2010年07月28日 12:00 [Edit]

衰退の五段階 - 書評 - ビジョナリー・カンパニー3

日経BP黒沢様より献本御礼。

ビジョナリー・カンパニー「三部作」の中で、これが最も読まれるべき一冊。

と同時に、「ビジョナリー・カンパニー」第一作が手元にある方は、改めてそこで紹介された会社をご確認いただきたい。いかにそこで紹介された会社が、今や衰退してしまったかを。


本書「ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階」は、「ビジョナリー・カンパニー」で偉大な会社の法則を抽出した著者が、今度はその偉大な会社がどのように衰退するかの法則を抽出し一冊の本にまとめあげたもの。

目次 - 日経BP書店|目次 - 
謝辞
前書き
第一章 静かに忍び寄る危機
危機の瀬戸際にあって気づかない
第二章 衰退の五段階
調査の過程
調査結果ーー五段階の枠組み
脱出への道はあるのか
第三章 第一段階 成功から生まれる傲慢
傲慢な無視
何となぜの混同
第四章 第ニ段階 規律なき拡大路線
自己満足ではなく、拡張しずぎ
成長への固執
パッカードの法則の無視
問題のある権力継承
第五章 第三段階 リスクと問題の否認
方針の誤りを示す事実が積み重なるなかで大きな賭けに出る
喫水線下のリスクをおかす
否認の文化
第六章 第四段階 一発逆転策の追及
特効薬を探す
パニックと必死の行動
第七章 第五段階 屈服と凡庸な企業への転落か消滅
戦いをあきらめる
選択肢が尽きる
否認なのか希望なのか
第八章 充分な根拠のある希望
付録一 衰退企業の選別基準
出発点
基準一--設立以来のいずれかの時期に偉大な企業であったこと
基準二--偉大な企業から凡庸な企業かそれ以下に転落したこと
基準三--その他の除外理由
付録二 比較対象成功企業の選別基準
付録三 ファニーメイと二〇〇八年の金融危機
付録四A 自己満足仮説の間違いを示す事実の一覧
付録四B 一発逆転策の追求を示す事実
付録五 主要なポストに適切な人材の条件
付録六A IBMの衰退と回復
付録六B ニューコアの衰退と回復
付録六C ノードストロームの衰退と回復
付録七 良好な企業から偉大な企業への飛躍の法則
第一段階 規律ある人材
第ニ段階 規律ある考え
第三段階 規律ある行動
第四段階 偉大さが永続する組織をつくる
原注

偉大な会社の衰退、それは邦訳の副題どおり、以下の五段階を踏むと著者は言う。

  1. 成功から生まれる傲慢
  2. 規律なき拡大路線
  3. リスクと問題の否認
  4. 一発逆転策の追及
  5. 屈服と凡庸な企業への転落か消滅

この五段階、会社以外でもありとあらゆる組織に共通するのではないか。

衰退にこの五段階があるということは、衰退を防ぐのがなぜ難しいかをも説明してくれる。五段階あるのに、実際の衰退が形になって現れるのは、第三段階の終わりから第四段階にかけてなのだから。衰退は、成功した瞬間に芽生えているのだ。失敗は成功の母というが、成功もまた失敗の母なのだ。

それではそれを防ぐ方法はあるのか?あると著者は主張する。本書の1/3を占める付録はそれに割かれている。それがどのようなものであるかは本書で確認していただきたい。

ただしこれは言ってもいいだろう。衰退を防いだ会社は、もう別の会社に変わっているのだということは。

衰退は先延ばしには出来ない。「死ぬ」か「生まれ変わる」かしかないということだ。

だから私は、組織の衰退そのものは、それがどんな組織であれ悪だとは全く見なしていない。どんな組織でも、だ。それがたとえ国であっても。それによって人が進歩するのであれば、むしろ衰退を加速したいぐらいである。

ただしそれには条件がある。

組織間の人の自由が、許されているということである。なぜ「ビジョナリー・カンパニー」のほとんどが衰退したのに「結局誰も困らなかった」かといえば、これが確保されていたからだ。組織=会社の場合これは確保されているが、組織=国の場合はそうとは限らない。

「外」がなければ「内」でなんとかするしかない。しかしそれは「外」よりも格段に難しい。

だから私が本書に一番抱く不満は、「外への回復」が付録に提示されていなかったこと。DECは会社としては回復しなかったが、COMPAQを経て現在のHPへと繋がる「業界の繁栄」の苗床ともなった。そのHPが本書のケーススタディに登場するのが皮肉ではあるが。

あえて「回復は外で」というのも立派な衰退の防止策、いや、衰退そのものの無問題化ではないのか。

しかし回復が「内」でなされるか「外」でなされるかはさておき、その起点がいずれの場合も「組織」ではなく「人」であるというのは本書の最も重要な示唆である。組織は人のためにある。人が組織のためにあるのではないのだ。

To be, or not to be: that is not the question for an organization. That is the question for each one of us.

Dan the Individual


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{{{ 1.成功から生まれる傲慢 2.規律なき拡大路線 3.リスクと問題の否認 4.一発逆転策の追及 5.屈服と凡庸な企業への転落か消滅 }}} 私自身が例として挙げられる会社は[http://ja.wikipedia.org/wiki/虫プロダクション (旧)虫プロ]。「旧」と但し書きした...
[1966]虫プロとサンライズ【プログラマー 大塩高志の断片談義】at 2010年08月01日 19:41
経営書の名著を問われればほぼ必ずと言っていいほど挙げられる本に、『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』と『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』があります。 僕も、経営企画担当...
あなたの会社は大丈夫? - 書評 - ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階【知磨き倶楽部〜読書で「知」のトレーニングを!〜】at 2011年01月01日 14:23
この記事へのコメント
普通の人は、失敗は反省するし、改めようとするんですよ。

でも、成功には疑問をもてない。成功の前提や条件が、時間の経過とともに失われてしまったことが気がつけない。さらに、成功が新たな問題をもたらすことなどほとんどの人には理解できない。

あんまりうまく行き過ぎているときは用心すること。好事魔多し。諌めとできるのはこんなことぐらいでしょうか。
Posted by h7bb6xg3 at 2010年07月28日 14:27
突然の御連絡、失礼いたします。
(株)ブログウォッチャー編集部の馬場と申します。

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株式会社 ブログウォッチャー
編集部 馬場  bizravel@blogwatcher.co.jp



Posted by bizravel2010 at 2010年11月29日 15:34