2009年08月27日 19:30 [Edit]

プロフェッショナル根性論 - 書評 - 研究者の仕事術

羊土社本多/山下様より献本御礼。

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研究者の仕事術

プロフェッショナル根性論
島岡要

なんという切れ味。なんという粘り。数ある自己啓発本を、高炉から転炉を経て毎年何億トンも送り出される鋼とすると、本書はまさに玉鋼。横書きそして2,940円という価格という価格も、本書を一読すれば納得せざるを得ない。

研ぎ、究めようとする者、必読。


本書「プロフェッショナル根性論」は、ハーバード大学医学部留学・独立日記の中の人である著者の珠玉のエッセイ、研究者のためのプロフェッショナル根性論を書籍化したもの。

目次 - やるべきことが見えてくる研究者の仕事術(羊土社ホームページ)より
Column
1:35歳からの15 年間こそ自分の成長を意識した攻めのキャリアプランを
2:ラボメンバーの「強み」
3:哲学者モンテーニュも400 年前にSBA 仕事術を推薦?
4:Not to do リスト
5:「自分の世界」を設定する際に犯しやすい7つの間違い
6:自分のキャパシティーを見極める 【立ち読み】
7:つっこみ力
8:これからの時代のビジネスに必要な学位はMBA ではなくMFA
9:「成功する恐怖」
10:変化を促進する米国流研究システム 【立ち読み】
11:アイディアをスティキーにする方法
12:プレゼンテーションは最低3回リハーサルを
13:うまく質問するために覚えておくとよい10 のポイント
14:英語の勉強に役立つインターネットで手に入るフリーのリソース
15:メンタルトレーニング(修練の場)としてのブログ
その1:プロフェッショナル研究者への成長の道
A Roadmap to an Independent Thinker
その2:「 好き」よりも「得意」にこだわる仕事術
Strengths-based approach(SBA仕事術)
その3:プロダクティビティーを上げる時間管理術
Get Things Done(GTD)
その4:自分の世界で一番になる ニッチマーケティングで自分の研究を売り込め
Art of being the best in the world
その5:批判され/批判して自分を磨く「フィードバック力」
Art of Giving Feedback
その6:変化に対する苦痛・恐怖を克服する
Change or Die
その7:自分のストーリーを語る「物語力」
Art of Story Telling
その8:説得力のあるプレゼンテーション
Presentation to Persuade
その9:日本人中年男性研究者のための英語力向上戦略
人間力英語術 王道ではなく覇道を!
その10:検索される自分 : 発信力
The Art of Blogging
その11:創造性とは
Creativity and Effectiveness
付録:研究者の自己啓発とキャリア形成のための20冊

本書にはおよそ贅肉というものがない。索引がきちんとついていて200ページを切っているのは、本書がいかに研ぎ究められたかの証である。優れた啓発書は、必ずそれ自身がその主張を体現しているという自己相似性が見られるが、本書はまさにその鏡である。

ハーバード大学医学部留学・独立日記 ... やるべきことが見えてくる研究者の仕事術
当初理系のための文系的スキルについて書き始めました「プロフェッショナル根性論」は、内容を練り推敲を重ねるうちに理系・文系を問わず知的生産を志す人が勇気と自信をもって進めるように後押しする「やるべきことが見えてくる研究者の仕事術」として生まれ変わりました。

その様子は、最初の章の最初の項を見るだけでわかる。

その1:プロフェッショナル研究者への成長の道
A Roadmap to an Independent Thinker

1 研究者の人生はアブストラクトとして数秒で消費される運命にある

 本書では「その1」が全体のアブストラクトの役割を果たしています。忙しい方はまずはこの章を読んだだけでも、重要なポイントがわかるように心掛けました。この構成には、研究者の人生に関する私が伝えたい重要なメッセージが含まれています。物語というのは起・承・転・結からなり、つかみから始まり徐々に盛り上がり、最後にクライマックスに至るというのが通常の流れでしょう。しかし、研究者の人生とは「結」から始まるのです。研究者の仕事や研究成果は、まわりから「結」、すなわち要点のみ示したタイトルやアブストラクトとして"消費"される運命にあるのです。

ゴングがなるや否や顎の直下に一発。研究者の運命は、まるで蝉の一生のようではないか。わずか一週間のために、7年も17年も土の中。いや、蝉はそれでも一週間程度は鳴いていられる。アブストラクトが人の目に触れるのは、わずか数秒ではないか。

「そんな人生いやだ」という人は、本書はおよびでない。その数秒のために数年も数十年も土の中にいる覚悟がある者を、研究者と呼ぶ。それは科学の世界に多いけれども、科学の世界に限った話ではない。

しかし覚悟だけでは数日は保っても、数年はおろか数ヶ月も保たない。それを保ち続けるにはどうしたらよいか。それが、「プロフェッショナル根性論」なのだ。

頭のよさがすべてではない。成功者がもっている特質「Grit」とは何か? | Lifehacking.jp
Grit とは「不屈の精神」「気骨」などと訳される言葉ですが、Clutter と同様、擬音語でもあります。困難を前にして歯ぎしりをしている、あのギシギシという音です。

あるいはぐぬぬ力。いかに歯を折らずして歯を食いしばるか。それには「根性のための根性」でない、本物の根性論が必要であり、本書が提供するのはまさにそれである。本書は、知のマウスピースなのだ。

一つ感心したのは、著者の英語力。章のタイトル、日本語と英語を比べて欲しい。「プロフェッショナル研究者」を Independent Thinker とするのは、英語で Grit している人でないと無理である。本をまるまる一冊英語で書けなくとも、章立てをこれくらいきちんと英語に出来れば Independent Thinker として刮目される、そういう表現だ。

これほどの一冊の「材料」に本blogが含まれていることを、誇りに思う。と同時に、思わず奥歯に力が入る。いいアブストラクトを読ませていただいた。この数秒は一生ものとなるだろう。

Dan the Independent Thinker


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【書評】やるべきことが見えてくる研究者の仕事術【ビジネス書で「知」のトレーニングを! ?? 知磨き倶楽部】at 2009年10月20日 07:45
ReviewMarket.NETではやるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論の良質なレビューを集めています。
ReviewMarket.NET:やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論レビュー【ReviewMarket.NET:良質なレビューを提供するサイト】at 2009年09月10日 00:42
小飼 弾さんの「404 Blog Not Found」で、「やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論 」の書評を頂きました。 ”プロヮ..
知のマウスピース【ハーバード大学医学部留学・独立日記】at 2009年08月27日 21:58
この記事へのコメント
セミです(笑)。島岡さんに会って話したことがありますが、とても切れ味の鋭い人です。
Posted by Kay at 2009年08月28日 11:48
私は研究者ですが、「どうやって研究を進めていくか?」についていつも八方ふさがりの思いで・・。この本は読むことにします。一般書店で買えるといいですが。
Posted by 円 at 2009年08月27日 23:51