構造となっている。
自らの主題をほったらかしにして、過去の英雄たちを讃える。これは一体どういうことだろう。grantを15年連続して勝ち取った人が、である。
やっと、自らの仮説の実証を開始するだけの「貯金」が出来たからではないか、というのが私の仮説である。
著者の渦理論が、まだ「単なる著者の思いつき」であることを最もよく承知しているのは著者である。百戦錬磨の著者が「みて」きたのは、しかしミリメータースケールの世界。これに対し渦理論はナノメータースケールの世界である。スケールがあまりに違う。ELDERもLGSも、著者が実際に確認したわけではない。
脳の渦理論『脳のなかの水分子?意識が創られるとき』はさまざまな理由により(別エントリーに理由も書いてますけど)、読みました。中田氏の主張される渦理論というのは、まったくダメです。
というのは簡単だ。私も渦理論をどう受け取ったものか呆然としている。しかしXeに麻酔作用があるというのは事実だし(しかも実用化一歩手前)、Xeに限らず麻酔がなんで効くのかが分かっていないのも事実。そして最近になって均一と考えられていた液体の水に不均一な微細構造を発見されているように、水、特に液体の水に関して我々がいかに無知なのかということもまた事実なのである。
たとえばXeが水和した状態と、そうでない状態をMRIで見れるようになったのだとしたらどうだろう。少しは「思いつき」が「理論」に近づくのではないだろうか。
だめならだめで、それはよい。その過程で新理論も出来るだろうし、MRIは確実に進化するだろう。そして著者の誠実さに関しては、立派すぎるトラックレコードがある。駄目だったら駄目だったとはっきり言ってくれるだろう。
とにもかくにも、この著者、底が知れない。
「水からの伝言」と同列に扱うのは、著者以上に水に失礼なのではないか。
Dan the Water-made
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終身刑への原型→減刑
超人的な意味で。
理論は未だ仮説に過ぎないとは言えどの道MRIの進歩が我々に及ぼす恩恵は無視できないでしょうね
大学時代、徳丸克己先生が物理化学の講義のときに話してくださったのだけれど、純粋エタノールと水を混ぜれば、基本的に酒なのだけれど、エタノールを混ぜた水はまるっきりおいしくないそうです。なぜかというと、エタノールも水も、分子が結構大きなマスを作ってしまっていて、エタノールを水に混ぜてもエタノール分子が水分子の中にほとんど分散しないからなんだそうです。だから、エタノールを水に混ぜて、10分くらい攪拌か振蕩したあと、1〜2時間超音波をかけてやると、エタノール分子が水分子に分散して、エタノールを混ぜた水もなんとなく酒らしい味わいが出るのだそうです。
ただ、安酒を買ってきて、実験室で超音波振動を与えてやっても、高級酒の味は出ないから、応用は利かないそうです。
なお、エタノールに水を混ぜて飲むことは、酒の密造ですから違法行為です。実施してはいけません。とはいえ、農学部の醸造学の研究室なんて、どこもみんなすっぱい密造酒を作って「まずい、まずい」といいながら大学院生たちが飲んでおりますが。
いま、どこまで解明されているのだろう。
この本を数年前に読みました、脳科学の本を
期待して読んだのに数学の話が中心なので驚いた。
「天才は冬に生まれる」にも数学者の話題特にラマヌジャンを別枠扱いで
著者は語っていますね。この2冊とも斬新な衝撃を受けました。
冬に生まれておけば良かった(苦笑)。
Wikipediaをみると中田力、竹内薫、茂木健一郎、ロジャー・ペンローズ
を疑似科学扱いにしていますね。彼らは日本人の感覚では排除したくなるのでしょうか?
中田さんの説に一理ある気がする。もちろんだめならだめで
はっきりするので構わない。
でも...
自分の直感は、中田説を支持する。
まあ仕方ないか、段。
正月挟んで、ニュートンとは反対の方の早生まれ。
