2010年04月30日 12:30 [Edit]
s/恥ずかしい/ひもじい/ - 書評 - 会社が黒字になるしくみ
著者より献本御礼。
素晴らしい。「牛丼一杯の儲けは9円」を上回る、著者の最高傑作。正直この分野の本は献本いただきすぎていささか食傷気味なのだが、これはおすすめ。
ただ、サブタイトルの「知らないと恥ずかしい」はとても恥ずかしいタイトルだ。「知らないとひもじい」だったら完璧だったのに。知らないと恥ずかしいかどうかは読者の羞恥心しだいだが、知らないとひもじいのは確実なのだから。
本書「知らないと恥ずかしいビジネスのキホン 会社が黒字になるしくみ」は、「非公認会計士」である著者による利益論。
目次 - 世界一のバイヤーになってみろ!!坂口孝則の本棚と雑文: 期間限定のお知らせ!「会社が黒字になるしくみ」より- PART1 学校では教えてくれない「お金の稼ぎ方」
- PART2 いまさら人に聞けない「会社が儲かるしくみ」
- PART3 知らないと大損する「お金の回し方」
- PART4 会社では教えてくれない「新しいビジネスのかたち」
- PART5 誰も教えてくれない「商売のウラ側」
本書がすばらしいのは、「会社」、すなわち「ショーバイ1.0」に留まらず、フェアトレードやBOP戦略やフリーミアムといった「ショーバイ2.0」もきちんとカバーしていること。本質とは、「何が変わったか」ではなく「何が変わっていないか」なのだから。
それが、利益(profit)。これこそが、持続可能性(sustainability)の唯一の源泉なのだ。
利益を否定する事は、持続可能性をも否定する事だ。その意味において利益とは何かを知らないというのは確かに恥ずかしいことではある。
そういうわけで読めば確実に利益を得られる本書なのだが、一カ所だけ異を唱えたい。異を唱えるというより補足であるが。
P. 215市場が決めたコストや市場が決めた価格にさからうことはできないのです。
これのどこが「足りない」か。
「市場外」、である。
市場とは、値段を交渉する場である。すなわち値段を交渉せずに購入しているものは、すべて購入者にとっては市場外製品と言える。その意味で、先進国の住人のほとんどは定価という市場外でモノを買っているのである。だからこそ、利益というものを恥ずかしくも知らない人があとをたたない。
もちろんこれらの製品はそれが作られる段階では市場をフル活用している。著者はそうした世界の出身だ。だからこそ「さからうことはできない」という達観を得たが、実はほとんどの人は市場から直接ものを買う事はないのだ。定価でモノを買う人は、最安値で買うメリットを放棄する代わりに、価格交渉というコストを免責されているという見方も出来るだろう。
「定価」の他にもう一つの市場外として、「独自市場」というものがある。「そこでしか買えないもの」であれば、市場に価格をうかがう必要もなくなる。これの代表例はなんといってもAppleだろう。MacはPC市場とは別枠だし、iPhoneもまたケータイ市場とは別枠。市場の権化であるNetBookとiPadのコントラストはあまりに鮮烈だ。
しかしAppleの製品はいずれも市場で調達できる製品で構成されている。市場と市場外のいいところどりをした結果、同社の時価総額はトヨタ自動車の倍近く、Microsoftに迫ろうとしている。
市場で買えるものを、コモディティ(commodity)と呼ぶ。
こう定義してしまえば、すっきりする。
その上で本書を読めば、本書にも「市場外戦略」が網羅されていることがより鮮明となる。
しかし、どんな戦略を取るにも、利益が最重要--もしかしたら唯一の--評価軸であることには変わらない。それでは利益とは何なのか。本書でぜひ確認していただきたい。
Dan the Profitable
