2010年02月04日 23:30 [Edit]

この記事をクリップ! newsing it! Buzzurlにブックマーク b.hatena.ne.jp/entry 真の「普通」 - 書評 - 未来思考 10年先を読む「統計力」

出版社より献本御礼。

今回も素晴らしい出来。本書が普通に読まれるのであれば、この国の未来は、よい意味で著者を裏切ることとなるだろう。すなわち明るい。

裏を返すと、本書のあり方が普通にならない場合、この国は著者が読んだ通りとなるだろう。

そう、普通。

「ふつう」とは似てて異なる「普通」とは一体なんなのだろうか。本書を片手に考えてみたい。


前著「不透明な時代を見抜く「統計思考力」」が「統計で何が見えるか」を説いたのに対し、本書「未来思考 10年先を読む「統計力」」は「それで日本を見てみるとどう見えるのか」を著した一冊。

目次 - Masahiro Kaminaga's Weblog: 未来思考より
プロローグ
PART1 少子化と結婚
第1章 日本の少子化、世界の少子化
なぜ子どもが減ったのか
コウノトリはどこへ
少なく産んで、しっかり育てる
なぜ子どもが減っているのか
先進国の出生率を比べてみよう
教育費と出生率の関係
少子化ヲ克服セヨ
第2章 結婚しません?
未婚が増えている
長すぎる春
子どもは何人欲しいですか
生物学的限界
結婚しない/できない理由
結婚の三大リスク
第3章 産む自由、生まれる義務
世代会計―再配分の問題―
就学前教育の充実を!
大学が高すぎる
このざまはなんだ
子どもさえ増えればいいのか
統計的差別
PART2 都市と高齢化
第4章 人はどのように動いているか
鳥の目でみた日本
うつりゆく三大都市圏
北の国から2010
どこに住むか、だれと暮らすか
成熟する地方
秋田の現在、私たちの未来
都会と田舎
第5章 都会は強力な磁場である
人をひきつける力
ストロー効果
超LSI都市
Tokyo―AM8:00
街場の理論
過去から現在
そして未来へ
列車の車窓から
第6章 都市壊滅!?
耳をすませば―地震の足音―
地震用語の基礎知識
70%は本当か
考えるヒント
ゆらぎの構造
正しく恐れよう
PART3 仕事と経済
第7章 仕事というぜいたく
社内失業
蜘蛛の糸
非正規雇用がとまらない
非正規へとつづく道
最低賃金を上げよ、さらば救われん?
「同一労働同一賃金」は正しいか
リスクを織りこむ
きれいはきたない、きたないはきれい―ワークシェアリング−
第8章 もし世界がひとつの村だったら
相対的貧困率=貧困の指標?
相対的はく奪
先進国における貧困とは?
非正規増加のミステリー
日本の政策がまずいのか
グローバル化を追い詰めろ
かつてのアメリカ
先人の心情
モノづくりは、まず安いものから
逃げ遅れるひとたち
公害をひきうける「世界の工場」
失業する中国人
貧困をぬけだすチャンス
格差をもたらす共犯者
第9章 日本は変わるのか
労働市場の二極化
これまでのビジネスモデルが通用しない時代
フランスの知識人
人口減のインパクト
成長のレシピ
日本が発展した秘訣
失われた10年の犯人
勤勉こそ美徳?
急募:戦略家
技術力をムダにするな
エピローグ
あとがき

「少子化と結婚」、「都市と高齢化」、そして「仕事と経済」。今の日本人が最も興味を持ちつつ、しかし最も目を背けたくなるこの三つ課題を、著者は普通に解いていく。これが編集者なら「統計力を駆使して」などと言うところであろうが、統計力は魔法でもなんでもない。いや、ぶっちゃけてしまえばそんな「力」は存在しない。力を持つのはあくまで我々であって統計ではないのだから。

普通とは何か。

よく字を見て欲しい。

普遍的に、通じるという意味ではないのか。

http://twitter.com/dankogai/status/6727019340
.@medtoolz 結局「普通」がなんで困るかといえば、「普遍的に通用する」という本来の意味ではなく、「平凡」の意味に取られてしまうからなのではないか。非凡な人ほど実は普通なのにね。普通でないと非凡さがわからないじゃないか

著者の筆致は、まさにこの意味において普通なのだ。

佐々木俊尚は、まさにこの「普通」が「ふつう」になることを願って本書のオビにこう寄せている。

根拠を提示できない情緒的議論の時代は、もう終わった。

もちろん、まだ終わっちゃいないことはテレビを30秒も見ればわかる。本書がそんな情緒的議論の時代の終わりのはじまりのきっかけとなってくれればよいのだが。

勘違いしないでほしい。著者は極めて情緒的な人である。本書が絶妙なのは、普通、すなわち根拠を提示して議論しても情緒を捨てる必要は全くないことを示しているところにある。根拠を提示した文書は実は少なくない。論文というのはまさにそういう文書で、リジェクトの最大の理由は根拠の不足にある。そして情緒的議論はさらに多いことは、誰よりも読者たるあなたがご存知であろう。

しかし根拠を提示しつつ、情緒がある文書というのはまれである。

そしてそういう文書こそが、人を動かすのだ。

Technology と Liberal Arts の交差点。本書もまさにそこにいる。

P. 271
 本書を書きながら思ったことは「みんなが問題と言っていることは、本当に問題なのだろうか?」ということです。
 ライト兄弟は、鶏のように羽ばたく機会を作ったから、空を飛べたわけではありません。そして、自動車のように車輪で走る生き物は、おそらく自然界にはいないでしょう。
 鶏と同じように飛ぶことではなく、「飛ぶこと」を目的にしたから飛べるようになり、馬のように走ることではなく、「速く移動する」を目的にしたから、速く走る乗り物が作れるようになったのです。
 エンジニアたちは、本来の目的を追求することによって、問題を解決しています。何でも直線的に解決すればいい、ということはないのです。

本書が提示する分析と、それに対する解決作は、手前味噌になってしまうが本blogの主張にあまりによく一致する。特に第二部は日本はヤバくても、東京はヤバくないかもを「ノヴェライズ」してもらった気分にすらなった。しかしそうなるのは私が聡明だからでも、著者が博識だからでもない。双方とも普通だからなのである。少なくとも著者はそうである。

問題を考えるときの最大の罠は、問題にすべきでないことを問題にしてしまうこと、そして、問題にすべきことを問題にしないことにあるのです。

普通に、まさに普通にこういう言葉で、いつか自著を結んでみたいものだ。

Dan the (Extra)?ordinary


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日本人は「論理では伝わらない」、「心を尽くした感情の方が伝わる」と思っています。しかし、いくら感情を込めても伝わらないものは伝わりません。想いを確実に伝えるには言葉、もっと言えば論理にでしか正確には伝わらないのです。 「感情論ではなく論理性を重視しろ」と
[ライフハック]心を込めた感情よりも冷たい論理の方が伝わる訳【keitaro-news】at 2010年02月05日 05:51
この記事へのコメント
今回の本は普通すぎるので、書評はないだろうと思っていました。有難うございます。

本書の先に見えてくるベーシックインカム論について、まだしつこく考えています。ちょっとだけエントリを書きました(「自由が先か、仕組みが先か。」)。
Posted by masahirokaminaga at 2010年02月05日 08:39